追憶その3 鍵と扉
「ぼくは・・・・・・ただ・・・・」
辺りの景色は、ぼくを背後から追い越していくかのように、進んでいる。
『ムギンの気も知らないでっ!!』 フニンのその言葉がいつまで経っても、頭の中をぐるぐると回っている。
なんであの時、ぼくはあんな事を言ってしまったのだろう?
もっと、言い用があったはずなのに。
どうして? ぼくは、ただ、ひたすらにそれを迷走している。
―――――心の屋敷―――――
「ぐずっ・・・うぇ・・・」
「もう泣くなよ、フニン」
俺は、マスターを退席させた後、ずっと、フニンに胸を貸して、泣いているフニンを抱きしめていた。
「ごめん・・・ウチ・・・・あんな・・・こと・・・・」
「フニンの所為じゃない。俺が、俺がもっとうまく言っていればよかったんだ」
「ううん・・・ちがう・・・・ウチは・・・・ただ・・・・・」
フニンの言いたいことは分かる。フニンはただ、マスターのことを止めたかっただけだ。
けど、うまく言い出せなくて、自分でも言いたくない事を口走ってしまっただけ。
だから、誰にも、罪なんてない。マスターにも、フニンにも。
悪いのは、いつも――――
『なんか、辛気臭いなぁ、君たち』
後ろからの声で、誰かがここに居る事に気が付いた。 この声からして、後ろを向いて、姿を確認するまでもないだろう。
「なぜこんなところに居る、ピエロ」
『相変わらず、釣れないんだねぇ、君は。いや、ここでは君たちと言っておこうか』
「こちらが質問しているのは、こちらだ。そして、お前はそれに答える義務がある。」
『なぜ?って言われても、ボクはただ、我らがマスターの命に従っただけの事。
それに、ボクにはちゃんと『ロキ』と言う名があるんだ。それを、ピエロという安易な言葉で、言われるのは侵害だねぇ』
「マスター?・・・・ああ、ゼルティアか。」
『そう。マスターはこういった。『ここの主人に安らかな夢へと誘え』、とね。でも、君たちが入ってきたお陰で、その命も果たせなかったのだけれど』
「そうか。それでここまで愚痴を言いに着たと。大した暇人だな」
『う〜ん。否定はしないが、それだけの用でここにきたわけじゃないよ』
「どういうことだ!?」
『おっと、怖い怖い。そう威嚇すんなってぇ。ボク、こう見えても気が小さいんだから』
「よくもまぁ、そんな嘘が言えたものだ。かつて、10万の軍隊を1時間足らずで殲滅した奴の言葉とは思えん」
『そりゃそうさ。あの時は若かったからねぇ』
「さっさと用件を言え。そうでないと、二度と、世界に存在できないようにしてやる!」
『はいはい、せっかちなやつ。まぁ、いいや。話と言うのは他でもない。
『アレが、復活した』。それだけ』
「待て、アレとは・・・まさかっ!!」
『そう。エデンの鍵と対になるもの。『ゲート・オブ・エデン』のこと。ようやく、こちらに現れた、と言うわけさ』
「だが、なぜだ? この時代でなくとも、現れる条件など揃っていたじゃないか。それが、なぜ今になって・・・」
『さぁ? ボクに聞かれても、ねぇ。それは、自分で考えな。それじゃ、確かに伝えたからな。ボクはこれで、失礼するよ』
そう言ってピエロの、いやロキの気配は消えた。
「扉が・・・・現れたのね・・・・」
「ああ、そうみたいだ」
「また、誰かが死ぬのかな?」
「そうならないように、俺たちがやるんだろう」
「そうだね・・・・」
フニンは、そう言って眠りについた。 鍵と扉。
この2つが、どういう事を意味しているのか、そんなの当の昔に判っている。
「絶対に、止めてみせる・・・」
屋敷の外は、きれいな星空だった
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