表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

『序』

公爵令嬢が死んだ。


──聞きまして?


──昨夜、ご自分の部屋で亡くなったそうですわ。


──きっと、婚約破棄が原因ね。


──公爵家の期待に耐えられなかったのではなくて?


──あの方、昔から少し張り詰めていましたもの。


──でも、随分と気位の高い方だったでしょう。


──誰にも弱みを見せなかったものな。


──だから、周りも助けようがなかったんじゃないか?


──それに、あの平民の令嬢を虐めていたという噂もあった。


──殿下を束縛していたとも聞きましたわ。


──では、自業自得ではなくて?


──けれど、その噂は本当だったのかしら。


──私は、実際に虐めているところなど見たことがありません。


──もしかしたら、誰かが流した嘘だったのでは……


──しっ。殿下に聞かれたらどうするのです。


──それでも、亡くなるほど悩んでいたなんて。


──誰かに相談すればよかったのに。


──皆さん、静粛に。


──昨晩、皆さんの級友であった彼女が命を落としました。


──彼女は常に貴族としての責務を果たそうとしていた、立派な生徒でした。


──この悲劇を無駄にしないためにも、皆さんもまた、正しく成長していかなければなりません。


──先生のおっしゃる通りですわ。


──ご立派な方でしたものね。


──ええ。あの方を見習い、私たちも務めを果たしていきましょう。



黙れ。

そんな言葉で、あいつを飾るな。

綺麗事で終わらせるな。


貴様らは知らなかったのではない。

気づかなかったのでもない。


あいつの苦しみを見ていた。

あいつの声を聞いていた。

そのうえで、目を背けた。


なんて愚かで、馬鹿馬鹿しい。


追い詰めた相手が死んだ途端、悲しげな顔をして、聞こえのいい言葉を並べ立てる。

まるで自分たちは何もしていないとでも言いたげに。


無様で、滑稽で、醜悪だ。

そんな貴様らに、俺から贈り物だ。


夜が来るたび、思い出せ。

眠るたび、後悔しろ。

あいつが味わった苦しみを、何度でも思い知れ。

さあ。


終わらない悪夢の始まりだ。


何もない公爵令嬢の部屋。

黒い影だけが、静かにそこにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