↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

02

*再会*


目を覚ますと、何故か貴方がいる…夢の様な感覚の現実

私の体は何処も彼処も思う通りには動かず

私の自由になるのは、目だけしかなかった。


静かな中に定期的に鳴る電子音と、機械の起動音

私の視界の中に存在する貴方は

『おはよう』と、私に優しく微笑み掛ける


私は貴方と一月振りに合う筈なのに

貴方の姿は、何年も苦労して来た様な感じの容貌で

痩せ白髪交じりになっていた。


貴方は私を、もう一人の私の名前で呼び

『大丈夫だよ何も心配する事は無い

美花は何の罪の意識を持つ必要はないんだよ』と、囁いた。


貴方は私が犯した罪の種類をちゃんと知っているのだろうか?

死を齎す赤い花の種を蒔く事は

普通に、高額な賠償金を請求されるレベルの罪なのである


私は自分の意思で声を出す事が出来ず

黙ったまま貴方を見詰めていた。



*環境変化*


私の知らない所で世界は動き

私が嘗て発した小さな嘘で、小花であった私は何時の間にか殺され

死んだ美花が、私と言う存在で生き返っている


本来の私は「赤い花が齎した死へ向かう眠り」の間に

貴方の行動によって殺され…

私に「死を齎す花」も、貴方の行動によって枯らされかけている

残ったのは、美花と成り代わった私だけだった。


総ての罪は、冤罪も含めて・・・


美花を死へ追いやった者達

直接の原因を作った者達と、それを提案した者達の元へ


法律の名の元、しっかりと送り届けられた。


貴方は私に美花への愛を語りながら・・・

貴方は出来るだけ多くの者達に

小さな罪悪感と、ちょっとした恐怖を届ける為


貴方を愛し、貴方の心を奪った美花を「傷付け・陥れた」者達と…

そんな者達の邪悪な願いに賛同した者達は勿論

賛同せずとも、美花を傷付ける事に、知らぬ内にでも

参加してしまった者達の元へ


「自分の恋人が死んだのではなく、その双子の片割れが

人違いで虐めの対象に成り、死んでいた事」


「これから、人違いをした上に一番酷い事をした者が

法律によって裁かれる事」


「自分が自分の恋人を取り戻し、その恋人を虐める事に先導した

その他の者を捜している事」を告げる手紙を

小さな携帯端末を使い、送り贈るのを見せてくれる


貴方の御蔭で、彼等彼女等に穢された美花の汚れは

小花の名に降り注ぎ、雪がれた美花の名は綺麗になって

私の名前になっていた。



*餌*


貴方が配信するメールに、美花にされた私が入院している事と

その入院先を送付していたのだろうか?

