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スーパーのレジ打ちとお客さま  作者: 美々少年
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男性客編  1話 プロローグ

僕には2年前から好きな女性がいる。



名前は知ってるが年齢は知らない、最近の女性は小顔エステやらメイクなどで見た目年齢と実年齢が判りにくいが、25歳から35歳の間だと推測している。




最も気になることと言えばその女性のパートナーの存在だ。あんなに素敵な女性なのだから男が放っておくわけがない。


声の発し方や立ち居振る舞いに落ち着いた雰囲気があるので恐らく既婚者なんだろうと覚悟はしている。


唯一の希望は彼女の左手薬指に指輪がないことだが彼女の仕事柄、業務中のアクセサリーの着用は禁止されているのだろうと思う。



30代後半、この歳になって忘れかけていた「女性を好きになる」という感情を思い出させてくれた人なのだから既婚者ならばそれはそれで仕方がない、胸に秘めてそっと終止符を打てばいい。



その女性の見た目は、身長は170センチの僕よりも5センチほど低く、丸顔で目が大きく鼻筋が通った色白の肌。仕事場では長い髪を後ろで束ねた髪型で顔の輪郭を前面に出しつつも、どこの角度から見ても美しく、今まで出会った女性の中では



ダントツと言っても過言ではない。



理由は伏せておくが僕は今から約10年前に信頼ある恋人関係で半同棲状態だった彼女に裏切られた苦い経験がある。



一方、男の友達のほとんどは身を固めて家庭を優先としているせいで僕と疎遠になり、元々人見知りの性格だった僕は、男女問わず新たな人との出会いも無く独りぼっちの状態となってしまった。



だけど一人っ子で育ったので幼少のころから孤独には慣れている、むしろ独りの方が気楽なのかもしれない。



前の彼女の裏切りから女性を信じることができなくなり、綺麗な女性と接する機会があっても何の感情も起きず緊張もしなくなった。



そう、ただのひとにしか見えてない。



アラフォーの歳のせいかも知れないが、恋愛感情ってどんなんだっけ?芸能ニュースを見ると40代、50代以上の男性芸能人の熱愛報道や結婚報道があるが人間って何歳いくつになってもそういった感情が起こるものなのか?



ちょっと自分には信じ難いことであった。



しかしこの女性と出会ってから心の中の何かが目覚めたのである。




------話は今から2年前に遡る。------



ある日の夕暮れのこと、仕事からバイクでの帰宅中に小雨がパラついてきた。



以前ゲリラ豪雨で散々な目に逢ったトラウマで雨には敏感になっているせいか、いつ土砂降りになるかが不安だったので、いつも夕ご飯で利用させてもらっているお弁当屋ではなく、信号4つ手前のKスーパーでお弁当を買って帰ることにした。



勝手な思い込みではあるが正直な気持ち、男ひとりでスーパーで買い物するのってちょっと恥ずかしい。



店内を見渡すと主婦、お年寄り、夫婦?カップル同伴ばかりで自分の存在がとても目立つ。



僕の存在など気にする人がいないのは百も承知だが、やっぱり恥ずかしいものだ。



自意識過剰な話はさておき、たまにはスーパーでの買い物もいいものだと自分に言い聞かせ、さっさと目的だけ済ませて店を出ようと意気込んで店内に足を踏み入れた。



上を見上げ天井にぶら下がっている売り場案内のプレートを見て、最短距離でお弁当の売り場に向い唐揚げ弁当をひとつ取り、次に飲料水売り場で500ミリのペットボトルのお茶を取り、片手に千円札を握り締め



早く会計を済ませることだけに全力を注ぎお客が並んでいないレジを瞬時に探し当てて小走りで向った。



なんて合理的な性格なんだ。



レジのコーナーに辿り着きほんの一瞬



レジを打っている女性の横顔に目を奪われた。



この女性店員さん、以前にどこかで会ったことがあるような懐かしく不思議な感覚、ここのスーパーは7年前に来たのが最後だから初対面なはずなのだが。



そんなことを考えながら、唐揚げ弁当とペットボトルのお茶をその女性が担当をしているレジ台に置いたのだが、自分の脳が迅速モードのスイッチが入ったままだったせいか不安定にお茶を置いてしまったため



パタリと倒れ転がり落ちそうになり急いで手で押さえた。



そのとき身体が前かがみになり



その彼女(レジ係)の顔と僕の顔との距離が10センチにも満たなかった。



同時に彼女の柔らかい指先が僕の手にそっと触れた。



今までに、お弁当屋さんやコンビニの女性店員さんからおつりを受け取るときによく手と手が触れることがあったが、特に何とも感じず物が手にぶつかっただけのような感覚しかなかった。


しかしKスーパーの彼女の指先からは、何か強烈なビームは発しているのではないかと疑うほどの心地よさを覚えたのだ。



「あ、失礼しました。」


と言うと


僕と目を合わせて、悪いのは僕の方で店員さんが謝る必要はないのに


「いえいえ、こちらこそ申し訳ありません。」


と謝罪のことばをもらえた。



彼女と目と目が合ったコンマ数秒間、ふたりの空間だけ時間が止まったように感じた。


もの凄く長く感じた。


彼女の目は黒目がちでキラキラと輝いているように見えたが気のせいなのだろうか?



レジの女性店員さんが商品のバーコードスキャンを始めてから彼女はうつむき加減で、なにやら怖い者を恐れてるような硬い表情を見せた。



もしかして僕が目を合わせたことで、気味が悪い人と思われたのかもしれない。



そういうつもりはなく大人のマナーのアイコンタクトとして店員さんの顔を見ただけで不快にさせてしまうことはないと思うのだが、とりあえずもう彼女に視線を向けるのはやめたほうがいいだろう。



会計を済ませ商品を袋に詰め、逃げるようにそそくさと出口へ向った。



正直な気持ち、彼女の姿をもう一度だけでいいから見たかったが、後ろを振り返る勇気はない。



買い物を終え駐輪場に辿り着き、幸い雨が強くなることはなくバイクで無事に帰宅できた。



自宅にて、財布からKスーパーのレシートを取り出して見ると、レジ担当者のフルネームが書かれていたが、二人制のレジだったので二人の名前が印字されていた。



急いでパソコンを立ち上げ二人の名前をSNSで検索した。「Kスーパー、レジ係、地名」など複合キーワードを様々なパターンをキーボードで入力してみたが、残念ながら彼女を特定できそうな情報はゲットできず断念した。



こんなこそこそとストーカーのような行為は許されないと罪悪感を覚えるが


彼女が既婚者なのか独身なのか?彼氏の存在などの情報だけが知りたかったのだ。



そもそも何故にこれほど彼女のことが気になるのだろう?



その夜、ずっと彼女の横顔と手の感触が頭に焼き付いて離れることができなかった。



つづく。


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