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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第三章 勇者死すべし! 編
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第二十三話 王国へ行こう

「あの、キャミィさん」

「キャミィかキャミィちゃんでいいっすよ」


 今のところ、キャミィに話しかけるのは専らローラだ。

 太ももに向けられたサジの視線に勘づいて、キャミィが男子二人に僅かながら嫌悪を示したためである。


「じゃあキャミィ、あなたの戦闘力っていくつなのかしら」

「戦闘力? 何すかそれ」

「え? スキャンしたことないの?」


 強すぎるキャミィの戦闘力が読み取れないのは仕方ない。

 彼女の自己申告でも聞いてみようと思って尋ねたが、戦闘力とは何だと問われた。

 ローラは戦闘力についての説明をした。

 しかしキャミィは首を横に振った。


「神の碑文に触れてジョブを得たとかスキルを得たとか、姉様に聞かれたら暴れ狂いそうな話っす」


 世界を勝手にRPGにするな! と怒る姉を想像し、キャミィは独り言ち身震いをした。


「ところで何でボクの戦闘力を聞くんすか? スキャンしていいっすよ」

「ええとね、強さがかけ離れていると分からないらしくて。あなたとゴブシムさんの戦闘力が分からないの」


「てかスキャンできないのによく魔物と戦ってたよな……」


 何度も聞こえたドォンという衝突音の正体がキャミィであり、彼女が魔物を倒すために炎を纏っていたことを知ったサジが漏らした。


「パッと見ザコしかいなかったっすからね。無敵モードをイメージしてイフリートやったら、熱いわ止めらんないわ……酷い目に遭ったっす」


 スターを取って敵を蹴散らすイメージだったのに――と言うと元の世界との繋がりを察せられそうなので――とは言わず、キャミィはタハハと笑った。


 サジは彼女から返事があって嬉しそうで、カッツォは羨ましそうだ。


「それだけの力があるならば、世界の頂点に君臨すると言われる魔物にも勝てるのでしょうか?」


 ルケアが呟いた。

 魔族の領域を守護していると思われている三魔像のことだ。

 ちなみに魔族側では悪魔の領域を守護している魔物だと思われている。


「ふむ、かの魔物に近づこうというものはおらず、故にそちらの領域に足を踏み入れる者も無かった。……が、もしかの魔物がいなければ、悪魔だ魔族だと言い合うことも無かったやもしれんな」

「ブダゴルラさん」


 ルケアとブダゴルラは同じことを思い始めたようだ。



「ねえ、僕たちってさ」

「言うなカッツォ」


 ――異界の勇者が魔族との戦いを終わらせる

 あの預言は何だったのか。

 カッツォが虚無感を訴えようとするのをサジが止めた。


「そうよ。私たちだってできることはあるわよ」

「例えば?」

「例えば……」


 ローラは唸った。

 そしてビシッと指を立てた。


「キャミィちゃんとゴブシムさんを、王国に連れて行くとかどうよ! ついでにブダゴルラさんも!」

「ん?」

「む?」

「それがしが、どこへ行くと?」


 名前を挙げられた三人がローラを見る。

 彼女はたじろいたが、開き直って再び言った。


「だから、人……凡人種の国へ行くのよ。そう言うことじゃないの? 魔族との戦いを終結に導くって」


 葛藤はあった。

 英雄は、この世界の主役は自分たちではなかったのかと。

 だがその考えも溜息と共に吐き出すしかなかった。

 ――いつかは至れる頂点と思っていた世界最強を軽々と超え、剰え雑魚扱いする怪物が現れたのでは。


(まいっか。そんなガチに期待されてたわけじゃないし。いやいや、むしろ期待以上に働いちゃう感じ? 人任せだけど、これもクエストのクリア方法の一つみたいな)


