13.
いつもありがとうございます!亀更新申し訳ありません。
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「そういえばさっき表で可愛い鳥を見たのよ」
「鳥……ですか?」
「ええ。鮮やかな赤色の小さな鳥なんだけど……アオイの指先に止まって囀ってたの」
「!」
「とっても可愛かったわ……」
この様子だとその赤い鳥がクラークがアオイのもとに遣わした伝令鳥だとはホノカ様は知らないのだろう。
アオイは何も言わなかったのだろうか?
(それにまだ屋敷を出発してから1日しか経っていない。定期連絡には早いんじゃないか)
考えられるとすれば屋敷でなにか問題でも発生したか。
もしくは何らかの手段によって今のジェイルたちの様子を監視しており、異変を感じとったためにアオイに探らせようとしているのかも。
(父様ならやりかねない……)
後者だとすると怪しいのはあの犬だ。
“毛玉ちゃん”ではなく、なぜか馬車の積荷に荷物として積み込まれていた“マリモちゃん”という犬。
ホノカは知らないがあれはただの犬ではない。
ユリウスとジェイルによって無力化された結果犬の姿となった闇の一族であり、普段はユリウスの傍で四六時中監視されいいように使われているようだった。
にも関わらず今回の旅に限っては同行させた。
きっと自分がいない間のホノカやジェイルの様子を報告させる為に違いない。
(でもまぁ、いまは好都合だ)
ジェイルからユリウスに連絡をとらなくても向こうが勝手に探ってくれるだろう。
この地に広がり始めている疫病という異変について。
1日目同様に2日目に訪れた町のほとんどで疫病が蔓延しているようだ。(そのせいで2日目の今日も予定していた宿場町には立ち入ることすらできず、仕方なく離れた街に宿をとったのだった)
それに心なしか被害の度合いが北部に近づくにつれて増していっているように思える。
もしかしたらこの先に疫病の原因となるなにかがあるのかもしれない。
だとすればこのまま予定通り祖母の住む別邸へと向かうのはリスクが高く、非常に危険だ。
なんとかしてこの街にホノカ様を足止めできると良いが……。
せめてこの先に進んでも安全だと確証が得られるまでは。
考え込むジェイルをよそに、部屋の扉が3回ノックされると、そっと扉が開けられそこからステラが顔を出した。
先程まで馬車に積まれていた荷物を運び出したり、整理をしてくれていたのだがようやく終わったのだろう。
ホノカの手荷物を片手にステラは一礼をした。
「ホノカ様、ジェイル様。お荷物をお持ちしました」
「ありがとうステラ」
「こちらに置かせていただきますね。それから……」
手荷物をてきぱきと整理すると、ステラは一度廊下へと出ていった。
すぐに部屋へと戻ってくると、その両腕には見慣れない長方形の大きなケースが抱えられている。
そっと床へと置かれたケースの蓋をあけると、白いふわふわとしたなにかがホノカ目掛けて飛び出した。
「毛玉ちゃん!」
「わぅ!」
「女将さんに許可をいただけたのでお連れしました。こちらのケースも貸してくださるそうです」
毛玉ちゃんはしっぽをブンブンと振りながらしきりにホノカの顔を舐めまわしている。
ほんの少し離れていただけなのに寂しかったのだろうか?よほど嬉しそうだ。
それにしても、毛玉ちゃんがここにいるのならいるであろうもう1匹の姿が見当たらない。
ジェイルは不思議そうにステラに尋ねた。
「マリモはどこにいるんだ?」
「マリモさんなら」
「あーもーちょっとは大人しくしなさいよ!」
ステラの声を遮るように廊下が騒がしくなると、先程のものよりも一回り大きいケースを抱えたアオイが部屋へと入ってきた。
ケースの中でなにかが暴れているのだろう。
しきりにガタガタと揺れている。
そしてとうとうケースの蓋が開き、中から毛玉ちゃんより一回りほど大きい黒い犬が顔を出した。
「マリモちゃん!」
噂をすればなんとやら。
ケースに入れられ不服そうな表情のマリモちゃんがそこにはいた。
どうやら毛玉ちゃん同様に部屋へと入れる許可が貰えたようだ。
自分を無理やりケースに押し込んだ犯人であるアオイを唸り声をあげながら睨みつけている。
「それでは後ほど夕食の時間にお迎えにあがります」
「ホノカ様に迷惑かけたらユリウス様がこわいわよ〜」
アオイがマリモちゃんに向かってからかうようにそう言うと、マリモちゃんは抗議でもするようにわん!と一度大きく鳴いた。
ステラはホノカとジェイルに一礼すると、アオイを連れて部屋を出ていった。
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「え?」
レティシアの瞳は鈍い色を纏い、笑みを浮かべたままだ。
「気がついていないの?あなた、身体中に紅い斑点ができているわ」
慌てて袖を捲り上げると、昨夜まではなかった湿疹が浮かび上がっている。
(領民達と同じだ……)
この地下へ降りてからというもの、ちゃんと身なりを整える余裕もなく、鏡で自らを写すこともない。
だから、気付く事が遅れたのだ……。
覚束ない足取りで再び走り出したシンヤの腕をレティシアが掴み、華奢な女性とは思えない力で引き止めた。
「なにを慌てているの?」
「逃げなくてはいけないんだ!」
「何から……?」
「それは!」
声を荒らげレティシアの細い肩を掴むが、彼女は表情を変える事もなくじっと見つめるばかりだ。
「それは……領民達から……」
「最後の数人も息をひきとったわ」
ずっと一緒にいたはずなのに何故知っている……?
ごく当たり前にわく疑問すら、今のシンヤにはわかない。
だったら、逃げなくてもいいじゃないか。
いつもならうるさいくらいに小言を言ってくる乳母の影は無いし、両親にこき使われていたメイドや使用人も誰一人存在していないのだから。
そういえば、あの白く小さな小鳥はどこへいったのだろう?
思考が危うい中、女の声が聞こえた。
それは、デザートのように甘く耳をくすぐる甘美な音色……。
「ここから出て、病が流行ってない街へいきましょう」
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