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#01-09 He is ill-natured.


以前として狭い道を走る。この一本道のどこをどう逃げたのか皆目見当つかないが笹川の姿は見当たらない。


「埃っぽいし、早く出たい」

「文句言うな。ほら、あそこの倉庫とか怪しいぞ」


少しだけ扉の空いている倉庫からは何やら話し声が聞こえる。

倉庫という割には物流の経路が全く考えられていないし、そもそもこんな寂れた場所に人の声というのも怪しい。


「……絶対罠だね」

「そうだな。更紗、適当に撃ってみてくれ」

「了解。プログラム“Mint”“Cyan”“Lemon”“Silver/-2”並列起動」

《Mint: Starting……Success》

《Cyan : Starting……Success》

《Lemon : Starting……Success》

《Silver/-2: Starting……Success》

「“テンペスト”発動」

《Magic : Starting》


更紗の前に風の塊が形成され始める。

周囲の粉塵を巻き上げ、小石を巻き上げ、礫を持ち上げつつも勢いを増している。

次第に摩擦によってか火花が上がりはじめ、雷を纏い始める。


「行け」


更紗が手を振るうと、倉庫の扉を吹き飛ばし、外壁を少し抉りながら風が突き抜ける。

10秒ほどして収まった直後、詠が倉庫の中を覗く。

散らばった段ボールの残骸や焼け焦げたビニールが地面を覆う。

その中に黒い衣装を着た人間が3名。


「生きてるかー」


詠が、男たちを瓦礫から引っ張り出しながら服を漁る。


「何か見つかった?」

「ん?ああ、コレ」


黒い色をした魔導端末を3機見せる。

その他にも武器になりそうなものを一通り押収していく詠。


「その端末、“黒杖(シュワルツ・ロア)”」

「取り上げる物取り上げたし、とりあえず、捕縛するか」


詠が縛り上げようと近づいた瞬間、3人の男たちが急に起き上がった。


「よくもやってくれたな!」

「我々は崇高なる“黒杖”の一員であるぞ」

「あるぞ!」


それを見て、詠が無表情で告げる。


「……更紗、もう一発」

「わかった」

「まままま待て!暴力で訴えるなど野蛮人のすることだ」

「暴力じゃなくて魔力」

「いや、そういう話ではなく……そこの男!騎士ならば正々堂々、端末なしで我々と勝負だ!」

「勝負だ!」

「騎士じゃねーから使っていい?」

「ダメだ!」


三人は服を叩くと、詠を指さして言った。


「さあ、正々堂々戦え!」

「端末使わなきゃいいんだな?」


そういうと、詠は胸ポケットから黒く光る……銃を取り出した。


「さあ、いくぜー」

「なんでそんなもん持ってんだ!」

「飛び道具はなしに決まってるだろ!」

「めんどくせーよお前ら。更紗」

「わかった。“テンペスト”発動」

《Magic : Starting》


「ぎあああああああああ」

「うおわあああああああ」

「あああああああああ」


勢いよく飛んだ男3人がコンクリートの壁を突き破って外に吹き飛ばされる。


「……死んでねーよな?」

「たぶん」


安否を確認しに急ぐ。打撲等は多くみられるが、命に別状はない。

しっかりと拘束し、姉に電話をかける。


「姉さん?“黒杖”3匹捕まえた」

『はぁ!?どこ!?』

「オレの携帯のGPSのコード調べて?」

『……すぐ行くから!』


宣言通り3分もしないうちにパトカーの列を連れてやってきた縁と運転手・水野に3人を引き渡す。

水野さんが男たちをされぞれパトカーに乗せていく。

ちなみに男三人は3分間の間に全員目を醒まさせ、外傷を治し、心を折ってある。向こうについたら素直に全部吐くだろう。


「さて、本命を逃がしたわけだが、続きは明日だな。家宅捜索入れると思うし」

「じゃあ、帰る?」

「今日は昼からの授業ねーしな。少し遅いが昼飯にして帰るか」

「今日の夕飯は作ってあげる」

「そうか、わるいな……ってなんでうちに泊まる気なんだ」

「だって、宿代勿体無い」

「経費で落ちるだろうが!というかなんで1日分しかとってないんだよ!」

「長期間とってすぐ終わったら嫌でしょ?それにいざとなったら詠か千代さんに頼る予定だったし」

「……せめて女友達頼れよ」


ため息をつきながら、車を回収するためコンビニへと向かう。

その道すがら何となく手をポケットに入れると、何かが指に触る。


「……あ、アイツらの端末姉さんに渡すの忘れてた」

「まず警察署ね。ついでに偲の様子見に行ってもいい?」

「ああ」


