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そういえば裂け目があったんだなぁ
森の中をかけずりまわりながらレドナウは思い出した。森のこちら側は緩やかな上り坂になっている。坂を登りきったところは裂けていて、まるでてっぺんは穴が開けられたかのようで、とても向こう岸までヒトの足、いや、ケダモノの脚でもひとっ飛びで越えることはできないほどの距離があった。裂け目の下はまっくらでなんにも見えなくって、石を投げ入れても音が返ってくることはないのだけれど、風がまったく吹かない日には水の流れる音が聞こえるような気がするのであった。レドナウはなんとかこの裂け目を越えられないものか、周りきることはできないことか、もしくは裂け目の底へたどり着くことはできないものかと何度も何度も試みたことがあったのであった。その度に、風に吹き飛ばされたり、雨に打ち付けられたり、火柱に阻まれたり、とにかくこの裂け目を越えることも底へ向かうこともできないのであった。




