絹代が気絶したあの時、師走は
「…酷い目に遭った」
結界が張ってあったなんて、全然気付かなかった。
俺の自慢のオールバックがチリチリになってしまったじゃないか!
まぁ、とりあえず除霊は免れたけど、あの除霊屋…落ち着いたら俺を除霊しに…
想像したら、思わず身震いした。
何で、望んでもいないのにこの世界に召喚されて、こんな目に遭わないといけないんだ?
やりきれない気持ちのまま、自然と俺の体はある場所に向かっていた。
"田中"
郵便受けにそう書かれた一軒家の前に来た。
もうすぐ、俺を召喚した人が帰って来るはずだ。
姿を消して、その人を待った。
遠くから、ポニーテールの赤渕眼鏡をかけた女性が歩いてきた。
そう、その人が…
久しぶりに姿を現わそうとしたら、電話を掛けている事に気付いた。
何だ…?まさか…俺というものがいながら、他の男と電話か?
姿を現わすのを中止し、電話の内容を盗み聞きする事にした。
「…はい、そういう事でしたら、大丈夫です」
敬語…仕事先か?
「はい。また、五十嵐師走を除霊できたら教えて下さい」
「え!!?」
しまった。声が!!思わず出てしまった。
「…!?」
美保ちゃんがびっくりしてきょろきょろしている。
…俺を除霊するように依頼したのは…
ショックで頭が真っ白になった。
"なんでだよ…会いたいって、この世界に呼んだのはアンタじゃないのかよ…?
何で、俺がこんな事に…"
次第に美保ちゃんへの憎しみが増してきて、俺の体から黒い煙みたいなものが吹きあがる。
何だこれ…なんかよくないものって分かるけど…
憎しみが…止まらない。
「…美保ちゃん」
「え」
俺は、美保ちゃんの前に姿を現わした。




