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能力世界に蛇が転生する  作者: 伊勢神宮と水門寺


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『世界』

俺は思考を巡らせていた。

目の前の麗華は髪を赤く光らせ、優雅に空中に浮かんでいる。しかし、いくら考えてもその能力の一貫性がわからない。テレポートして、空中に浮かんでる、何それ、妖怪の一種かよ。


しゃらくせえ。


俺は苛立ちを断ち切るように前方へ手を突き出し、まだ誰にも見せたことのない能力を発動させた。

俺の手から鋭い鱗が射出される。その軌道は麗華の反応速度を凌駕し、彼女の肩を完璧に貫通した……ように見えた。


貫通する威力にしたつもりはなかったが、もしかしてすり抜けたとかか?


間もなく、麗華は凄まじい速度でこちらへ接近してきた。


反射的に腕を振るって迎撃しようとするが、その腕は麗華をすり抜けた。

そして体勢を整えようと腕を元の位置に戻そうとする。なぜか腕がピタリと空中で静止したまま動かない。痛みは一瞬だけあったが、すぐに消えた。

ただ腕が動こうとしないのだ。


「っなんだ、これ……!」


「さて、なんでしょーねー!」


麗華は余裕の笑みを浮かべたまま、空中でクルクルと宙返りしてみせる。


テレポート、浮遊、そして透過。さらに、この身動きを縛る能力か。


俺がどうにか打開策を考えようと頭を働かせていると、目の前で麗華の髪色が鮮やかな赤から、ふんわりとした柔らかい茶色へと変化した。何か能力が変化したのか?と思い鱗を飛ばす。瞬間、目線から麗華の姿が消える。

(まさか......!?)


俺は後ろを振り向こうとする、しかし体が動かなかった。


さっきと違い、少しの痛みもなかった。


(何か違いがあるのか?)


「進君は毒と飛び道具だけなのー?ていうか飛び道具って蛇の模倣系(コピータイプ)でできるものなの?」


「お前の能力も意味不明なんだわ!」


身動きが取れない窮地の中、俺は悪態をつきながら言い返す。


「じゃあ、もう一つ見せてあげるよ」


テレポートで俺の目の前に現れる。

空に何かが急速に生成されていく......

これは、当たったら痛そうだ。

瞬間、俺はあることに気づいた。

(……待て、喋れるし、瞬きもできる。顔の向きは変えられないが……)

硬直しているのは四肢の一部や特定の機能だけ……なんだこの適当な固定は、浮遊、透過、テレポート、体の動きをある程度止める……


あ、能力がわかった。俺はその名前を口にする。


「ゴースッ...」


ゴーストの能力だ!と、名探偵のように言い放とうとした時、

俺は完全に生成された何かの塊に吹き飛ばされた。

塊の尋常ではない痛みと...冷たさが全身を貫く。

不思議に思い、俺がぐっと強く瞼を閉じると、視界の隅にぼんやりと熱の輪郭が浮かび上がってきた。

……これがもう一つの能力、サーモグラフィーだ。

視界に映るその塊は、まぎれもなく巨大な氷塊だった。


どうやら最初の固定は絶対零度のような温度で腕の神経が一瞬で凍りつき、一時的に感覚を失っていただけらしい。


右手をそっと左手で触ってみると、確かに凍てつくような冷たさが伝わってきた。

俺の立てた仮説は間違っていない。


(あれ?体が動く?)


俺は体が動くようになっていた、『痛み』が金縛りを解く条件か?俺はそう思って麗華に向き直る。

麗華は顔を歪ませて空中に浮かんでいた。そして声を震わせながら話しかけてくる。

「その傷でなんで平然としているの?」




私は大技を放った。それで勝負が決まると思ってた。もちろん手加減はした

だって本気で氷の槍を当てたら人間の体に簡単に穴が空いてしまう。


だけどこの氷塊でも確実に肉はえぐれ骨は折れる。

聞こえは悪いけど病院だったら一日で治してしまう程度の怪我だ、とはいっても普通は痛みで降参する。私だってそんなことされたら耐えきれず降参するだろう。

だけど目の前の男の子...進君はまるで痛がっていないような顔で顎に手を置いて何かを考えている。

私は進君に対して少しの恐怖を感じた。


「あーなんだ俺怪我してるのか?……そうか凍ってるせいだな?」


そう言って進君は自分で怪我をしている肩あたりに腕を掛け……


肩から体を引き裂いた。


「「え!?」」


あまりの狂気的な光景に、観客席から悲鳴のようなどよめきが起こった。


審判も事態の深刻さに青ざめ、医療班を呼ぶために慌ててインカムに手をかけながら飛び降りようとする。

私自身、言葉を完全に失い、ただ目の前の光景を呆然と見つめていた。


肩から先が、ボトリと落ちる。進君は一呼吸しないうちに元の肉体へと再生した。

まるで元から怪我なんかしていなかったように。


(え……? 蛇の模倣系(コピータイプ)って、ここまで人外の再生ができるものなの……? それに、ずっと体表から鱗を出しているのに、なんで体力が尽きる気配すらないの……っ!?)


