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01

*慟哭*


貴方は、貴方が一度手にした「花」の事を本当に憶えてましたか?

貴方が欲しがって手に入れ、自分で面倒見切れなくなって

自分の都合で捨てた「花」の事を…


知らないですよね?憶えてなんていませんでしたよね?

だって、貴方は「花」を元の場所に強制的に戻したつもりで

簡単に捨ててしまい後は、見向きもしなかったんだから!


あの「花」は、貴方によって打ち捨てられた後…

孤独の中、寒い冬の環境に虐められ続けて


辛くて寂しくて、心を壊して

最期には痛々しい程に痩せ細り、立ち枯れてしまって

次の春に、花を咲かす事は無かったんですよ。



*類似品*


私と同じ場所で育った「花」が枯れて数年が経過した。


私は「花」が咲いていた頃に飼い出したワンコを散歩しながら

猫の横顔で見かける、猫の目みたいな三日月と小さな星達を眺め

今日も貴方を待ち侘びる


冬の朝5時は、空気が澄んでいて透き通る深い群青色の夜空

朝6時頃になるまで、明けては来ない


タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、

私の願いが叶い、遠くから聞こえて来る軽快に走るリズム

私と共に生きてきたワンコの耳がピンと立ち、音の来る方向を捜す

そして、尻尾がゆっくりと揺れ始めた。


そう、その足音の持ち主は貴方…

少し前に、数年振りに再会した「とある学校の王子様」だった人


『おはようございます』

私が笑顔で挨拶すると、貴方も『おはよう』と返してくれ

軽く息を切らしたまま、私とワンコと一緒に歩き出した。


貴方は何時まで経っても

私が似た名前の違う「花」である事には、気付いてくれなかった。



*偽り*


それから、一緒に散歩を始めて数年が経過すると

貴方は部活を辞め、社会人に成り

仕事の忙しさから、早朝ランニングをしなくなる


その頃には、それまでの積み重ねで

私は、早朝以外の貴重な時間を貴方と過ごす様になっていた。


時に寄り添い…

でも、総てを許さず一定の距離を大切に…

肉体的には絶対に、縺れ合う事の無い清い関係だけを追求して


私は貴方の弱点を突き、貴方の心だけを手繰り寄せ

貴方にバレたりしない様…

私は私の人生を犠牲にするかの如くに蔑ろにし

貴方の気持ちを掌握する事だけに全力を尽くした。


そんな時が延々と続き

貴方は、昔の「花」が花言葉を気にしていた事を思い出して


貴方は今は亡き「花」の誕生日に、紫陽花を抱え・・・

『家族の結び付きを大事にしたい』と言って、私に近付いてくる


でも、貴方の本質は西洋紫陽花のハイドランジアでしょ?

私は黙ってソレを受け取り、笑顔で御礼を言った。



*伝えたい気持ち*


後日…

頂いた花の御礼に私は、枯れてしまった「花」の愛しい貴方へ


春にはまだ遠く

時期外れなスノードロップを貴方に贈る為

鉢植えの物を手配する


そうだ!鉢植えにアイビーを添えなくてはイケマセン!!

私は小さな鉢の縁近くにアイビーを飾って

貴方への気持ちを贈り物にする事にした。


私が『私達は、破綻の無い結婚をしたいね』と言って渡すと

互いの親が再婚していて、それぞれ帰る場所を持たなかったので

貴方は、本当に嬉しそうに笑ってくれた。


さぁ~、私の気持ちが分からない貴方と私で

死んでも離れない様に、永久の誓いを立てましょう


私達は、貴方の友人達に祝福され

貴方の一部の女友人達に、私だけが妬まれつつ

春に結婚する約束をして、婚約をしました。


私は心を込めて、未来を語ります

『庭には、ハナズオウの森

私が庭で育てたオトギリソウ茶は、如何ですか?なぁ~んてね』と


貴方は何も考えずにハシャギ

『今は、ハーブに凝っているんだっけ…良いねそれ』と

春から住む家での夢を語る


夢見がちで浮気な貴方に、私を捧げる私は…

全身を蘇芳色のドレスで包んで、ハナズオウの森の妖精として

貴方を御迎えする事でしょう…


でもね…皮肉を言っても気付いてくれない貴方に

私は有る意味で絶望しています。



*嘘*


結婚の予定が決まると

貴方は、私を貴方の友達と頻繁に引き合わせる様になる


御蔭で貴方の女友達が、貴方より先に私に気が付く

それは不確定な迷いの有る疑心…

貴女は友達を引き連れ、私に攻撃を仕掛けに来る


私は兼ねてより持ち合わせた、憎しみを込めた目で

卒業アルバムを出して

私と、もう一人の私の写真を見せてあげた


其処に写る、もう一人の私は…恋に破れ虐められ

当時、地味だった私と瓜二つな姿をしていた。


『そうね…貴女達は、私だけでなく

私の双子の片割れも、私だと勘違いして虐めていたわね

言われも無い嫉妬の餌食になって、死に追い遣られた私の半身の事

良く知っていたわね?ソレ、家族と警察しか知らない事なのよ?

