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寄り道  作者: 春野 セイ
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縁談




「のどが渇いたな」


 書きものをしていた柴山しばやま小三郎こさぶろうは、筆を置いて一息ついた。水を貰おうと立ち上がり台所へ向かう。ついでに菓子でもあれば、と思案しながら廊下を歩いて行くと、話し声が聞こえた。盗み聞きするつもりはなかったが、そっと近づいた。


「まだ早すぎますわ」


 声をひそめて言うのは女中のうねである。


「なにが早い、若旦那さまはもう二十二歳だぞ」


 もう一人は老僕の善兵衛ぜんべえであった。


「まだ二十二歳です。縁談なんて早すぎます」

「早いもなにも話が来ているのだから仕方あるまい」

「どなたですの?」

「……それを知ってどうする」

「知りたいんです」

「わしはな、若旦那さまにはもっと肥えてもらいたいのだ。だから、夕餉のおかずを一品増やせと申しておる」

「一品だなんてとんでもない」


 うねはぴしゃりと言い捨てた。二人とも囁き声ではなくなっている。


御新造ごしんぞさまにかたく申しつけられております。夕餉は今までどおり、一汁三菜です。それに困っているのは善兵衛さんだけで、若旦那さまは困っておりませんわ」

「若旦那さまは二十二歳になるというのに、あんなに細く痩せてらっしゃる」

「若旦那さまは御健康です。痩せすぎてもいらっしゃらないし、あれくらいがちょうどいいんです」

「なんの話をしているのだ?」


 自分の話を大声でされているときまりが悪い、早々と出たほうがよさそうだ。小三郎は二人の間に入っていった。うねはマズイという顔をしてそそくさと去っていった。善兵衛は聞かれてよかったというように開き直った。


「縁談でございます、若旦那さま」

「俺に? へえ、そう」

「へえ、じゃございません、お相手は」

「言わなくていいよ、興味がないから」

「若旦那さまっ」

「それよりのどが渇いた。水が飲みたい」


 台所へ向かうと、うねが水を用意して待っていた。


「さすがは若旦那さまでございます」

「聞いていたな」

「お水でございます」

「ありがとう」


 茶菓子はないかと思ったが、うねがなにか話したそうだったので、退散することにした。善兵衛の前を通り過ぎ居間に戻る。


「縁談? ふん」


 息を吐いてから自分にはまだ早すぎると思った。


 柴山小三郎は伊予いよのくに正岡まさおか藩六万石の平侍である。正岡藩の藩主、兵部少輔は参勤交代を行わない定府じょうふの大名であった。

 定府とは、江戸に在住して藩主に仕えることをいう。小三郎の父も定府を命じられ、小三郎は江戸で生まれ育った。

 小三郎の家は百石の馬廻組で、江戸上藩邸の長屋に家族揃って暮らしていた。あと中間ちゅうげんや女中などが同じ長屋で寝起きしている。小三郎は部屋住みだが、長男なのでよほどのことがない限り父の跡目を継ぐ。

 彼は目鼻立ちのはっきりした顔つきで、遠目からも目立つ容貌をしていた。今年で二十二歳になり、小さめの顔に整った眉、桜色の唇と凜とした瞳をしていた。笑うと白い肌にはうっすらと赤みがさし、やさしい気持ちにさせる。背はやや小柄であるが、手足が長く均整のとれた美しい体つきをしていた。外見のせいか女には人気があったが、本人がおっとりしているので、秋波を送られても気が付かない。その上、あの女、眠そうだが大丈夫かな、などととぼけたことを言うので、朋輩からは絶対に女にはついて行くなと注意されていた。

