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スーパーのレジ打ちとお客さま  作者: 美々少年
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男性客編  9話 平行線のまま

------話は現在に戻る。------



小雨がパラついたあの日、たまたま駆け寄ったKスーパーでレジ打ちの彼女と出会ってから2年が経ち現在に至る。



長々と綴ってきたが、これが僕が彼女を好きになるまでの経緯である。


正確に言えば「好きになるまで」ではなくて「一目惚れ」が的確である。



可能ならば、ほぼ毎日彼女の姿を見たい、近づきたいという欲望はあるが、僕が彼女目当てでKスーパーに通ってることを他の店員さん達に悟られてしまうことで彼女自身に迷惑をかけてしまう恐れがあるので、会いたいという気持ちをセーブして週に2~3回の来店ペースに落とした。



ペースを減らしてお店に通ってるからといって彼女との進展があるわけでもなく、ただ淡々と毎日が過ぎていく。


幸い彼女と会うことができても、せいぜい3分間という短い接触時間。


遠くからチラっと見て店を出る日も何度もあった。



彼女と距離を縮めるには会話が不可欠なのは重々承知。


店員さんの接客をよく観察すると、Kスーパーでは店員さんから業務用以外の声かけをしてる場面を見たことがない。



時たま高齢のお客が店員さんに「今日は寒いねー」などと天候のことなどで親しげに話しかけてるのを見るが、ほとんどのお客は、さっさとレジを通してもらうのが最優先で無駄な話などしたがらないように伺えるのだ。



そもそも極度の人見知りの僕がスーパーの店員さんに気軽に話しかけてる姿なんて想像もできないし、レジの作業中の店員さんの手を止めさせてしまって迷惑を掛けるのではないか?という心配の方が勝ってしまう。



しかも僕のような中途半端なオッサンが女性に話しかけたりでもしたら、下心丸出しで傍から見ても見っともない行為だろう。



それに今まで業務以外の応対の言葉以外は発したことがない僕が急に話しかけたりしたら今さら感が半端ないのだ。




初めて彼女と出会ってからの約2年間のなかで、彼女と何の進展もなく、もう無理だと諦めようとした時期もあった。


約2年前のあの日に彼女と出会わなければこんなに苦しむことはなかった。


このままずっとKスーパーに行かず彼女と会うことなく自然消滅で忘れることができるだろうと考えた。


しかしその目論見は半月も続かない


彼女の姿を思い出してしまい居ても立っても居られず、彼女のことを忘れるどころか


会えない日が続けば続くほど、好きという気持ちが増幅してしまうのだ。



もう白紙には戻せない。



スーパーに限らずお客が店員さんに恋をした場合、一番の不安は、その人がそのお店にずっと勤務してるとは限らないということ


他の店舗に異動してしまったり、お仕事自体を辞めてしまうことだ。



以前、彼女の姿を10日間連続見かけないときがあって、そのときは強烈な虚無感と絶望感に襲われ、終焉を迎えた気分だった。



彼女と会うにはKスーパーに来店すること以外に術はない、もし彼女が辞めてしまってたらニ度と会えないと言っても過言ではない。


他所で偶然バッタリ遭遇しまくるテレビドラマのような展開は現実世界ではあり得ないことで、同じ時刻に同じ場所で偶然に出くわすなんて天文学的確率なのだ。



最終手段として他の店員さんに彼女の所在を尋ねるなんて以ての外、ストーカーや不審者だと疑われ通報されることさえあるし、尋ねた時点で僕が彼女に好意があったことが遠回しでバレてしまう。



会えなくなってから11日目にKスーパーのレジに立っている彼女の姿を見た瞬間、足のつま先から頭のてっぺんまで体液が上昇するような快感を覚えた。



サービス業はお盆休みやゴールデンウィークの連休を取れない替りに、なんでもない平日に長期連休をもらえると聞いたことがある。


たぶんそれだったのだろうと思う。



ニ度と彼女と会えないとほぼ100パーセント諦めていたのに、いつものように商品をスキャンしてる彼女を見て




僕は彼女のことを本気で好きなのだと気づかされた。




さておき、相変わらず進展のない毎日ではあるが、店内でお互いに離れた場所から彼女と目と目が合うことは何度もあった。


彼女からの視線を感じて顔を向けると目が合うこともしばしば。


気まずいので1秒以内に逸らしてしまうが、彼女の表情は穏やかで僕のことを拒絶してないことは確信できる。



そもそも普通は嫌いな人を見たりしないだろう。



自意識過剰で気持ち悪いが、彼女も少なからず僕のことを意識してるようにも思える。



だからこそ2年間も彼女を好きでい続けることができたのだ。



完全脈なしだと確信したら、とっくに諦めていたはず。



僕のほうから電話番号などの連絡先を書いたメモを渡すなど、積極的に行動しない限り、今後何年間も変わらぬ日常を送ることになるであろう。



だがそれでもいい。



本気で好きな女性がいるということだけでも幸せなのだから。



つづく。


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