どんな事でも「謝れば許して貰える」と勘違いした者達と

「高学歴・高収入」な貴方を目当てにした人達が

貴方の罠とも知らずに、録画される私の病室へと御見舞に来る


「謝れば許して貰える」と勘違いした者達は

半分寝たきり状態で、喋れなくなった私に懺悔して

その後、貴方が現れると・・・

私に向かって懺悔した事をオブラートに包んで話して許しを請う


それ以外の人達は・・・

女性であれば、私の死を望み後釜を狙っている事を滲ませ

男性であれば、貴方との仲を取り持つ様に御願して来る


私は改めて世界の汚さを知り

総てを知り、貴方を見守る傍観者となった。



*後悔*


ある日、ある時…私を閉じ込める病室で

私が今まで見た中で

一番、綺麗な心を持った人と出会い再会した。


彼は昔、自分が犠牲になっても

何度も何度も、私やもう一人の私を助けてくれた人

とても優しい、私の恋した人


彼は悲しい瞳で私を見て、静かに謝り

嘗ての私「小花」への思いを告げ

当時、「小花を受け入れられなかった理由」を話す


彼はとても後悔していた、でも・・・

「あぁ…アナタも私で無くて、美花が好きだったんだね」

私はその理由に涙した。


彼は懺悔する様に

『受け入れていれば、君の片割れを守ってあげられたのに…』と

『守ってあげられなくて、ごめん』と謝る


でも、それは…とてもとても残酷な事

私は首をゆっくり横に振り、動きの悪い手で彼の手を取った。



*離反*


汚い者を見過ぎて、汚れていた私の目から鱗が落ちて

総ての罪を私は洗い流したくなる


貴方は、私が探し出した赤い花より

もっと、目立たない見付けられ辛い赤い花を見付け出して

培養しペットボトルに詰めたその種を、加害者達に蒔いていた。


「そして貴方は彼にも、赤い花の種を蒔こうとしている」


私はそれを止める為に

貴方が運んできた御茶に手を伸ばし、床にぶちまけ

ゆっくりと『もう、御終いにしましょう』と、震える声で囁く

貴方は凄く驚いている様子だ


私自身を見ない、表面上の私しか見なかった貴方は

赤い花によって死に掛けた私に

ちゃんとした、考える力が残っているとは思わなかったのだろう


私は自分の意思で普通に体が動かせなくなっただけ・・・

肢体不自由になっただけであって、知的障害にはなっていない


それに気付きもしない貴方が、繰返し私に向かって

『どんな風になっても、愛している』と、言っていても

私には、虚しさと愛されない切なさしか残らないのだ


貴方の様に彼も、私では無く美花しか愛さなくても

私にとって、残酷な慈しみ方でも

美花の為であっても、「小花」の事を考えてくれた彼を

私は守りたいと思った。



*決断*


貴方に総てを委ね、貴方に生かされていた私は

貴方からの差し伸べられる手を無くせば、生きてはいけない

それが分かっていても、私は彼の為に動く


彼を護ろうとする私を見て

貴方は、彼に何の説明も無く彼を強引に追い返し

『二度と来ないでくれ』と、言い放ち


彼が病院を出て見えなくなるのを病室の窓から確認すると

突然に裏切った私を断罪する

貴方の怒りはなかなか収まらず・・・

罵倒、罵りの中で…貴方は私に『出て行け』と言っている


今回の事で・・・

このまま此処に居続けられなくなったかもしれないし

出て行けば、逆に怒らせてしまうかもしれない

不確定な状況に陥った。


だから私は、貴方が病室を出て行った後・・・

貴方に犯させてきた、私と同じ罪を

これ以上、貴方に続けさせてはいけないと思ったから

即座に貴方の言葉に従って、出て行く事にする


後々、追い出されるにしても

今、出て行けば…確実に、貴方が怒るのは目に見えていたけれど

貴方の罪の証拠を持ち出すには今しかなかった。


私は、貴方が持ち込んだ証拠となるであろう

御茶のペットボトルを持って立ち上る


そして、私の私物は此処には無い

もしかしたら、何処にも存在しないのかもしれない

私は自分に繋がった線に繋がる機械を総て停止させてから

繋がった線や点滴を引き剥がし


貴方へのメモを残して

証拠と、着ている下着にパジャマとカーデガンにスリッパを貰って

足取り重く病室を旅立った。



*隠れ場所*


大きな病院の近くの商店街では

患者がそのままの格好で、買い物に来る事が時々あるので

少し薄着でも、パジャマ姿でも…

気にした様子を見せても、誰かに呼び止められる事は無い


私はこれ幸いと、商店街の中を歩いて行き

上の方に空き店舗の有る

下の方の階が、深夜まで営業をしている食べ物屋が入った

古そうなビルを見付けて、中に入り込む


古いビルには、防犯設備が整っておらず

上層階の空き店舗には、人が来ない

更に下の方の階が出入りの多い店なら、温かさが上に登り