 その小三郎に縁談の話が来たなどと聞いたら、彼らはなんと言うだろう。小三郎は一番の友だちである英之助えいのすけの顔を思い浮かべた。


 柾木まさき英之助えいのすけは大身旗本の息子である。彼の父は留守居役と江戸家老を兼ねていた。

 英之助も家督は継いでいないが、小姓組で藩主の近辺の世話していた。

 小三郎と英之助の出会いは、昌平坂学問所であった。英之助は二つ年上で、小三郎が学問所へ入ったばかりの頃、いじめられていたのを助けてくれたのがきっかけで知り合った。以来、英之助を兄のように慕い、家柄の違いなど気にしたこともない。今でも何かあればすぐに英之助を頼ってしまう。


 小三郎はさっそく縁談の話をしに行こうと思った。夕餉にはまだ時間もあるし、書きものもひと段落ついたところであった。


「善兵衛、出かけるぞ」


 庭にいた善兵衛に声をかけると、まだつむじを曲げているのか、うんともすんとも言わない。しかし、庭から玄関にまわり、履物を差し出した。小三郎は呆れた顔で眺めていたが、まあ、よい、と肩をすくめて玄関を出た。

 英之助が暮らす旗本屋敷は土地の広さ千坪ほどある。潜り戸の戸を叩くと、門番が顔を出した。


「すまぬ、小三郎が来たと伝えてもらえるか」


 顔見知りの門番はすぐに小三郎を中へ招き入れ、客間へと通してくれる。女中がすかさず茶を出している間に廊下から衣擦れの音がして英之助が現れた。


「よお」


 顔を見るなり、英之助は目を細めて笑いかけた。


「うん」


 小三郎は返事をしながら、改めて感心した。評判の男だけあって、笑った顔がとろけそうなほど男前である。すらりと伸びた背筋はみやびであった。たくましい腕と長い足、凛々しい眉毛に二重の切れ長の目が鋭く相手を見つめる。しかし、その目はきつすぎず瞳は穏やかで、相手の話をじっくりと聞いてくれるようなやさしさも見えた。笑うと幼い表情がこぼれ、ついつい気を許してしまいそうな雰囲気をかもし出す。


「夕餉を食べてゆくか?」

「いや、何も言わずに出て来たから夕餉には戻るよ」

「そうか」


 英之助が座るや否や茶菓子が出てくる。甘いものが食べたかったので遠慮せずに頂いた。鹿餅を食べながら、縁談の話に入った。


「縁談? 相手は誰だ」


 英之助は眉をしかめると、真剣に聞いてきた。


「知らないな」

「聞かなかったのか」

「うん、聞かなかった。興味がなかったからな」

「そうか、もうそんな話が出ているのか」

「俺は結婚なんてしないよ」


 英之助にそう言ったが、彼は怖い顔でなにか思案している。


「英之助、聞いているのか?」

「え、ああ」

「お前はどうなのだ、結婚したい相手がいるのか?」


 なにげなく聞いてみると、英之助はぎくりとした顔をして目を逸らした。その反応を見て胸がざわりとした。


「誰か……いるのか」


 自分の声が震えていた。

 どうしたのだろう、心がざわつく。

 いつもそばにいた友だちに、想い人がいたなんて気づきもしなかった。


「小三郎」


 はっとするほど低い声で、英之助が顔を上げた。


「あ、うん」

「ちょっと外に出ないか。散歩でもしよう」

「ああ……」


 玄関へ向かう途中、英之助は静かだった。先に履物を履いた英之助は上がりかまちに腰を掛けて、玄関の外を眺めていた。


「英之助、行こう」


 声をかけると英之助がこちらを向いた。差し込むような鋭い視線で、小三郎は息を呑んで見つめ返した。


「行くか」


 英之助が立ち上がる。あとに従い外へ出ると、ひんやりとした風が吹きぬけ、傾いた日が山の向こうにゆっくりと沈んでいくのが見えた。英之助はなにか考えているようであったが、無言のまま歩き始めた。

