第13話 さっぱりわからないわ
リーサの弱さが証明されたとなれば、今後の特訓はよりハードなものにせねばなるまい。
「よし、次はこのスペシャルゴーレムを倒してみろ」
「ひぇー! どうしてこんな強そうなモンスターばかりなんですか?」
リーサは両手を挙げて逃げ回っている。
「どうした? 逃げていてはいつまでたっても強くはなれんぞ?」
「こんな強いモンスターを倒すなんて無理です~! 助けてくださ~い」
「もう少し様子を見てからにする」
「そんな悠長なことを言ってないで助けてください!」
「仕方のない奴だ。ほれ!」
スペシャルゴーレムは大きな爆発音と共に跡形もなく消え去った。
どうしてリーサはいつまで経っても強くなろうとしないのだ? やる気の問題かな?
「リーサ。お前は強くなりたくないのか?」
「強くはなりたいですが死ぬのはもっと嫌です」
「そうか。強くなりたいか」
「死ぬのは嫌という方に重点を置いて聞いてください」
「何だと?」
「ひぇー! ごめんなさい」
ん? 『ひぇー! ごめんなさい』? 何か最近よそよそしくなってないか? 少し高圧的な話し方をしすぎたのだろうか? 仕方ない少し口調を変えて優しさをアピールしてみるとするか。
「私に任せてね。もっともっと強いモンスターと戦わせあげるわ。そうすればすぐに強くなれるはずよ」
「ご、ごめんなさーい!! 無礼な口を利いたことは謝りますから、どうかお許しください!」
「せっかく優しい口調にしたのにどうして謝るの?」
「優しい口調の方がかえって怖いです!」
リーサが土下座をしている。これはどういうことだ?
「取り敢えず強いモンスターを倒せば経験値が大きく上がるわ。あそこにいるグレートブルードラゴンスペシャルを倒せば、おそらくあなたのレベルだと今の経験値は2倍になるはずよ」
「絶対に死にます!」
「あら死んでも大丈夫よ。私が蘇生の魔法をかけて生き返らせてあげるから」
「え! 本当ですか?」
「ええ本当よ。私の魔法はとても強力なの。4分の3の確率で生き返ることができるわ」
「4分の1は死んじゃうんですね?」
「何か言ったか? 声が小さくて聞こえないぞ」
「何でもありません・・・・。ていうか口調が元に戻ってます・・・・」
グレートブルードラゴンスペシャルは激しい炎をはいた。
「キャー! どうしてブルーなのに炎系なんですか!」
リーサは転げ回って見事に攻撃を避けているではないか。ある意味凄い反射神経だ。こんな能力があるのならもっと強くなれるだろうに。それともこれが火事場の馬鹿力という奴なのか?
「リーサ気を付けて。跡形もなく消え去ったら蘇生魔法は使えないわよ」
「ひええ!! さりげなく怖いことを言ってないで助けてください!!!」
リーサは必死で転げ回っている。
「うまいうまい。その調子よ」
「本当に死んじゃいます! 助けてください!」
そして十分後。
「よく頑張ったじゃない」
「もっと早く助けてください。本当に死ぬところでした」
「何事も経験よ」
「その話し方も止めてください。なぜかダメージが大きいですから」
「どういうことだ?」
「急に元に戻るのも止めてください。怖すぎます。と言いますか本当に死んだらどう責任を取るんですか? そこまできちんと考えてるんですか?」
ドドドドド! 高レベルのモンスター達が押し寄せてくる。
「ミーニャ様になんて口を利いているんだ!」
「ひえええ! どうして遠くにいるのにわかるんですか?!」
「高レベルのモンスターを嘗めるなよ!」
「ご、ごめんなさーい!」
こうしてリーサはあまり話さなくなってしまった。
そして数日後。
この頃リーサが無口なのはどうしてだ? さっぱりわからん。悩みがあるのかも知れんな。ここは優しく心のケアをしてあげるとしよう。
「おい、リーサ。この頃元気がないようだが、何か悩みでもあるのか?」
「・・・・いえ」
「悩みはないんだな?」
「・・・・いえ」
「どっちなんだ?」
「・・・・いえ」
「嘗めとるんか!」
「ひぇー! ごめんなさい」
全く。急に『・・・・いえ』と『ひぇー! ごめんなさい』しか言わなくなってしまった。どうしたものか? そうだ、いい方法があるぞ。面白い娯楽で心を和ませればいいんだ。
「リーサ。私としりとりをしないか?」
「・・・・いえ」
「そうかやりたいか」
「・・・・いえ」
「では私からいくぞ。りんご」
「・・・・いえ」
「エリマキトカゲ」
「・・・・いえ」
「エンドウ豆」
「・・・・いえ」
「え、え、縁側」
「・・・・いえ」
「え、え、え、え・・・・嘗めとるんか!」
「ひぇー! ごめんなさい」
ダメだこりゃ。
よし、それなら。
「次はクイズをしよう」
「・・・・いえ」
「このクイズは少し変わっているぞ。私の出したクイズに正解したら負けだ。もし正解を答えてしまったら怖いモンスターが押し寄せてくるから気を付けろ。いいか?」
「・・・・いえ」
「では第1問だ。英語でハウスとはどういう意味だ?」
「・・・・いえ」
「家?」
「あ!」
「正解だ」
ドドドドド!
「ミーニャ様どういたしましたか? おい、ミーニャ様に何をした!?」
「こんなの卑怯です!」
「やっと他の言葉を話したな。いいか? これからも普通の会話をしなければこうなるからな」
「ひぇー!」
こうしてリーサは渋々普通の会話をするようになった。




