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そしてまたもう一人
自らの腕に抱いた赤子には、その顔に大きな痣があった。頭部前面から左の耳へかけて、左目を覆うように赤黒い色で覆われていた。黒い瞳は光り輝いていたが、周囲のどす黒い色がそれを一層不気味なものに見せていた。
そして一人の少女が部屋へ入って来た。彼女はベッドに横たわる母の元へ真っ直ぐに進んだ。彼女の手を握ったままの侍女の反対側に跪き、その冷たい手を取った。
産婆はまたもや足元のシーツから身を露わにした。その腕には見るからに貧弱な赤子を抱えていた。
「…王子様です。」