 江戸屋敷の長屋が続く塀を南へ進んでいくと畑が見えてくる。その先に吸江寺ぎゅうこうじという寺が見えてきた。境内に人のけはいはない。


「あそこへ行こう」


 英之助が鐘楼しょうろうの向こうを指した。そこは本堂の裏手であった。空は薄墨色になっている。吸江寺ぎゅうこうじの裏は畑ばかりで深閑としていた。英之助は立ち止まると、ゆっくりと振り向いた。


「小三郎、俺は結婚をしないつもりだ。これまでにも縁談は断っている」

「そうなのか」


 拍子抜けした。縁談は断っているというからには、いくつか話があったのだ。結婚しないつもりだという決心も初めて知った。


「どうして結婚しないんだ? お前ならきっと……」


 結婚相手の話をしようとして言葉が見つからなかった。あたり前のことなのに、なぜか今日まで想像したこともなかった。


「小三郎、驚かないで聞いて欲しい」

「うん」

「お前じゃなければ打ち明けたりしない」


 英之助が大切なことを言おうとしている。小三郎は固く頷いた。


「約束する。驚いたりしない」


 そう言うと、英之助が頬を緩ませて薄く笑った。


「そんなに肩を張る必要はない」

「うん、分かった」


 小三郎は少しだけ笑顔を見せた。英之助が静かに話しだす。


「俺は子どもの頃から人と違っていた。昔から、女が好きになれない」

「女嫌いか、そうか、俺も男といる方が楽だ」

「そうじゃないんだ」


 英之助は笑った。その笑顔は苦しそうだった。


「色恋のことだ」

「色恋?」

「そうだ。俺は女を愛することができない」


 小三郎は、一瞬、息をするのを忘れた。


「つまり、俺が愛することができるのは男だけなんだ」

「相手は……」

「え?」


 英之助が怪訝な顔をして小三郎を見た。小三郎はごくりとのどを鳴らした。


「相手がいるのか?」

「……いる」

「誰だ?」


 自分の声が震えていた。


「小三郎…」

「お前が愛している男とは誰だ? 俺の知っている男なのか」


 一瞬、目の前が真っ白になった。

 英之助に愛されている男に嫉妬した。女であれば仕方がないとあきらめたかもしれない。だが、同性であると言ったとたん、英之助が愛しているという男を憎いと思った。胸をかきむしりたくなるような、そんな苦しい気持ちが込み上げてくる。


「小三郎」

「俺の知っている男か」

「……知ってどうするのだ、その男を斬るのか」


 小三郎は目を見開いて、英之助を見つめた。そして、知らずうちに頷いていた。


「場合によっては斬るかもしれない」

「なんのために?」


 答えるのが難しい。小三郎はきゅっと目を閉じて首を振った。


「分からない、お前が俺の知らない男を愛しているのかと思うと、胸のあたりがざわざわして、どう答えたらいいのか分からない」

「小三郎……」


 目を開けると、英之助が両肩を強くつかんでいた。


「お前の言葉を信じていいんだな」

「英之助、俺はお前の邪魔をしたいとかそんな気持ちはないんだ。俺は……」

「俺が愛している男というのは、お前だ、小三郎」


 最初、なにを言われたのかぴんとこなかった。またたきをすると、英之助がほほ笑んだ。


「俺が愛しているのは、お前だ」

「俺…を?」

「ああ」


 ぐいと引き寄せられる。


「俺は幼い頃からずっとお前だけを見てきた。お前だけを愛すると、一生独身で生き抜くと誓って、お前を愛してきた」


 熱い息が耳にかかる。全身の震えが止まらなかった。


「小三郎、震えている」

「うれしくて……」


 熱いものが込み上げてくる。小三郎の目から涙がこぼれた。英之助はその涙を指先で拭った。


「俺を選んでくれるか、小三郎」

「俺で……、俺なんかでよければ、英之助についてゆくと誓うよ」

「……小三郎」


 英之助が顔を寄せてくる。小三郎は急に恥ずかしくなって顔を伏せた。


「顔をよく見せてくれ」

「見ないでくれ、俺は今みっともない顔をしている」

「愛している、小三郎」


 あっと思った時、唇が塞がれていた。英之助の唇は温かくやわらかかった。しっとり濡れた唇が食むようにやさしく動く。唇の感触に酔いしれて、英之助の背中に腕をまわした。小三郎は時間が過ぎてゆくのを忘れた。




