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スーパーのレジ打ちとお客さま  作者: 美々少年
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女性店員編 8話 うわさ話

今はお昼休み、仲の良い60代の女性店員といっしょに食事をしている。



私がKスーパーに入社し駆け出しのレジ打ちだったころ、基本から手取り足取り教えてくださり、お客さまとのトラブルがあると助けてくれたり、面倒をよく見てくれた優しい先輩で、商品に貼ってある値札シールの価格を手打ちでレジを打っていた昭和時代からのベテランである。



その先輩がにやけたような表情で



「そうそうM島さん?」



「はい?」



「最近、夕方によく来店される男の人、30代くらいかな?いつもお弁当とお茶を買っていくのよ、見覚えない?」



一瞬、もしかしたら彼のことを言ってるのかと脳裏を横切ったが、彼への好意を悟られたらまずいので白を切って言った。



「30代くらいの男の人って案外多いから、ちょっとわかりません」


先輩は話を続けた。



「そうなんだ、今度その男の人が来たら目で合図して教えるからね、それがね、いい男なのよ、もし私が30歳若かったら絶対に猛アタックしちゃうかも、ところで嫁さんはいるのかしらね?」



いつも黙々とレジの業務に没頭している先輩がこんな話をするのは初めてなので意外だった。



「そんなにカッコいい人なんですね!見たい、見たい、来たら絶対に教えてくださいね!」



とニコっと笑顔で言い、食事を済ませて逃げるように休憩室から退室した。




ヒヤっとしたが、どうやら私が彼に好意があることはバレてないようだった。


お弁当とお茶の彼の話をしてるのかどうかの断定はできないが、先輩が「いい男」と言うあたり彼のことを言っている確率は高い。



だけど先輩が話しているとき、ときめいてキラキラと目を輝かせている少女のような表情を見せていた。


結婚して娘さんがいる60代でも、男性に対してそういう感情が起こるのかしらね。



Kスーパーでは社員同士の恋愛、そしてお客さまとの外部での交流は禁止されてない。


そもそもここの男性社員に恋愛感情を抱くような人物はいないんだけどね。



しかし万が一、私がお客さまに恋をしてることを同僚の誰かに知られてしまったら、人づてに上司の耳に入り、「何しに仕事しに来てるのか!」と、叱られるのは言うまでもない。


陰で悪い噂が広まりギクシャクした人間関係になりKスーパーを退社せざるを得ないという最悪な事態も想定される。


決してバレてはならないのだ。




いっしょに昼食をとった先輩と二人制レジ業務中、店内に設置されている時計は5時30分を指していた。


そろそろ彼が来店されるかな?と考えていたと同時に、隣で並んでレジ作業をしている先輩が私の太ももをツンツンと指で突付いた。



斜め下向きで商品のスキャン作業をしつつ、先輩が顔を向けている場所に視線を向けると



片手にお弁当とペットボトルを持った男性がゆっくりとした歩調でこちらの方向へ歩いていた。


頭からつま先までのシルエット、サラサラとした清潔感ある黒髪、瞬時に彼だと認識できた。




お昼休みの先輩の話、やっぱり彼のことだったんだ。




彼の全体像が3センチほどの大きさでしか見えない距離だったが、コンマ数秒間だけ目と目が合ったような気がした。




実際、目が合ったことは思い込みで、彼は遠くの景色を見ていたのかも知れないが、私のことを見てくれたのなら素直に嬉しい。




私のレジに来てくれることに期待し胸を躍らせていたが、彼は2つ手前のレジに入ってしまった。




考えすぎかもしれないが、もしや私が彼に視線を送ったことに気付かれて、気持ち悪い女だと不快な思いをさせてしまったのか?



モヤモヤとした気持ちを抱えながら、彼が出口から姿を消すまでチラチラと彼のことを見ている自分がいた。




暫くしてお客さまの列が途切れたのでレジから離れようとしたとき、隣に立っている先輩が小声で話しかけてきた。


売り場で社員同士の業務以外の雑談は原則禁止されているが、ちょっとだけなら許される範疇で暗黙の了解。




「わかった?さっきの男の人よ」



私は白々しく



「はい、素敵な方ですね」



とニコっと笑顔で答えた。



「あなた可愛いのに彼氏いないんでしょ?あんないい男、あなたにお似合いじゃない?さっきあの人のことチラチラ見てたじゃない?」



これはマズい、何歳になっても女性の勘は鋭い、彼のことをチラチラ見ていたことがバレていたようだ。



私は心臓がドキドキして赤面しそうになるのを堪え



「えへへ、私全然可愛くないですよ、それに知らない人はちょっと・・・仕事場だし」



と笑って誤魔化した。



先輩は冗談半分で話しているのは重々承知、そんなことよりも私の心の中は



彼が私のレジに来てくれなかったショックから立ち直れないでいた。



つづく。


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