後、知っている者が存在するとしたら

犯人と、その仲間だけなのに…何で貴女達は知っているの?』


其処に遇ったのは、過去の真実を物語る数人の表情

『私、ずぅ~っと貴女達を捜してたのかもしれないわね

知ってる?場当たり的な犯行の犯人を捕まえて、罪に問うても

弁護士が減刑して、ほぼ罪は洗い流されてしまうのよ

だから、実行犯の動機を捜してたの…

名乗り出て来てくれてよかったわ』

私が微笑を浮かべながら、本当の涙を流す


『あら?どうしたの?青い顔して…

さっきまで、鬼の首を取った様な嬉しそうな顔してたのに…』

私が一歩近付くと、貴女達は一歩下がる


私が涙を拭い、新たに不敵な笑みを浮かべ

『もう逃がさない…貴女達にも、罪を償って貰わなくては

あの頃みたいに傷付けられた事、許してあげない…

大人になった私は、子供の頃みたいに無力ではないし

優しくも、暴力に屈する程に馬鹿で単純でも無いの

簡単に、実行犯の動機の手掛かりを手放したりしないわよ?』

と、伝えたら…数人が姿を消し、数人はそれ以降

私の近くに寄って来なくなった。


でもまだ、大丈夫…貴女達は、貴方の側に居る

私は、接点の無い人の噂話を製造するのが得意な貴女達の為に

貴女達の言った嘘と真実の違いを少しづつ周囲に広めていく


貴女達の嘘と、現実の本当との答え合わせを始めると

皆が皆、それを楽しみ…貴女達に怒りを覚え…貴女達の仲間でさえ

貴女の話を聞く度に

『どうせ又、作り話でしょ?』と言う様になった。


私の身近には、過去に居なかった貴方の女友達が集い

その中で、同情と

本当は貴方を共有していると言う余裕から来る嘲りが

私の復讐への意欲を養ってくれた。



*不協和音*


仲良しだった、貴方と御友達グループが少しづつ壊れていく

私は貴方を支えながら

貴方の御友達の輪が小さくなるのを見て楽しんだ


でも、それでも、貴方は浮気を止めたりしないのね?

では、さぁ~!復讐を始めましょう

そう!私は、貴方の死を望んでいます。


『「花」を本当に愛していた』と、言うのならば

別れの時、貴方が「最初に別の道」を選ぼうとした時に

少しは「花言葉」に興味を持ってくれていても良かったのに…


私は、もう一人の私が飾り続けていた

私が貴方に同じ事を無言で訴え掛け、身に付け飾り続けた

クロッカスの花のアクセサリーを今、抱締めて泣いています。


「美花」の代わりに…いいえ、違います!

私が、「小花」が望んで、私の為に!

この冷たい冬が終わってしまう前に、新しい花が咲き出す前に

裏切りの齎す死を貴方へ届けましょう


執行猶予は、フキノトウの花が咲き終わるまでです。


その前に、確かめましょう…

『貴方はアノ時…

美花が貴方に贈ったガマズミの花の花言葉を知っていますか?

美花が別れの時…

どんな気持ちでいたか、知る事ができていましたか?』


貴方は首を傾げ

『どうしたの?何で行き成り「一人称」を自分の名前にするの?』

と、言います


私は決意を固め…

『ちょっと、昔の気持ちが聞きたかったから』と言って引きさがり

『フキノトウが咲く春の式までは』と、拒んできた事柄を

少しづつ、開放して行く事にしました。



*薪時*


さぁ~、高確率で死を齎す赤い花の種を貰って

その赤い花の種を撒きましょう!

でも、しっかり根付かせる為には手順が大切ですよね?

今までの軽いキスから、私自身の意思でデープなキスへ移行します


赤い花の苗床になった私は、焦らす様に

激しい情熱的なキスだけを、貴方に贈る事にしましょう

だから今日も、私から貴方の唇を強引に激しく奪います


それで、私の肌に咲いた赤い花の種を貴方にも

ちゃんと植え付けられるのですから


貴方は、何も知らずに

驚きながらも喜んで、私を何度も受け入れてくれました。


此処からが、処罰の執行の始まりです

私がこれから何もしなくても、貴方が花の上を飛び交い

私の肌の上に咲く赤い花の種を

あちらこちらの女友達の身に撒き散らして行ってくれる事でしょう


但し、死を齎すには

10週間は貴方の中で花の苗を育てなければいけません

さぁ~、貴方の身に花が咲いたらどう、誤魔化しましょうか?

