やみ上がりには厳しい世界
ユーリとユーノは対の存在だ。
光のがあんな事ことするなら、闇のも当然やって来る。
0ターンで交代自由だからって、時間消費0
あ、そか。ゲームと同じだ、とはならない。
「今の…本当…?」
「僕だって知らないよ…。そんなの聞いてないし」
銀髪の少女の言う通り、
器を持たないことで事象の境界、この世界で言う神となった少女は、器がないが故に体を保てない。
「だから…。わたしは一人で行かないと…」
アルフレドは、ユーノを取り戻す為に光神ユーリと戦って勝つ。
見事にユーノを取り戻すが、ユーリと合わせて二つ分のエネルギーがユーノの体を究極の神へと変えようとする。
一つの女神メビウスが体を二つに分けて作ったの世界だから、ユーノに形を与えるには、世界丸ごと必要になる。
アルフレドはそこで思い悩むが、彼はユーノを助ける為にそこまでやったのだ。
そして、一人の少女を助ける為に世界全てを捧げる。
「それは…流石に…、ねぇ?」
「先に話してくださいませんと…」
これがユーノルートのエンディングのざっくりとした話だ。
「レイが言ってた通り…の話…」
「おや…、でも様子がおかしいねぇ」
「あ?そういや、レイは話したっつってたろ」
途中まではノーマルエンドを目指していた。
思い出してからは幻のハーレムルートを目指し、そして探した。
「話したって。でも、そん時の俺は印象の薄いオジサンだ。お前も経験しただろ」
「そ、そうだった。あそこは誰も俺に興味を持ってくれない地獄…。う、寒気が…」
因みに、勇者がユーノを選べば、誰も助からないというのは伝えていた。
ふわっとしか伝えていないのには理由があった。
「まぁ、流石に詳細は話してないんだけど」
「ふむ。何故でござる?お主は最初から知っていたのだろう」
「詳しく話してくれていたら、僕が勇者を殺したのにねぇ」
「話してたら、アルフレドは止めようと一人で飛び出すだろ。俺が記憶を取り戻した時にはユーノは攫われてたしな」
「だったらエルザのせい、かな?」
「アタシ?アレは魔王様の命令でしょ。で、魔王様はユーリ殿下のいう事を聞いていたんだっけ?」
ただ、終わった話。
ここから話が変わる。
だって、最終戦を前、最終戦の前座のヘルガヌス、その前座の復活ボスバトルの途中で、まさかのユーノ自らのネタバレ。
「でも、まだ分からない。絶対に方法がある筈なんだ」
「ユーノは神様の化身だよ。あたしたちに出来ることって」
「思いつかないわよねー」
「これは簡単な話ですわ。神様同士のお話。アルフレド」
「…うん。分かった。皆はそうして」
「アルフレド様‼」
この流れで成立するわけがない。
流石の狂信的好感度も、世界を失いかねない行動には歯止めがかかる。
「ふむ。拙者には分かったで御座る。これが探していた奥の細道。破愛恋無‼」
「なんとなく違うこと言ってるって気がするから言っとくわね。妙な当て字を使わないで」
「そうなんだ。ハーレムルートじゃない。これでもユーノルートは成立するんだ。極論を言えば、アルフレド一人でユーノルートでクリアできる。アルフレドがユーノを思う限り、成立する。俺は魅力的なヒロインが他にもいるって伝えたかったんだけど」
「で、あの地獄か。俺には意味が分からんな。確かに胸が痛いが、傷を癒してくれる女に囲まれているんだ」
途中まではユーノを止める為の旅。
ユーノはその後助かるが、ユーノの意志でいなくなってしまう。
それと気付かない、認めたくないアルフレドは、今まで以上にユーノに拘ってしまう。
そして魔王城に入り、今度こそ取り戻したと思った時に、ユーリとユーノの話を聞く。
アルフレドは必至に考えて、魔王軍を排除し、仲間を利用してまで、真の意味で取り戻そうとしている。