 親善大使的な立場で人と魔族の仲介をして、両者の争いを止められればそれで良し。

 元々、互いが想像だけで相手のことを決めつけているから悪いのだし。

 正面切って顔を合わせれば何とでもなるだろう、とローラは思った。


「どうするっすかね、和尚」

「ふむ、凡人種の国とやらにはまだ行ったことがない。ミサがいるならば探さねばなるまい」

「じゃあ決まりっす」


 カッツォたちやブダゴルラが意見を挟む前に、キャミィとゴブシムは決めてしまった。


「あの、いきなり来られては危険ではないでしょうか……ゴブシム様やブダゴルラ様たちは特に」

「和尚なら大丈夫っすよね? いざとなったらテレポートできるんすから」

「え?」


 ルケアの心配も一蹴である。ただ、ルケアは首を傾げた。

 テレポートとは何ですかと。


「は!? ゴブシム様はどこに……きゃっ!」


 キャミィの隣にいたはずのゴブシムが消えた、と思ったら目の前にいた。

 地面を蹴った足跡も、超スピードに伴う風圧も無い。

 透明魔法のように消えて、また透明化を解除したとしか思えない。


「魔法による空間転移ですな。危険から逃げるだけなら、これがあるから拙僧は少なくとも大丈夫。キャミィはそう言いたいのでしょう」

「そ、そうなのですね」


 ルケアは今理解した。

 暴走したキャミィを叩き落とした拳は、ゴブシムの手そのものだったのだ。


 強い魔物を雑魚扱いするキャミィを容易く打ち落とせる、神出鬼没の能力者。

 危険なのは王国の方かもしれない。

 ルケアは故郷の人々が無礼を働かないように、全霊を以て気をつけることを心に誓った。








 カッツォたちはブダゴルラが出立の準備を終えるまで、村洞の人々と過ごした。


 最早魔族や悪魔と言った偏見は無い。

 カッツォやルケアたち王国組だけでも、魔物の氾濫を食い止めたことでそこそこ好感を持たれていた。

 そこへキャミィとゴブシムが加わり、種族の異なる二人をして親子の如き仲睦まじさを見せられては、蟠りを持ち続ける方が愚かだと言う雰囲気になったのだ。


 またキャミィとゴブシムにはその強さをはじめ、他人の思想に幾らかの影響を与えるエネルギーもあった。

 村洞から王国へ向け旅立つ時には、「凡人種によろしく」やら「ここが良い場所だと宣伝してくれ」などの軽口が飛び出してさえいた。








 凡人種の領域へ行くために使う道は、カッツォたちが抜けてきた坑道だ。


「境界の三魔像とか言う奴を倒しちゃえば良かったんじゃないすか?」


 暗い坑道を進む中キャミィが言った。

 陸海空それぞれに一体ずつ、祖父母の祖父母のそのまた祖父母の……とにかく大昔から存在し続ける強大な魔物“境界の三魔像”。

 魔物だし、こうして無理に道を作らねば陸続きの隣にも行けなくしているので、討伐してしまえば良いのではないか。


「それは魅力的な提案だが、迂闊に手を出しては良くないそうなのだ」

「拙僧も旅の途中で聞いたぞ。討伐に失敗して魔物の氾濫を起こされたと」


 ブダゴルラとゴブシムが答えた。

 境界の三魔像が魔物の氾濫を起こせるのは間違いないことらしい。

 ただし、氾濫が三魔像の意思のみが原因で起こるのかは不明なようだ。


「どのみち倒さなきゃいけない気がするんすけど……」

「遠くから見たことがあるが、あれは巨大過ぎ、かつ容易には倒せん強さに思える。魔物の氾濫も起こせるとなれば、万全の備えをした後に挑んだ方が良かろう」

「じゃあやっぱり姉様探すのが先っすね」


 この世界にミサが居ることは、彼女と共にゴブシムを探し、共に転移したキャミィの確信するところである。

 自分とゴブシムにミサが加われば、どんな魔物だろうと寺院の威信にかけて葬れると、キャミィは信じて疑わない。


「姉様、もしかして王国とか言う場所で既に無茶苦茶してないっすかね……和尚、ボクを探知したみたいに姉様の居場所を探れはしないっすか?」

「ううむ、あの時は場所も近く、お主もある程度長く力を振るっておったようだったからのう。ミサがそのような状態になるだろうか」

「……なってたらヤバいっすね。この世界にキレて()()()()ことはあり得ないこともないっすけど」

「早く見つけたいものだな。




「クシュン!」


 この世界の何処かで誰かのくしゃみが響いた。

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