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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第三章 勇者死すべし! 編
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第二十八話 後日談

「ふあ、う〜ん」

「ん……ここは?」


 勝雄、宇佐治、輪子の三人が突っ伏していたのは、彼ら馴染みのカフェのテーブル。

 学校帰りの時間は大体空いている、落ち着いた雰囲気のカフェだ。


 いつも同じソファ席に宇佐治と隣り合わせ、輪子を向かいにして座ってたっけ。

 勝雄は眠りから覚めた頭でボンヤリ思った。


「あれ、私たち揃って居眠りしちゃってたの? 夜更かしし過ぎてんのかな」


 同じく寝惚け眼の輪子が欠伸しながら言った。

 向かいでは宇佐治がまだ寝たままだ。


「うう、ルケア……ブダゴルラ先輩じゃましないでください……むにゃ」

「!!!」


 サジの寝言を聞いた二人は弾かれたように立ち上がった。


「そうよ! ここ? ルケア? ……元の世界!!」

「お、落ち着こうよローラ」

「そうよ! 私はローラ、あんたはカッツォ。そしてコイツは」

「サジ、だね」

「だわ」


 勝雄と輪子――改めカッツォとローラは頷き、宇佐治ことサジの肩を揺すり脚を蹴り、彼を起こした。


「ほあっ? あ、れ、ここは……ああ、いつもの喫茶店(ボンクロ)か。俺居眠りしてたのか。わりい勝雄、リンいてえ!」

「ローラでしょ。コイツはカッツォ」

「あ? …………ルケア! え? ――あ、ああ」


 サジは捩じ切れるかというほど首を振り周囲を見回すと、絶望だと言わんばかりにテーブルに額をつけた。


「ルケア……うぅ、ルケア〜」

「どしたの?」

「あ〜、もしかして、告白するとこだったのかも」


 旅の間カッツォとブダゴルラはサジから頻繁に尋ねられていた。

 サジに対するルケアの好感度やら、距離感の縮め方などを。

 思い返してみると最近のサジは、日に日に何か機会を窺う様子が強まっていた。

 もし彼が告白の機会を逃したのならば、これはもう一生ものの後悔と言っても過言ではない。


 ……かもしれない。


「元気出しなさいよ! どうせフラれてたってば!」

「ちょ、ローラ! やめなって」

「るせえ! どうせお前も同じこと思ってんだろカッツォ!」

「そりゃそうだけど……はっ!」


 カッツォは口を塞いだが既に失言は溢れ出た後だ。


 サジは額に青筋を浮かべている。

 そしてローラの慎ましやかな膨らみを見て溜め息一つ。


「……どこ見て溜め息吐いた?」


 ローラの口元が引き攣った。

 サジは慌てて目線を斜め上に逸らし、掠れた口笛を吹き始めた。



「帰って来た、かぁ」


 ふと冷静になったカッツォが呟いた。

 襟首を掴み上げられたサジと、彼に対して拳を振り上げていたローラも我に返って力を抜いた。


「夢、じゃないんだよね」

「ああ。俺らの体は転移前のままだけど、心は冒険を、異世界で生きてきたことをちゃんと刻んでる。俺は、確かに異世界にいた」


 目を閉じれば鮮明に思い出せる――








 カッツォ、サジ、ローラ、ルケア、ブダゴルラ。

 “神像の分体となる種子”を持ち、聖地から旅立った五人の旅は、当初の想定以上に賑やかなものとなった。


 まず国のトップたる王に話を通そうとした五人に教皇が加わり、魔族に関する誤解を解くことから始まった。

 反対派もいれば混乱する者たちもいたが、神像の分体となる種子はそれらの人々をして新たな考えを理解させるほど神力に満ちていたようだ。



 さほどの時間をかけず、五人に王国側の使節団、護衛の兵が加わり魔族側の領土へ行くことが決まった。


 ちなみに護衛兵の指揮を執ったのはゲルギオだった。

 彼がブダゴルラに敵意を持たぬようカッツォたちが砕心したのは言うまでもない。



 一行は魔族側の領土に行きしばらく過ごすと、自分たちがそうであるように最初は相手側の恐怖や警戒を感じ互いにギクシャクすることがあった。

 だが慣れてくるとそれまでの警戒心が嘘だったかのように、当地の文化や風土を楽しんだ。

 そして使節団に魔族側の集団も加え、一行は鳥車を何台と連ねた大商隊的な様相を呈していった。


 カッツォたちはその大集団を率いる旗印である。

 各地を巡るカッツォたちは魔物から使節団を守り、行った先々で弱い人々を守った。

 大体のところカッツォたちは英雄であった。


 しかし


 懐かしい場所に行き、懐かしい人たちとも再会した時は英雄ばかりではいられなかった。


 特にミナテミスやドワワノフとの再会では、カッツォたちは手荒な歓迎を受け、大いに揶揄われた。


「エルフとドワーフじゃん……何で分からなかったかなあ」

「若造が。世間知らずはちったあ改まったか」

「言ってやるなドワワノフ。学び成長することの価値と喜びを若い内に知るのは良いことだろう」

「ちっ、年寄りくせえこと言いやがって」


 カッツォたちは小さくなって二人の年長者にいじられた。