 その日、どうやって自分の長屋へ戻ったのかおぼろげにしか覚えていない。思い出すのは、英之助の舌の感触ばかりである。思い出すたびに体が燃えるように熱くなった。

 口づけをしたのは生れて初めてであった。あんなに柔らかくとろけるような甘いものだったのか。

 ぼんやりとしていると、若旦那さま、という善兵衛の声に我に返った。


「な、なんだ、どうした」


 ぶっきらぼうに答えると、一瞬間があって、善兵衛が襖を開けて中に入って来た。


「どこかお体の具合が悪いのですか?」

「は?」


 どきりとしながらもとぼけて見せる。善兵衛は怪訝そうにじろじろと人の顔を眺めた。


「顔が赤いですぞ」

「えっ」


 思わず頬を押さえた。


「夕餉もお代わりをなさらなかったそうで、うねが心配しておりました」

「なんともない、平気だ」

「そうでございますか?」

「いいからひとりにしてくれ」


 ぷいと横を向いて、善兵衛を追い出す。善兵衛は言い足りない顔をしていたが、しぶしぶと出て行った。そんなに自分は分かりやすい顔をしているのだろうか。顔を撫でているうちに、また、英之助の腕の感触を思い出した。

 息が止まりそうなほど強く抱きしめられた。腕に包まれたとき心が落ち着いた。英之助の腕は自分の力とは違って太く強かった。たちまち英之助との口づけを思い出す。


「ああ……」


 頭をかきむしって机にうつぶせになる。


「いかんいかん」


 そう呟いては、繰り返し何度も英之助のことを思い出した。

 当然、その夜は容易には眠れなかった。



 ×××××



 心を打ち明けてから、英之助は積極的になった。


「寄り道でもするか」


 道場からの帰り道、英之助が言った。


「寄り道か。いいな、どこへゆく?」


 小三郎が無邪気に答えると、英之助は苦笑して囁いた。


「よしの屋でいいか?」


 料理茶屋の名前を出され、誘われていることに気づいた。小三郎の頬が赤らむと、英之助は笑いながら肩を抱き寄せた。はたから見ると仲の良い二人に見えるだろう。英之助は人気がないとさりげなく手を握ったり肩を抱き寄せたりした。英之助の熱い体に緊張を覚える。


「行こう」


 促され歩きはじめる。前を歩く英之助が堂々としているので、恥ずかしくないのだろうかと疑問に思った。


「英之助」

「なんだ?」

「恥ずかしくないのか?」

「恥ずかしいだと?」


 英之助が立ち止まって振り向いた。


「なにが恥ずかしいのだ」

「いや、その……」

「おかしな奴だな」


 笑われて小三郎の胸は激しく波打っていた。隣を歩くのでさえ緊張しているのだ。息をするのも大変なのに、英之助は今までとちっとも変らない。


「店には伝えてある。芸妓げいぎは断ったから、二人きりだ」

「そ、そうなのか」


 用意の周到さに舌を巻く。


「俺が断るとか考えていなかったのか?」

「お前は断ったりしないだろう」


 確かにそうなので言い返せなかった。


「早く二人きりになりたいよ、小三郎」


 小三郎はまっ赤になって立ち止まった。


「お、お前、道のまん中でなんてことを言うのだ」


 小三郎が目を吊り上げると、英之助は楽しそうに笑った。


 よしの屋は料理茶屋である。前も思ったのだが、愛想のいい女中に案内されているさまを見ると、ここへはよく来るのだろうかと勘繰ってしまい、小三郎は顔をしかめた。英之助を意識しだしてから見る目が変わってしまった。自分より仲のいい男はいるのだろうかとか、女は嫌いだと言っているが、ほんとうに経験はないのだろうかなどと、みっともないことばかり考えてしまう。