他の場所よりも、少しは暖かいのだ

私は人目が少なくなる深夜を待つ事にした。


階段の踊り場にある窓の外を眺めながら

私は一人、不意に過去を思い出す


貴方の女友達を中心としたグループに虐められ

続いて、貴方に捨てられ

それでも、貴方の恋人であったと言う理由で虐められ続けた


私の双子の片割れであった、今は亡き…もう一人の私と一緒に

学校帰り逃げ隠れしていた時の事を思い出ていた。


もし、この手の逃げ場所を私が見付けていなければ…

もしも、もう一人の私が逃げ込む所を見付かっていなければ…

貴方と、もう一人の私が恋人同士にならなければ…

貴方がもう一人の私に告白して、恋人同士にならなければ…


「あんな事にはならなかったのに…」

無意味な仮定が脳裏を過ぎる

虚しくなって、私は目を閉じ仮眠を取る事にした。



*逃走*


遠くで、シャッターを閉じる音が聞こえて来る

私は身を縮め、はぁ~っと息を吹きかけ

冷たくなった指先を温め、手と手を擦り合わせる


私の見通しが甘かったらしい・・・

見知った街並みだから、大丈夫だと思ったのに

季節と天候を読み間違ってしまい

ちょっとヤバイレベルで、外は寒くなっているかもしれない


真っ暗な階段、踊り場から見える外も真っ暗で

遠くの電飾看板の明かりに照らされ、粉雪が

チラホラ振っている様子が見て取れる


でも、此処でジッとし続け

此処で死んでしまうのは、迷惑極まりないだろう

「せめて、もう少しだけでも

他人様に迷惑が掛からない所へ移動しなくては…」


私は立ち上り、ヨロヨロと階段を下りる

さっきの音が、このビルのシャッターの音だとしても

内側からなら、鍵が無くても開く筈だから

ビルの外に出ていける筈…


私は自分のタイムリミットがどれくらい残っているか分からない

まだ、私の中の赤い花の種は残っている

貴方の準備した花の種とは違う、似て非なる赤い花の種


私は私が死んでしまう前に

貴方を止める為、脅しのつもりで持って来た

花の種の混入した御茶を捨てておかねばならないだろう

私はソレを捨てる為に持って歩きだした。



*空虚*


頭痛が酷く、とても億劫になってきた

私は…近々、溝掃除が無い事を願いながら手っ取り早く

液体を側溝に捨てる事にする

手元に残ったペットボトルは、店が出したゴミに紛れ込ませる


後は自分の身体なのだが…どうしたら良いのだろうか?


私が寒空の下、一人ぼっちで途方に暮れていると

『美花』と呼ぶ、聞き覚えのある声が背後から聞えて来る

私は振り返る事が出来なかった。


私はどう足掻いても、愛される美しい花には成れない

同じ似た花でも、私は小さな花なのである


振り返りもしない、動きも、逃げもしない私に業を煮やし

アナタは、私の正面に回り込みがてら私の肩に触れ

『君はとっても、冷たいね』と言った。


それは、気持ちの事だろうか?

体の事だろうか?それとも、態度の事だろうか?

どれか分からないが、私はそっと溜息を洩らす


アナタは静かに笑う

『所で、君の望みは少しでも叶った?』

これまた、どの望みの事だろうか?

復讐?救済?それとも、仇討の終焉?

私はその考えが可笑しくって、自嘲気味に笑った。


私は何の為に誰の為に、赤い花の種を蒔いたのだろうか?

同じく、赤い花の種を蒔くのを止めさせようとするのだろうか?


一時の感情で、復讐を思い立ち

一瞬の感情で、もう止めたい止めて欲しいと思い

今、この瞬間で…総てが虚しくなった。



*私が赤い花*


もう一度、自分の中に残っていた赤い花に侵されて

私は、新しい赤い花を生み出していた

既存の薬の効かない赤い花を…


私が最初に探していた

本物のマクロライド耐性を持つ赤い花を…

そしてそれは、早期で「死を齎す赤い花」


私が貴方に贈り・・・

貴方を通じて、もう一人の私を死に追いやった

貴方の女友達に贈りたかった「報復の赤い花」


今は真っ白い四角い部屋のビニールカーテンに囲われた

狭い空間に、私と一緒に閉じ込められている

『マルデ、温室栽培シテイルミタイダネ』

私が素直な感想を述べると、アナタが笑った。


『確かに、その通りかもしれないね

君は、君が生み出した新しい赤い花のサンプルだから』


私はアナタの言葉を訊き、少しだけ嬉しくなった

私は今になって小さな「必要とされない花」から

標本としてでも、「必要とされる花」になったらしい

目を閉じると目尻から温かい液体が流れた。

『これ、プロットじゃね?』と、思った人!ほぼ、正解!

ちょっと書き足しただけの作品です。


そのままのが、面白い気がしたので投稿してみました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。