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異世界歌姫は今日も自由!  作者: ザナトス


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第49話 王都最高の鍛冶師

「王都一の装備を作ってやる」

ガルドの宣言。

その言葉が工房に響いた瞬間、職人達の空気が変わった。

誰も笑わない。誰も茶化さない。王都最高の鍛冶師が本気になった。

それがどれほど凄いことか、工房にいる全員が知っていた。

「親方がそこまで言うなんてな……」

「初めて見たぞ」

「歌うための装備だろ?」

「信じられねぇ」

ざわつく職人達。だがガルドは気にしない。腕を組みながら風翼グリフォンの素材を眺めていた。

巨大な翼。鋭い爪。魔力を宿した魔石。どれも極上品だ。

「まず羽根だ」

ガルドが翼へ触れる。

「これは外套に使う」

「マント!」

カナタが目を輝かせた。

「うん!」

「欲しい!」

「まだ作ってねぇ」

「でも欲しい!」

「話を聞け」

工房に笑いが起きる。フィオも小さく笑っていた。ガルドは呆れた顔をしながら続ける。

「軽い」

「丈夫」

「魔力も通る」

「歌う時にも邪魔にならねぇ」

職人達も頷く。風翼グリフォンの羽根は想像以上だった。

高級素材。それも最高級。王都でも滅多に手に入らない。

「絶対綺麗になるよね?」

「なる」

ガルドが即答する。

「むしろ綺麗にならなきゃ職人辞める」

「おぉー!」

カナタが拍手した。ガルドは少し照れ臭そうだった。

そして。

今度は巨大な爪を持ち上げる。工房の空気が変わる。

武器。つまり戦うための装備だ。ガルドは床へ図面を描き始めた。

長い柄。巨大な刀身。流れるような刃の線。普通の大剣より少し細身。風を切るような美しい形。

「これだ」

カナタの目が輝く。

「かっこいい!」

即答だった。

「まだ絵だ」

「でもかっこいい!」

「まぁそうだな」

ガルドも否定しなかった。職人達も図面を覗き込む。

「面白いな」

「軽量型か」

「グリフォン素材なら出来るか」

次々と意見が飛ぶ。

だが。一人の職人がぽつりと言った。

「……で?」

全員が振り向く。

「持てるのか?」

静かになった。確かにそうだ。カナタは小柄だ。見た目だけなら普通の少女。大剣を扱うようには見えない。

「無理だろ」

「流石にな」

「飾りならいいが」

職人達が頷く。カナタはむっとした。

「持てるかもしれないよ?」

「いや無理だ」

即答だった。

「なんで!?」

「見た目だ」

「酷い!」

フィオが吹き出した。エマも苦笑している。ルークは腕を組んだままだ。何か言いたそうな顔をしている。

ガルドが倉庫の奥を見る。

「おい」

「例の試作品持ってこい」

弟子達が顔を見合わせる。

「え?」

「あれですか?」

「あれだ」

数分後。二人がかりで巨大な鉄塊を運んできた。

どんっ!

床が震える。それは訓練用の大剣だった。見た目は無骨。

装飾も無い。だが重さだけは本物。冒険者でも振り回すには相当な筋力が必要だ。

「親方」

「流石に無理だろ」

「見てろ」

ガルドが笑う。そしてカナタを見る。

「持ってみろ」

「え?」

「ほら」

カナタは大剣を見る。大きい。凄く大きい。自分より少し高い。正直ちょっと怖い。

だが。

「うーん……」

恐る恐る柄を握る。工房中の視線が集まった。

そして。

ぐっ。

ひょい。

持ち上がった。静寂。誰も動かない。職人達が固まる。弟子達が固まる。ミリアも固まる。フィオも目を丸くしていた。

エマが呟く。

「持った……」

ルークは頭を押さえた。

「やっぱりな」

「え?」

カナタ本人も驚いている。

「持てた」

普通に言った。それが余計に酷い。工房が爆発した。

「なんでだ!?」

「嘘だろ!?」

「いやいやいや!」

「重いぞそれ!?」

カナタはきょとんとしている。

「重いよ?」

「なら置け!」

「でも持てるよ?」

「意味が分からん!」

職人達が叫ぶ。ガルドは笑っていた。面白くて仕方がないらしい。

「親方」

「どうなってるんです?」

弟子が聞く。ガルドは肩を竦めた。

「知らん」

「は?」

「だが」

そして。

カナタを見る。

歌姫。冒険者。風を纏う少女。見た目は普通。だが中身は違う。

グリフォンを倒し。空を飛び。巨大な剣を持ち上げる。

「普通じゃねぇな」

ガルドが笑う。職人の目だった。

「気に入った」

そして図面を掴む。

「予定変更だ」

工房が静まる。

「親方?」

「王都一じゃ足りねぇ」

職人達が目を見開く。ガルドはニヤリと笑った。

「伝説になる装備を作るぞ」

その言葉に。工房中の職人達の目が燃え上がった。

歌う少女のための装備。誰も作ったことのない装備。

だからこそ。面白い。

王都最高の鍛冶師達による、本気の仕事が始まろうとしていた――。

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