停めて行ったコンビニの店員に文句を言われたが、更紗の登録証で黙らせ、車を出す。


「ねえ、詠。この端末に入ってる“Redness”っていうプログラムは……」

「たぶん赤の魔導書のコピープログラムの“Red”を違法改造した感じかな」

「……違法って結局なにが違法なの?」

「単純に威力とか、あと強すぎる奴は精神汚染が……とか聞いたことある」

「……詠のプログラム大丈夫?」

「一応、法は守ってる」

「一応聞くけど、どこの法?」

「さあて、どこだろなー」


目線を逸らした詠に更紗が食いつく。

そんなじゃれ合いをしながらも何とか警察署にたどり着く。

今回は受付を無視して真っ直ぐ姉の元へ向かった


「姉さーん」

「!?……勝手に入っちゃダメでしょ!?」

「いや、これ。アイツらの端末と笹川の端末。たぶん笹川の方は機体登録してると思うから」


ビニール袋に入れた端末を手渡す。


「……忘れてたのね」

「おう。あとは、アイツらが持ってた注射器。じゃあこれだけだから」

「え!?何これ!?」

「違法ドラッグじゃねーの……簡単に言うと頭の回転が速くなって、テンションが振り切って、楽しくなる感じの。あ、水野さんにはこれね」


姉に手を振って、水野さんにさっきのコンビニで購入したエナジー系のドリンクを手渡し、次の目的地である病院に向かう。

更紗は先に病室に向かっているはずだ。

2、3日は目を醒まさないという話で、暗い顔をした更紗を見ることになるかと思っていたが、その予想に反して、病室に入ると更紗と偲が普通に会話していた。


「なんだ、起きてるのか。よかったな更紗。泣いたかいがあった」

「え、先輩泣いてくれたんですか、あたしのために」


感激する偲と、こちらを睨む更紗。


「……それで、榛葉さんは何者なんですか」

「詠。言っていいの?」

「いいよ。四辻が責任とれるんならな」

「……何の責任?」


首をかしげる偲に詠が笑いながら告げる。


「それじゃあ、自己紹介しよう。そういえば一回も名乗ってなかったな。初めまして、ワタクシの名前は榛葉詠。IMA所属の1級魔導師です」

「…………………嘘?」


きょとんとした表情でこちらを見る。


「え!?でも、更紗先輩たちの世代で高校卒業と同時に1級魔導師の資格取ったのって6人だけじゃなかったですか?」

「詠は18歳になる前にアメリカで1級魔導師の資格取ってたからカウント外」

「ええええ!?」

「そういうことだから、よろしく」

「えっと………とりあえず助けてくれてありがとう……ございます」

「なんかオレに敬語使うの不服みたいだな」

「でも、偲が無事でよかった」


泣きそうな様子の更紗を偲が慰める。


「しっかり療養してろ、もう犯人捕まえるだけだ」

「そこまで進んだんですか!?」

「3/4はもう捕まえた」

「……もしかしてあたし足手まといでしたか?」

「そんなことない、私と詠が相性いいだけ」

「……それ、否定になってないぞ」


興味津々といった表情で偲が追求する。


「なんで仲良いんですか?」

「なんでだろうな」

「ずっと組んでたし、2人でイギリス行った時も」

「え!?」

「その時に貰った二つ名だから私と詠のは同じ……ごめん忘れて」

「……無理だろ」


本日何度目かのため息をつく詠。


「……榛葉さん、いや、詠先輩の二つ名って………」

「ごめん」

「……もう隠すの諦めようかな」

『そーね。限界じゃないかしら』

「でも、お前らの事はまだバレてないんだぜ?」

「何か言いましたか?」

「気のせいだ。まあいい。オレが魔導師だってことと合わせて口外するなよ。オレの二つ名は“黒銀(くろがね)”。更紗の二つ名とは銀で対になってる。イギリスのお偉いさんが苦笑いしながらつけてくれた」

「最初は“銀騎士”とかつけられそうになってたんだけど」

「さすがにそれはないと思って、選定委員会ボコったら黒がついた」


まあ、いいんだけど。というと、手に持っていたビニール袋を偲に渡す。


「とりあえず適当に買って来たから食いたいのあったら食え。いらんなら持って帰る」

「え?ありがとうございます……」


袋の中身はコンビニで売られていたプリンやゼリーの類。


「じゃあ、偲。また来るね」

「あ、ありがとうございます……ってそういえば更紗先輩どこに泊まってるんですか?」

「詠の家」

「ちょっ……えええええ!?」


更紗が最後に爆弾を落として、扉を閉めた。

なぜか病室に入る前の5倍は疲れた詠は上機嫌の更紗を連れて車に向かう。


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