マクロライド耐性を持つ早期タイプのモノだけど時間は必要です。


最初の花が咲いている短い時期、誤魔化せば

今の私の様に花を隠している事は、外見では分からなくなります


それと、貴方が死ぬ時

私はもう既に、赤い花の毒で死んでいる事でしょう

貴女の死を見届けられないのが残念です。


私は貴方に、自分の死に様を見られない様

貴方に花を植えた事がバレない様に、失踪して失踪先で

誰とも知れず、身元不明で死ななければいけません


歴代、早期で髄膜炎で死に行く赤い花の苗床になった私

私はハネムーンの支度と称して、海外への失踪の準備を始めます。


予定では、間に合う筈だけど海の上の氷の上は歩けるだろうか?

運悪く、歩けなくても流氷は見れるだろうか?

私の中で小さな夢だけが揺蕩っています。



*発芽*


ある日、私は…

貴方の作った花壇の大きさを知り、愕然とする事になる


花の咲く場所は、此処に違いましたが

貴方の御友達の殆どが、花の苗床になってしまっています

悲しく辛く苦しい現実が、私の目の前で繰り広げられていました。


私が事前に壊してきたのに

まだ、こんなに沢山の貴方の御友達がいたなんて…


もう一人の私と同じ様に

何時の間にか貴方に恋してしまっていた私は

目に見える様になった現実を直視し、目を逸らす事も出来なくて

貴方や貴方達を見守ります


鏡の中からもう一人の私が「同じだね」って

悲しそうな顔で私を見ていました。


*失敗*


貴方の花園で育った花が、どういう花なのかバレルまで

もう、そんなに残ってはいないでしょう

別れの時が近付いて着ています


そんな時でも貴方は、何も知らずに無邪気に

私を置いてスノースポーツに行く予定を立てていました。


私は貴方との終りの時間を大切にしたくて

貴女達が一緒に行く事を知っていたから

『スノースポーツはしないけど、付いて行きたいな』って

勇気を出して言います


でも、貴方は…「独身最後」

「この先、ずっと一緒に居るんだから」と、言うのを理由に

私の願いを却下してしまいます

私は全てを諦め、貴方を静かに見送る事にしました。


これまでに間に

貴方の御友達の輪を完全に壊せなかった私が悪いのです


壊せなかったから…

今、私は一人で貴方によって取り残され

当たり前の様に、オイテケボリを食うのです。


そう思うと、貴方が私にしてくれた約束全てが

とても「ちゃち」で、既に壊れていて

「何の意味も無いモノ」の様に思えてきます


最初から、其処のは何も無かったのです

私だって、最初は嘘から始まっています

嘘から真が出て来ても、それはやっぱり嘘なのです


私は貴方の留守中に、貴方から貰った総ての物を返却し

今、住んでいる場所も

貴方と繋がる物をも総て出来うる限り処分しました。



*旅立ち*


捨てたり処分したりするのは、意外と簡単です

当分生きる用に必要な貴重品を

旅行用と称して準備していた鞄に詰め込み


後の事は全て、未練を残さない為に業者の人に御願いしました。


今日で、貴方に制裁を加える為に

死んでしまった「美花」の振りをして生きてきた人生は

御終いにしてしまいましょう


今日からは…

死を齎す毒のある赤い花が残した

元の「小花」としての残りの人生を生きていかなくてはなりません


最初に貴方へ花の種を撒いたのは私

貴方が気付いて、貴方の中の花を駆除しても

私だけは、この花を抱いて死んでいく事を誓います。



*住処*


私は、貴方の為に泣くのを止める為に

雪深い貴方と接点の無い、遠くの土地へと移住先を見付けに行く


そしてもう、私には保証人になってくれる人が存在しなかったから

御金のある内にマンスリーマンションを借りて

アルバイトで生計を立てる事を決意し不動産屋さんの扉を開く


最初に入った不動産屋さんに「恋人から逃げている」と言う

嘘でも、真実の総てでもない事情を伝えて

「捜している人が来ても、内緒していて欲しい事」

「恋人にバレタラ、次の物件を紹介して欲しいと言う事」

「逃げる為に無職で、予算が少ない事」を告げた。


不動産屋さんに『警察には相談しましたか?』と訊かれ

私は何も言えす困ったような表情をすると


その表情が余程、酷いモノであったのだろう

不動産屋さんは『わかりました』と、言って

『事故物件になってはしまいますが…』と

地元民としか顔を合わせにくい場所にある

長屋スタイルの3世帯住宅の1室を紹介してくれた。



*孤独*


私は週給制の派遣の仕事の中から、工場の仕事を選択し

少しでも、貴方の事を考えなくて済む様に

積極的に貪欲的に働き始め


仕事が終われば、貴方の事を考えないで済む様に

不眠症の市販薬と酒の力を借りて眠りに付く生活を始めた。


でも時と共に、私は私が壊れて行くのを感じる様になる


私に死を齎す赤い花が、私を蝕み殺すまで

生き続けなければイケナイ苦痛と…

私が私の死を望んでいる筈なのに

死への孤独感と恐怖が、私の心をゆっくり浸食して襲って来るのだ


私は無意識の内に貴方の名を呼び、呟き

忘れられない思いを胸に抱き続けていた。

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