…私は早く気絶させないと、そう思って空中に無数の氷の槍を作り出した。弾幕のように飛んでいき、それに合わせて私は進君に突っ込む。私の髪が赤く輝き出した。


進君は毒を使える!


手からだけだったら対処しやすいけど、多分どこからでも毒を出せるのだろう。だから、氷を自分の腕に纏い攻撃する。腕以外は透過しているため、進君の攻撃は当たらない、その後隙を狙い、一発いれる。

腹部を殴り、そのままその部位を凍らせる。


進君はすぐに避けを意識するようになった。


私は攻撃を続けた。

私は左腕を氷を纏った手で掴む。そして凍る。これで二発目!


「ズルすぎるな、その連打」

進君は軽口を叩く余裕があるようだ。私も気持ちで負けるわけにはいかない。


「そうッかな!?」


私は氷を纏い、浮遊しながら蹴りを放った。

進君は再生がすごいだけで耐久力は普通の人間と同じだ、蹴りを当てて治るまでに凍らせきれれば勝てる、その蹴りは空中に曲線を描くように動き、進君に当たった。


その蹴りは浮遊による速度の増加も相まって途轍もない攻撃力を持っていた。普通ならば骨が砕けて、まともに戦えなくなる。


だけど、進君は凍っている腕をもう片方の腕で掴んで無理矢理動かして盾のようにしていた。進君は闘技場の壁にぶつかる。

進君は盾代わりに使った完全に壊れた片腕をそのままちぎり捨て、新しい腕を再生させた。

その時私の髪が元の色に戻った。疲労感がドッとくる。


(透過は体力の消費が激しいなぁ)


私は距離をとった。進君は、私がまた能力回復まで休憩すると思ってるはず......だから油断して生まれた隙がある!

そう思いテレポートをした、真後ろに、進君は振り向こうとするが、金縛りを使って動きを止める。


そしてそのまま完全に凍らせるために手を伸ばす......


私の腕は掴まれていた。

進君はなぜか振り返って私の腕を掴んだ。

進君の口からは血が垂れている。


まさか、自分で舌を噛みちぎって?


「動きを止めるのはお前の専売特許じゃねえぞ?」


思考が加速する。このまま神経毒を入れられたら即負けしてしまう。

テレポートをするべき!いや、今やると進君も一緒にテレポートされちゃう!じゃあ無理矢理にでも抜け出さないと!私は一瞬だけ透過を発動する。ズキッと頭が痛む、私は腕を振るう。

腕が抜けた!


(よし、このまま一気に距離を取ってテレポートで……!)


逃れようと顔を上げたその瞬間、

麗華は感じた。


(初めて進君の目をしっかり見たな)


進と麗華の視線が完全に交差した。




「はぁーいやゴーストって移動、便利だよな」

俺は麗華の目を見て話す。

「あとでタクシーとして使わせてくれ…まぁ今は聞こえてないか」

進の瞳に映った瞬間から、麗華の意識の糸はプツリと途切れていた。彼女は文字通り糸の切れた人形のように、ゆっくりとその場へ崩れ落ちるように倒れ込んでいく。


俺は麗華の目を見ながら腰あたりを持って床に倒れさせた。10秒ほど目を見続けて、そこから目線を外した。

20秒経つ間にこの能力を解説しよう。


この能力は「目を見たら、相手を20秒間機能停止にする」というものだ。一応心臓も止まるんだが、特に悪影響がないのが不思議だ。

あんま自分でもわかってないんだ。

(んー、蛇に睨まれたカエルとか?そんな感じじゃないか?)

