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『終』

目を開ける。

部屋には、相変わらず何もない。

もういい。

これ以上悪夢を見せたところで、不愉快なだけだ。

あいつの苦しみは、十分に刻みつけた。

あとは死ぬまで、勝手に苦しめばいい。


俺は陣を開き、地獄へと帰った。

荒んだ空気と爛れた大地を飛び、屋敷へと戻る。

最奥の部屋の扉を開け、中央に置かれた小瓶を確認する。

中に入った魂は、相変わらず傷だらけだが完全に壊れてはいない。


「こんなものを寄越されても迷惑なだけだ」

「あんなので契約が完了したなんて俺は認めない」


俺は部屋を満たす瘴気を払い、小瓶の栓を抜く。

こんなボロボロの魂を喰ったところで、何の足しにもならない。

だから、修復することにした。


しばらくは、人間の呼び出しに応じる気もない。

暇潰しにはちょうどいい。



とある街で、少女が空を見上げている。

噴水の縁に腰を掛け、吹き抜ける風に目を閉じる。


「お待たせ、レティ。何だか機嫌がいいね」


少女は声をかけられ、花が咲くような笑顔を向ける。


「ええ、今朝いい夢を見たの」


少女は嬉しそうに話し出す。


「あまり覚えてはいないのだけれど、最初はとても悲しい夢だったの。私はずっと一人で泣いていたの。だけどね、最後に誰かが優しく抱き締めてくれた。それがとっても温かくて、目が覚めても心地いいの」


青年は少女の隣に腰を下ろす。


「それは良かった。でも、少し妬けるな。夢の中でも、君を助けるのは僕でありたかったのに」


その時、少女の足元で丸くなっていた黒猫が、青年に飛びかかった。


「わっ。この子、またいたんだね」

「ええ。アモンとはいつも一緒なの」


黒猫は青年の腕の中でじたばたと暴れながら、しきりに威嚇する。


「ははっ、アモンは元気だな」

「私の前ではおとなしいのに、どうしてかしら?」


黒猫は青年の腕から抜け出し、少女のそばで丸くなる。


「今からおかしなことを言うけれど、笑わないでね。私ね、この子に守られている気がするの」


少女は黒猫をそっと撫でる。

青年は少女のもう片方の手に、自分の手を重ねた。


「そうかもしれないね。だって僕には、ちっとも懐いてくれないから。アモンに認められるよう頑張らなくちゃ」


二人は顔を見合わせて笑う。


「そろそろお買い物に行きましょうか」

「ああ、そうだね」


二人は手をつないだまま歩き出す。

その傍らを、黒猫も歩いていく。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
これほど悪夢を見せてもそれが止んだら3日も経たずに関係者は彼女が味わった痛みを忘れるし、何なら反動で罵るようになると思う 未だに罪は明らかにされてないし名誉も回復してないのに十分と判断して止めるなんて…
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