今も尚…
「ユーノ。僕もついていく。闇の波動をお願いできる?」
「うん。直ぐにでも行きたいから、邪魔しないで」
魔法名を言わず、ユーノは手を翳した。
透明で灰色の人間の手のようなものが、無数過ぎるくらいに現れて、復活ボスたちを襲う。
さっきまでの全体魔法は範囲の一種、そんな理屈は存在しない。
全員に同じ分だけ、デバフ効果が齎される。
そして、本来な彼女を崇拝するべきと体が呼応する。
「うわ、なんか来た。…ぬるりと…な」
「あぁあ、ボクはまだ変身を二回も残しているのに」
「ぐぬぅ…拙者は魔影になれぬでござる…ってばよ」
「これはまさか毒…?恍惚の表情…」
受け入れたい気持ちと、それに抗う気持ち。
十字軍は賛美歌で恐怖を乗り越えたように、東洋の大英傑項羽の軍が四面楚歌で追い詰められたように、
魔法が存在しない世界だって、魔法のようなものは存在する。
これは、心を襲うデバフの方だった。
「お前たち、なんか発言がおかしく…。これが真の闇の波動かヤバすぎだろ。…鬱だ。萎えるぜ」
五人の復活ボスたちが萎えていた頃、
勇者サイドでも動きがあった。
「アル様‼…行っては駄目。ユーノちゃんの話は本当だよ」
「さっきの戦いの流れは、勇者様も聞いてたよね」
「勇者様が指揮をお出しになっていましたから」
「理に適いませんよ。アルフレド君、もう一度考えるべきです」
「ユーノたまは…、一人で行くのら。一人は寂しいけど…仕方ないことなのら」
最初から聞かされていた。存在感の薄い男は教えていた。
存在の薄い男は、ムービーを世界の意志と思えと言った。
ピロー枢機卿団は世界の意志を咀嚼する為、予言という言葉を使った。
予言とは即ち、主の言葉。この変換は容易だったが、主が見せるのは勇者と過ごす暖かなひと時。
その度に深層に息吹く、好感度マックスヒロインとしての気持ち。
その好感度マックス勇者、彼の想い人が言った。
存在感の薄い男の言葉と比べ物にならない。
彼の想い人が言ったのだ。だから
「どうして怖い顔してるの。大丈夫だって。ほら、みんなはあの悪魔たちを倒さなきゃ。勇者の、僕の花嫁たちの仕事でしょ」
「世界と簡単に言いますが、そこに力無き人々が暮らしているのですよ。大いなる責任をわたくしもアルフレドも持っているのです」
愛する者の為に世界を敵に回す。
愛する者の為に他のすべてを差し出す。
愛する人、両親、恋人、妻、夫、若しくは我が子ならどうだろう。
「またノブレス・オブなんとかの話?それは違うよ。僕はスタト村で生まれた、何も知らない男なんだ。フィーネ、助けてよ。みんなが変なんだ。ユーノを敵みたいに見るんだ」
「…変なのはアルの方よ。ユーノは皆のために、世界の為に自分の身を捧げに行くの。助けたいけど無理なの!…私たちのに出来るのは応援すること…。だから」
冷たくてねっとりした空気。
闇のヴェールに包まれたまま、レイは思わず手を伸ばす。
だが纏わりつくものに阻まれて、叶わない。
「それは違うよ。あぁあ。フィーネなら分かってくれると思ったのにぃ」
「ア…ル…。アン……タ」
光の女神メビウスが描かれたステンドグラスの下で、赤い液体が飛ぶ。
「フィーネ‼」
「アル様…、ううん。アルフレド‼フィーネはずっとアンタことを庇い続けてたんだよ!」
「アルフレド、アンタヤバいよ」
「これは俗に言う闇落ちってヤツかな…」
斬られたフィーネの介抱に回る数名と、勇者とユーノを取り囲む
でも、勇者の瞳にはハイライトが入ったまま、闇落ちなんてしていない。
闇落ちなんて可愛いものではない。
「おかしい?ヤバい?間違ってる?皆、何を言ってるの?おかしいのは世界の方だよ。なんで、ユーノが邪神なの?なんで、魔王城で魔王と一緒にいるのが光の女神なの?そんなの、おかしいよ」