目を見ている間ずっと発動するから、

10秒見続ければ、その後能力で20秒動けなくなって

合計30秒

試合終了だな、ゴングの音が聞こえた。


勝負が決まる時はいつもあっさりとしているな。


しかし今回は歓声もあった。

そしてちらほらと「あいつバケモンだろ」「やっぱ特待生なだけあるな」という称賛するような声が聞こえてくる。


「よう、ほら立てるか」


俺は麗華に手を出す


「うん、進君……やばいね!」


麗華はふらふらと立ち上がりながらも、なぜかその瞳をキラキラと少女漫画のように輝かせている。


「やばいって俺の能力が弱すぎ、って意味だよな」


ふざけたことを言う俺に対し、麗華は文字通り「うわぁ」と露骨に引き気味の声を上げた。


「じょ、冗談ですやん!」


「でも進君の能力ほんとに最強じゃない?」


スルーされたので普通に返す。


「まぁ『受検時...』覚えてないけど、特待生だしな」


話の流れを無視し、俺は麗華の手を不意に掴んだ。


「え!?な、なに?」


「教室まで!」


「…あとでなんか美味しいもの奢ってね!」


俺たちは教室に着いた。

そして授業を真面目に(もちろん眠った)受けて、

ついに放課後になった。


自席でだらけている俺の脇で、華が机に肘をつきながら壁にもたれかかって待っている。

その手には分厚い単語帳が開かれていた。


「あれ〜? 二人とも、今から帰りー?」


教室の扉から、のっそりと麗華が顔を出す。


「そうね、勉強しないくせにやたら道具だけ多く持ってきてるのよ、進は」


「おーっと言うじゃないか」


「いいから早くまとめちゃって」


「はいはい」


「仲良いねぇー」


「「まあ、友達だからな(だしね)」」


「あ、ハモった〜! すごいね、距離が縮まるの早すぎない? まだ入学して3日目なのにさ」


「あー、俺、人生で今まで友達なんてできたことないからさ。きっと距離の詰め方を盛大に間違えてるんだろ」


「まぁ馴れ馴れしすぎる感じはするかも」


「れいちゃんが言うことではない気もするけどね」


俺は知らない声に振り返る。

他のクラスの人か...観察してみる。

透き通るような白い髪。そして、小柄な体躯をしている。もちろん胸もない。

どう見ても小学生か、せいぜい中学生低学年にしか見えない。


「お前誰だ?」


「あぁ〜この子はね、中学の時から同じ学校の......」


少女は麗華を静止して


「私の名前、わかるでしょ」


「えー?いやガチで知らん」


何を言ってるんだこの小学生は


「いや、知ってるはず。私の名前を呼ぼうとしてみて」


じゃあチビとでも呼んでやろうかな


「わかった……エルト…あれ?」


「私、斗一族だから」


どういうことだ?意味がわからなすぎて荷物を入れ終わったのにその場に立ち尽くしてしまう。


「自己紹介だけしにきた。れいちゃんをよろしく」


エルトは教室から出て行った。麗華が話を戻そうと、


「えっと、それでね!私とも友達になろうよ!進君」


「え、いいのか!?もちろんだ!」


俺は快く了承してその後華からそろそろ行こうと言われて寮に3人で帰った。


俺達は部屋に入った。


「じゃあ、俺はちょっと風呂に行ってくるわ」


「はいはい、しっかり体を洗いなさいよ」


俺はタオルを片手に共用大浴場へと向かった。

湯気の立ち込める風呂場には、先客が何人か浸かっていた。


「お、蛇さんじゃねぇか」


「俺は進だよ」


「そうか、俺は3年1組の茂山透馬だ」


「あ、先輩なんすね」


「まぁな。今日のグラウンドでの決闘、しっかり見物させてもらったぞ。お前、すごい化け物っぷりだったな……って、おい、まだ能力を解除してないのか? すごい体力だな」


「...まぁそっすねぇー」


「ハッハッハ! お前、嘘をつく時だけあからさまにテンション下がるのか?……そうだ!せっかくだから俺の能力を教えてやるよ。俺の能力は『能力の把握』だ」

「ほうほう?」

「地味だし、よくいるタイプの能力だろ? ちなみに序列は357位だ」

「あー、いやでも、順位、めちゃくちゃ高いっすね」


「お前、殺すぞ」


おっと怒られてしまった。


「で、お前……あの可愛い茶髪の娘の能力が何だったか、ちゃんと分かってたのか?」


「え? ゴーストの力を使える能力じゃないんですか?」


茂山先輩はどういうことだ?という顔をしてその後共感するように頷いた。


「あー、そうかまぁそう思うのも無理ないな、あいつの能力はな、

『他の世界線の自分の能力が使える能力』だ」


「ん? すみません、もう一度お願いします」


「だから、

『他の世界線の自分が持っている、あらゆる能力を引き出して使う能力』ってことだよ」


長すぎて、俺の脳みそでは全く処理が追いつかない。片耳から入ってそのまま出ていくようだ。


「つまり?」


「能力がいっぱいあるし、一貫性もない」


「強ぉ」


「まぁお前が勝ったんだ、すごいぞ」


「あざっす先輩。……そういえば先輩、先輩のクラスで一番強いのって誰なんですか?」


「俺のクラスで一番目立ってて強いのは、そうだな、『緋瀬包美(ひせくるみ)』だなー。能力の詳細は教えないが、序列は8位だ。ちなみに、学年をまたいだ『称号』を持ってない連中の中だけで言えば、実質3位の怪物さ」


「称号ってなんか王みたいな奴ですか?」


「結構重要なやつだぞ、ほとんどの奴がそれを目当てに入学してるし」


「権力ってそんなに欲しいんですか?」


「...お前純粋だな」


「え、そうすか?」


俺が首をかしげると、茂山先輩は肩をすくめて湯船の縁を叩いた。


「ま、いいさ。……でだ、お前の能力、少し見せてくれないか?」


「あ、いいっすよ。どうぞどうぞ」


俺も自分の能力の正式な名前や系統をそろそろ知りたかったので、二つ返事で快諾した。


「おっと、じゃあまずは俺を直視してくれ。……いや、目を見してくれないと、お前の能力のオーラの輪郭しか読めないんだ」


「……あー、すんません。急に用事を思い出したんで、俺はこれで失礼します。ちょっとのぼせてきたし」


「えっ? おい! ちょっと待てよお前ー!」


 俺は先輩の制止を完全に無視し、バタバタと慌てて足早に風呂場から飛び出していった。

おっと俺はシャワーしてから風呂入る派なので安心してくれ

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