 座敷に案内され、酒肴しゅこうが揃うと二人きりになった。


「静かだな」


 縁側に出て外を眺めていると、隣に立った英之助が指を絡めてきた。


「小三郎」


 頬に息がかかる。小三郎は体が熱くなった。


「え、英之助……」

「いやか、こうされると気持ち悪いか」

「そんなわけない」


 首を振って否定する。


「早く二人きりになりたくて、仕事が手に付かなかった」


 英之助の口からそんな言葉が出るなんて驚きであった。


「お、俺も、お前のことばかり考えていたよ」

「信じていいんだな」

「うん、信じてほし…」


 言い終わらないうちに英之助が顔を寄せてくる。唇に触れてから、下唇を甘く噛まれる。


「あ……」


 唇を吸われたまま右手が衿の中に入ってきて脇下を潜り背中をやさしく撫であげた。


「きれいな肌だ」

「云うな…っ」


 強気に目線を上げると、英之助のひたむきな瞳が飛び込んできてくらりとする。再び唇を塞がれ、激しく吸われた。英之助の手が背中から腰へと下りていき、横腹を撫でられ小三郎は小さく声をあげた。


「ここが感じるのか」

「……触らないでくれ」

「いやか?」

「いやというより、おかしな気持ちになる。くすぐったいような、そんな感じがして」

「覚えておくよ」


 英之助は苦笑するとあっさりと手を抜いた。自由になった小三郎はよろめいて縁側に手を突いた。睨めると、英之助の手が伸びてきて腕を引っ張られた。


「ここはまずい、中へ入ろう」

「そ、そうだな」


 庭先に誰か入って来たらと思うとぞっとする。入った時には気が付かなかったが、座敷には衝立があり布団が敷かれてあった。英之助はちらりとそちらを見たが、畳に座り、


「少し飲むか」


 と、聞いた。酒はあまり強い方ではなかったが、浅ましい男だと思われたくなかった。


「あ、ああ、飲もう」


 大きく頷いて正面に座る。英之助が銚子を取って盃に注いでくれる。小三郎は一気に酒を呷った。


「腹は空いてないか?」

「うん、空いてない」


 腹の中が燃えるように熱い。英之助の顔がぼんやりと見える。目をぱちぱちと瞬かせると、英之助が眉をしかめた。


「まさか…。お前、酔ったのか?」

「酔ってなど……」


 そうは言ったものの座っているのがせいいっぱいである。英之助がそばへ寄って来て言った。


「寄りかかれ」

「すまん」


 肩にもたれかかり頬を押し付け目を閉じると唇に温かい息がかかった。気が付くと口づけされていた。息をするのも忘れ苦しくてたまらなかったが、夢中で腕を伸ばした。英之助は承諾を得たと思ったのだろう、かすれた声で囁いた。


「このまま、構わないか?」

「え?」

「夜具が敷いてあるが…」


 乱れた息の中、困ったような声で英之助が言う。


「…構わない」


 背中を抱きかかえられ、ゆっくりと仰向けに寝かされる。


「小三郎、愛している」


 覆いかぶさってくる英之助が囁いた。


「お、俺も…」


 深く唇を塞がれ、舌をきゅっと吸われた。顔がほてってきてうまく英之助の顔が見えない。帯がほどかれると胸のあたりが涼しくなる。いつのまにか上半身を裸にされていた。羞恥に頬を染める。気持ちがよくて頭がとろけそうであった。同時に目がとろりと閉じかける。


「小三郎…?」


 英之助の呼びかけに答えたが、確かではなかった。


「おい、小三郎っ」


 遠くで呼ばれている気がする。小三郎の意識はしだいに薄まっていった。




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