「そうか、ゴブシム殿は無事帰られたのだね。――ふむ、いずれこの世があの方の話されたような世界になるかと思うと楽しみだね」


 ミナテミスは子どものように無邪気な笑顔で言った。


 これまでの自分たちのした言動への忸怩の思いはあったが、世界を良い方へ変えるのもまた自分たちだと思うと、カッツォたちは救われるような心持ちであった。



 そうして幸いにも増長することなく旅は続いて、とうとう最後の神像の分体となる種子を安置しカッツォたちは聖地に戻った。



 聖地は地下から浮上し大河を埋め、更に盛り上がり大山となった。

 神像は無数の光の粒子となり空へと舞うと、四方八方へと散らばった。



 超常で、幻想的なその光景を前に、サジはルケアの肩に手を置いた。

 旅の間に芽生えた淡い思いを告げようと決意したのだ。


 ところが


「婦女子の体に不躾に触れるものではないぞ」


 苦笑したブダゴルラに咎められた。

 サジが「邪魔しないでください」と言いかけた時、サジ、カッツォ、ローラの三人の意識は途切れた。




「あ……」


 ルケアは塵となり風に溶けていくサジたちに手を伸ばした。


「使命を果たしたということか」


 暫し呆然としていたブダゴルラが空を見上げた。

 強がって涙を乾かしている。


 ルケアはそんな彼を見ないようにし、胸の前で手を組んで目を瞑った。


「ありがとう、ございました。どうかお元気で」


 感謝と寂しさと……

 ルケアは少し痛む胸を押さえた。

 この先恋愛とは無縁で信仰に生きる、そんな人生だろうという漠然とした思いを抱いて。








 いつかルケアも誰かを好きになり結婚して子どもを生む。

 そう考えると胸が苦しい。


 しかしサジは笑顔を見せる。


「つうか、俺らあれだぜ?」

「何よ」

「異世界帰り」

「!!」


 カッツォとローラが立ち上がった。


「……いやいや、まさか」


 しかし苦笑してすぐ座り、それでも何かを考えじっと手を見た。


「ウォーター」


 ローラが呟くと、コップの水が増え溢れた。


「わわっ!?」

「ちょ! ――あ、すいません! 水零しちゃって」


 騒ぎかけるローラを押さえ、店員にごまかし謝った。

 もちろん内心ではカッツォもサジも興奮している。




 会計を済ませ店を出た三人は、体をぶつけ合いながらヒソヒソと話す。


「やべえやべえ。俺らやべえ」

「まさか魔法が使えるなんてね」

「世界を裏から支配するとか、できちゃったりして」


 妄想を膨らませ、道行く人より自分たちが優れた存在だと思いかけた三人。


「キャーッ!!」


 近くで突如上がった悲鳴。

 三人はその方を見た。


 ゲームの女性キャラのコスプレをした二人に小型車が突っ込む。


「危ない!」


 咄嗟に飛び出そうとする三人だが、思った程の力は出ない。

 異世界よりも低い魔力しか出せないようだ。

 有頂天から絶望へと突き落とされた。

 目を背けることもできない。



「わ!?」


 スタングレネードのような強烈な光が周囲を覆った。


 視覚異常防御で辛うじて視界を確保した三人は見た。

 妖艶な方のコスプレイヤーが踏ん張り、車を腕で受け止め、ほぼ同時にジャンプしながら脚を振り上げ車を蹴り飛ばすのを。


「は……はああ!?」


 車は横転している。

 三人がそちらを見ている間に、事故に遭いかけた二人はいなくなっていた。



「穏やかに生きるのが一番だと思う」

「そうね」


 授かった力は時々人助けする程度に使うことにしよう。

 三人が何かを悟り考えを改めるには十分強烈な出来事だった。








 やがて、世間で謎の現象が発生し始めた。

 警察が手こずる凶悪犯が前触れなくいきなり制圧されたり、災害現場から救出を絶望視された人々が助け出されたり。

 正体不明のヒーローがいる。

 一体それは何者なのか。

 世間は騒ぐがヒーローの姿は杳として知れず。

 その真相は三人の少年少女のみが知っているのであった。

 難しかったです……

 やらかした気がします……


 と言っても何が最良だったか答えは出てないのですが。

 さて、気を取り直して。


 主人公視点から外れて始まり、そのまま終えてしまった今章ですが、当初の世界観は人類が魔族を迫害している世紀末。

 勇者君たちはそんな人類に与する思慮の欠けた少年少女でした。

 異世界転移して来て、身につけた異能で人類サイドにチヤホヤされ、魔族を悪と決めつけ虐殺していく。

 そんな異世界ーーミサからすると過去世界ですねーーをミサは旅する中で世直しをし、やがて好き勝手している勇者君たちをぶちのめす、と。

 ゴブシムが魔族を平定した魔王だったり、キャミィが聖女を名乗る第三勢力だったりと、今の話とはかなり違ったものになりそうだったのです。


 それがまあ、書いている内に勇者君たちをそこまで小悪党扱いすることに抵抗を感じまして、結局今の形に落ち着いたわけです。


 そのせいで主人公が終盤まで出てこない事態になりましたが、次話からはまた主人公視点に戻ります。

 引き続き応援よろしくお願いします。

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