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断罪予定の私ですが、予定は未定だったようです。  作者: 夏嶋咲衣
2.オセロ

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8.

いつもありがとうございます!更新が大変遅くなってしまい、申し訳ありませんでした!相変わらず亀ペース……。少し変更しました。次話は土曜日か日曜日に更新します!

「では、いってまいります」


 カートレット家の紋章が刻まれている、長距離馬車の前でホノカはユリウスへと微笑み挨拶をした。


 その横には毛玉ちゃんを抱いたジェイルが父を見つめ不敵に笑っていた事にホノカは気が付かず、ユリウスの眉根が寄っている事に不思議そうに首を傾げている。


「ユリウス様?」

「ああ、なんでもない。道中気をつけて……」

「はい!ありがとうございます!」


 まだ心配気なユリウスに後ろ髪を引かれる思いではあったが、天使のような息子のエスコートで馬車へと乗り込むと小窓からユリウスが立つ馬車横へと視線を移し、小窓をスライドさせた。


「本当にゲートを使わなくてよかったのか?」



 確かにユリウスの作るゲートで行けば、体力をあまり使う事もなく楽な旅路ではあるとは思う。


 貴族の令嬢であれば、きっとユリウスの提案を受け入れる者がほとんどではあるし、娘側の両親もそれを望んだだろう。


 まぁ、ベルツリー夫妻はホノカを搾取子くらいにしか思ってないから関係ないのだが。


 それに、ホノカはこの機会に自身の目で一度確認しておきたい事がある。


「はい。……領民の人々の暮らしを見てみたいんです」


 屋敷から近い領地ならチャンスはいくらでもあるけれど、遠距離となるとなかなか難しく、一度ユリウスに打診してみたがあまり良い顔はせず、困っていたのだから……。


「君は、先日も言っていたものな。叶えてやれずすまない事をした……」

「そんな……。ユリウス様は心配してくださったからでしょう?」


 困り顔でホノカを見たユリウスに、柔らかな笑みを浮かべ答えると、彼は一度大きく目を見開き驚く。


 ホノカ自身も気が付かないうちに出会った頃とは比べられない程に柔和な笑みを彼らには見せられるようになっていた……。


 それは、形ばかりの夫であるユリウスも同じなようで、今まで誰に対しても隙を見せる事がないように、四六時中気を張っていたユリウスだったが、ふとした瞬間に時折とろけそうな程に目尻を下げホノカへと視線を送る。


 ユリウスは勿論自覚してはいないけれど、周りには隠しようがなく、ダダ漏れであったのだが……。


「もちろんだ。ここでは想像できないほど、湖畔の別邸は寒く、モンスターも多く危険だ。護衛にアオイをつけるが、君自身も十分に気をつけてほしい」

「わかりましたわ」

「こちらでの仕事が一段落したら、私もそちらに向かうから」

「はい!ユリウス様もお体に気をつけてくださいね」

「ああ。ありがとう。それと」

「父様!」


 ジェイルがユリウスの言葉を遮り、


「出発が遅れますから……」


と、伝える。


「あ、ああ。最後に、こちらに帰ってきたらシフォンケーキを食べにいかないか?」

「へ?」


 ホノカは予想外のユリウスのお誘いとシフォンケーキという言葉に瞳を瞬かせて驚いたが、こくりと頷く。


「よかった。今、女性に人気だそうだ」


 安心した様にフッと口元を緩めるさまは、家族であるジェイルでさえも初めて見る表情。


「……楽しみにしております」

「ああ。気を付けて」


 ユリウスにつられるように、ごく自然にホノカは微笑んでいた。


 それに気が付くとなんだか気恥ずかしくなり、ぱっと視線を斜め下に向ける。


「では、父様、また」

「ああ。私も仕事に切りをつけたらそちらへ向かう。その間はホノカ孃を頼む」



 ユリウスがいつになく心配げにジェイルに告げた。



「はい、お任せ下さい。お待ちしております」


 ユリウスの合図で、馬車はゆっくりと動き始めると、慌ててホノカはユリウスへと視線を向けた。


 別れ際に目にした夫……ユリウスの表情は優しく、別れがたく、ホノカは小窓から小さく手を振りながら、遠ざかる夫の姿をずっと見ていたのだった。



**********




 





 

 



 



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