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1.突然の異世界転移

以前投稿した「お風呂に入ってうたた寝してたらいつの間にか地底国にきてました」という小説を書き直し再投稿しました。


「あーー気持ち良い……」


 自分好みの温度に設定した浴槽に、お気に入りの入浴剤を入れてお風呂を楽しむ私の名前は斎藤ちづる。

 ちなみに四十歳、只今絶賛エイジングケア中。


綾人(あやと)、かっこよかったなぁ」


 一人息子の綾人は昨日二十歳を迎え、その晴れ姿を母である私にしっかりと見せてくれた。

 早くして結婚したのは良いけど旦那の度重なる浮気で離婚し、シングルマザーとして綾人を育てた私にとって、綾人のスーツ姿はどんなものよりも輝いて凛々しくて、息子を成人式に送り出した後盛大に泣いてしまった。


 だってさ、泣いてばかりいたあの子があんな立派な大人になったんだよ?「ママ」呼びからいつの間にか「母さん」になって、背も伸びてガッチリしてさ。

 一人で全てやるのは本当に大変だったけど、綾人のあの笑顔を見たら今まで頑張ってきて良かったなって思ったもん。


 そんな綾人は初めて出来た彼女とお泊りデート。今頃に夜景でも見にいってるのかな。


「あー、私も母親卒業かぁ!」


 毎日が怒涛の日々で、自分の事なんて考える余裕なんてこれっぽっちもなかった。

 でも綾人が一人暮らしを始めた今、労働以外の時間はすべて自分の時間となるのだ。


「一人焼肉に一人カラオケ……連休取って旅行にも行っちゃおうかな~」


 浴室に取り付けられた鏡は曇り止めを塗っているため私を映し出す。

 昔から「綺麗な瞳だね」と言われていた切れ長二重の黒い瞳。

 加齢とともに少しくぼんできたし目尻にシワもあるけれど、私にとってはチャームポイントだしこの顔は割と好きだ。


 毎日働きづめで体型を気にしている暇はなかったけれど、よく見たらおなかたるんでるな。

 そりゃそうだ、くっそ痛い思いして愛しい息子を産んだのだから。

 いいやもう、ダイエットは明日からだ明日から! 


「明日は午後からの仕事だし、今夜は飲むぞー!」


 意気込んで再び肩まで湯に浸かると、急にとんでもなく眠くなってきた。


「やば……でもちょっとだけ」


 長年の子育てから解放されたからかな。


 長湯は危険だから五分で起きようと、私はそっと目を閉じた。





 入浴剤入りのお湯に体を包まれながら、私はどこともわからない真っ白な空間をぐるぐる彷徨っていた。


 ここ、どこだろ……すごく心地いい。


 卵のような形でお湯にコーティングされている私。

 思考はぼんやりとしているが、全く息苦しくないのが不思議。思わず手を伸ばして、お湯の断面に触れようとする。


 その時ふと、声が聞こえた。



「……、ってる?」

「ぁ、……!」

「……ま、どぅ……!」



 なにかいっているの?

 日本語のようにも聞こえるそれに意識を集中しようとすると、突然強い引力によって後方へと引っ張られた。


 その力はまるでジェットコースターに乗せられたように爆速かつ右往左往に引っ張られるので体が驚くも、お湯がクッションとなり衝撃はほとんどないが、体が湯の中でぐるんぐるん回るので気持ち悪さが半端じゃあない。


 は、吐きそう……! 誰か止めて!


 押し寄せる吐き気にぎゅっと目をつぶった、その時。



 ドン!



「ぃ、たぁ……っ」


 体が何処かに落とされた。


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