〜□D52■D〜俺はアイツと飲む紅茶が一番美味しい〜
「…俺が、オマエの事を救っている…?」灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)|いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢は俺の顔にその華奢な手を添え一つ小さなKissをした……。
「…………」俺は何が起こったのか?よくわからずに混乱して固まってしまった。
「今のは、感謝のKissです。私の心を救ってくださったデージョ王子様へのー感謝のKissですー」
「…………」何も応えられない俺には、灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)|いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢は、俺に想いを告げました。
「貴方様は、きっと。おわかりになられないかも知れませんが、私にとって、デージョ王子様ー貴方様の存在が、どれ程に大きな喜びかー私は貴方様に深く感謝しているのですー」
灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢は、去り際に「デージョ王子様ー私は貴方様を深く愛していますー」と俺に告げてくれた。
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……あれから俺は悩んでいる。いくら考えてもやっぱりわからない。何故、灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢は、こんな俺の事を愛してくれるのか。
……俺には、わからないんだ。
『デージョ王子様ー私は貴方様を深く愛していますー』
俺の心で、頭の中で、鼓膜の奥で、何度も何度もリフレインされる灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢が俺に告げてくれた言葉……。
ずいぶんと住み慣れてきたピクセル家の別邸の寝室で、モフモフの枕を膝に抱え眠れぬ夜に夜空に瞬く星を数え灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢のことを考えていた。気づけばずっと灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢のことを考えている。
「ーそれは、もぅー恋ではございませんか?」
不意に耳元でモソモソランドセル(モンストロ・ブラン)が無駄に良い声で俺に囁いた。
「のわっ!?」びっくりする俺に不法侵入執事は言う。
「デージョ王子様。ご自分のお気持ちに良い加減お気付きになられたらいかがです?」……と。
「……俺の気持ち?てかオマエ不法侵入だぞ!そして俺の心の声を勝手に読んで勝手にアドバイスしてんじゃねぇ!」
びっくりしたので取り敢えず言い返す。びっくりした。
「これはすみません。お声をおかけしてもお返事がなかったものですから。不測の事態かと思い。入室させて頂きました。そしたらアナタ。可愛く枕を膝に抱えて、恋する乙女のように星空を眺め恋に悩んでいらしたからつい♡プププ♡」
不法侵入執事が楽しそうにプププ♡と笑いながら言う。
「ついプププ♡ーーじゃねぇよ!まぁ。確かに悩んではいるが、恋のアドバイスなんざお頼みでねぇっつーんだ!」
反射的に悪態をつけば、不法侵入執事は言う。
「デージョ王子様は、心の声が顔にダダ漏れで御座いますからね」……と。そして静かな動作でティーワゴンでカモミールティーを淹れてくれた。
「ーこれを飲めば寝れるかもしれないー」
無駄に良い声で不法侵入執事は囁く。
「ー寝れるカモミールティーで御座います♡ー」そして俺にーこれを飲めば寝れるかもしれないー寝れるカモミールティーが入った白磁器のティーカップを優雅に差し出す。
「ーありがとうー」
ーこれを飲めば寝れるかもしれないー寝れるカモミールティーを不法侵入執事からありがたく受け取って礼を言う。
俺がアレコレ悩み寝れない夜に幼い頃から決まって淹れてくれる。ーこれを飲めば寝れるかもしれないー寝れるカモミールティー……一口飲めば、心が落ち着いてくる。
「…俺はアイツのことが…灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢のことが好きなのだろうか?…よくわからなぃ…恋とか愛とか惚れた腫れたとか」
「…ロマンスってなんだろう…」
俺のつぶやきに不法侵入執事は静かに応えた。
「デージョ王子様は、紅茶を愛しておられますよね」
「ー何かしらを愛する心がロマンスなのかとー」
「…そうか…何かしらを愛する心がロマンスなのか……」
俺は、暫く考えて「…やはりよくわからないな…」とつぶやいてから「……だけど」と一度、言葉を区切り囁いた。
「ー俺はアイツと飲む紅茶が一番美味しいー」
不法侵入執事は優しく微笑んで言った。
「ーそれだけでじゅうぶんだと思いますよー」と。