透き通った青空色の瞳に輝くのはユーノただ一人。
彼は本当にユーノをただ助けたい。
「そんなこと言われても…」
「ユーノ自身が言ってたじゃん。神様が一つになれば」
「そうだよ。ユーノが言ってたよ?勇者の傍にいる私が何故か邪神になってしまったって。僕もずっと思ってたんだ。どうしてユーノだけがそんな目に遭ってしまうんだって。…間違ってるのは、世界の方なんじゃないかって」
ピロー枢機卿たちの顔が青褪める。
勇者アルフレドがギリギリまでユーノ救出を考えていたことは知っている。
勇者アルフレドがさっきのユーノの話を知らなかったことも知っている。
だが、世界が間違っていると考えたとまでは知らない。
彼だって、そんなことは1mmも考えていなかった。
そう信じて、説得するが
「今はまだ、混乱してるだけだよ…。世界を壊すとか、後で絶対に後悔する」
「ユーノを失ったらと思うと、本当に後悔しか残らない。だから…さ。邪魔しないで」
「きゃ」という声と同時に、小柄な彼女専用重装備が吹き飛ぶ。
血が噴き出る左腕に目を剥いて、少女は倒れた。
回復対象が増えて、現場は騒然とする。
動きを封じられた魔物たちを除いて、相手はたったの一人だ。
その一人に悩まされる。
勇者に貢いできたステータスアップの種の量に蒼褪める。
なんて…
実際は全然違う。
種ドーピングでこんなに圧倒的な差は生まれない。
銀髪の魔人、角からの出血のせいで血に塗れた額から淀んではいるが透明な液体が噴き出す。
そして、その血を洗い流す。
「おかしい…です。フィーネが全然治らない。回復魔法が」
「駄目‼エミリの意識が戻らない‼」
もしかしたらと思って、話し合いを聞いていた。
印象に残らないオジサンだから、あとは若い者に任せてとか考えた。
老婆心?お節介?いやいや、世界の危機‼自らの安全の為だ。
動機は勇者と変わらないかもしれないけれど、魔人は叫んだ。
「ポーションを使え‼魔法じゃダメだ‼」
「え?そうなのですか?」
ヒロインを外すのも自由、その新要素で恐ろしい結果が生まれた。
何人以上ではない。ドラステファンが期待したハーレムとは、ヒロイン全員がいる状態を呼ぶ。
フィーネは勿論、エミリだって失えない。
仲間がいなくともユーノルートの進行に問題ない。
なんて不利で恐ろしい…
「ソフィアぁ。修道女が悪魔の言う事を聞いちゃ駄目だよ」
「イカレてるお前が言うな。ソフィア、マリア。今のお前たちは仲間から外されてる。修道院で修道女たちがやっていた方法で治せ」
だが、魔人のこの言葉をキッカケにして、実は簡単だったピースが埋まり始める。
そのピースは平和を象徴している色。
白く、そして光り輝いていた。
マーサ様はどうしていたっけ、なんて考えていたソフィアの前で起きる。
「そか。じゃあ、——完全回復全魔法‼」
「え…?これ、私の魔法ではありません…」
奇跡は齎される。
「ゴメンゴメン。知らなかったんだ。みんな、ユーノを心配させちゃ駄目だよ」
「アルフレドの回復魔法…⁈」
「皆はユーノの力があるから生きていられる。…もしかして、忘れてた?」
その奇跡を起こしたのは勇者だ。
だが、勇者はユーノに頭を下げる。
「え…っと、だからユーノはユーリと会わないといけないって」
「キラリ…、駄目」
「うっかり仲間外れにしてゴメン。皆、そんなこと考えていないから」
勇者は闇落ちなんてしていない。
勇者にとって、闇女神が上にいるのだから、落ちてはいない。
彼はとある理由で、
「僕はただ触っただけ。フィーネ、エミリ。痛かったなら謝るから。ほら、ユーノにも謝ろ?僕も一緒に謝るから」
——闇み上がりだったのだ。




