~ここでつむぐは、こいもよう~★
私の家から森を抜けるまでに水色がかった夕暮れは、完全に日が暮れる手前の紫色になっていた。
さすがに明かりがない森の道を歩くにはそろそろ限界だと感じた私は、ロットに声をかけた。
「ねぇ、ロット」
「ん?どうしての?」
「いや。暗くなってきたから、光が欲しくて創っていい?」
「あ…本当だ。ごめん気づかなくて」
ロットは今気づいたと驚いた顔をした。え?こんなに暗いのに気づかないことなんてある?
でもいつもより口数の少ないからこそ、何かを思い悩んでいるのかと知れない。
「謝らなくていいよ」
「ありがとう。今、照らすね」
ロットは言葉通り照らすための行動を開始した。
その場で空中に手を翳し、『光体を』と唱えると、手の平近くに小さな光が集まっていく。
完全に『光の球』となった球体が浮遊するのを確認すると、ロットは手を下げた。
この光の球とかもそうだけど、『○○体』と唱えた後に創った物は、創った高さで浮遊して、創った人が移動をすると魔力に釣られるように付いてくるから、魔力を持った人の中ではランタンを持たなくなった人もいる。私もそう。
転移の魔法何て使わないで、歩いて帰りたい日にランタン持ってなくて暗くなっても、この魔法があれば楽だったし。
…そもそもこの道に街灯つければいいんだけど、手続きとか物の値段結構したし、エルも私もそんなに頻繁に夜帰りなんてなかったから話し合った結果『今はいらない』って結論に至ったんだよね。
……。
「なんだかロットの創ったやつさ、光が青みがかってない?」
「感情面と魔力の質で色が変わるらしいよ。僕はほとんどが寒色系統だったよ」
「ほとんどがってことは何個と作れば緑っぽいのも出てくるってこと?」
「うん」
「へぇ…私は黄色か白しかみたことなかったから、珍しいよ」
「私のも黄色っぽいしね」と私も光の球を創って見せた。
「本当だ」
「2つもあれば明るいし、行けるよ」
「うん。結構歩かせることになっちゃうけど……」
歩かせることに対して申し訳なさそうな言葉をかけてきたので、「これでも足腰には自信あるよ」と軽く返事をしようと思い、声を発しようとした。
けど。
「それまでにちゃんとするから」
「あ…うん」
ロットの表情が真剣な顔つきをして来たため、肯定の言葉しかかけられなかった。
それから暫く。
ロットと私は整備された道がある山の中で歩みを進めていた。
確かに歩くとは聞いていたから疲れとかはないけど、問題なのは場所。
私はこの山の麓には見覚えがあった。何せエルとたまに山菜を取りに来させてもらっている山だから。
『この山には持ち手がいないから、自然を破壊しない程度になら山菜や花、木を取っても良い』という立て札を見てから来ていた山だ。
けど、前よりはお金が生活に余裕が出てきていたため、山菜の苗を買って家の近くで育てはじめてからはほとんどこなくなっていた。
だから、道が出来ていたことも知らなかったし、
「ついたよ」
「・・・」
家が建っていることも知らなかった。
でもその姿は未完成といえる。屋根と床がしっかりと、あるけどまだ一部の壁が造られていなかった。
「この家完成してないんだね」
「うん。僕ひとりで造ってるからね」
「へぇ……。え?ロットが造ってるの?すごい」
「ありがとう。建築に関しては前々から興味もあったんだ」
「こういう木だけで造られた家ってこの辺にないよね」
「だからこそ造ってみたかったんだ。ここには木も多いしね」
「もしかしなくてもロット、ここの土地買ったの?」
「…うん」
じゃあこれからは山菜採り来れないな…あ。
「これがロットの見せたいものだったの?」
でもロットなら完成してから見せてきそう。
「違うよ。この先にあるんだ」
「先って…あのみちの先?」
「うん。そこまでの道も石造りにしてたらこっちの完成が遅れちゃって」
「なるほど」
森の中を突っ切るようにして造られた道の側には花の蕾がいくつか芽生えていた。
…歩いてたし、光の球は地面から距離があって暗く見にくかったから何の花か分からなかった。帰りにでも見させてもらう。
歩いていくうちに到着した場所には石造りの道はなく、くるぶしまでの野草しかなかった。
それに回りに木々もなければ視界を遮るものもない。こういうところの空は――
「綺麗…」
――星が良く見えるんだよね。
あ、だから連れてきたかったのかな?大抵の人は星空好きだし。それにここだけ小山になってて、少し先を見れば街の明かりがキラキラとしてる。
「夜だしね」
「それじゃあ今度こそ、ここだよね?ロットが連れてきたかった場所って」
「うん。……ロマンチックをするには人がいない所が良かったから」
「ロマンチック?」
確か、って意味だよね?確かにこの景色に夜景だとそういう雰囲気がある。
でもそれが必要だったって……
――レイヴンが『恋愛小説みたい』という結論に至る前に、ランスロットから言葉が紡がれた。
「レイヴン。僕は君が好きだ」
「……ぇ」
「多分、レイヴンと初めてあったときから引かれてた」
「……」
――ランスロットはレイヴンの目を見つめ、語りつづけた。
「王宮で再会した時、レイヴンに手を握らせてもらって諦めようと思ったんだよ?僕は王太子だから。
好きな人ができて共になったら、一緒に国を背負うことになるから。
でも僕は王宮での自由のなさを知ってたからレイヴンが好きだっていう気持ちを閉じ込めようと頑張った……でもやっぱり無理だったんだ。
思わないようにすればするほどレイヴンのことを考えた。
だから。だから僕は決心したんだ。そもそも『王太子』という肩書きがあるから、想いを伝えられないのならそれを取り払ってしまおうって」
「?」
「僕はもうすぐ王太子から降りるんた」
――レイヴンはランスロットから受けた告白で心臓をドキドキとさせていたが、今の言葉で彼女の心臓はドクンと大きく脈打った。
「ここまでくる間に、レイヴンに好きな人ができたとしても王太子を降りたことに後悔がないよう、ちゃんと趣味も持ってそれを仕事にいかせるように模索もした。
だから、断ってくれてもいい。
けど、今返事が聞きたい」
――レイヴンはいっそう逸る心臓の音を深呼吸で整えていく。
告白をされた時点で彼女の返答は決まっていた。だからせめてきちんと言葉発したいとおもったのだ。
「私は、」
――しかしレイヴンの声はまるで口を塞がれたように声を発せなる。恐怖で声がでなくなったことはあっても、緊張という経験は少ない。
それでも、と彼女は例え声のメリハリがきちんとしなくても1音1音ハッキリと紡いだ。
「わたしも、ロットがすきです」
――1度言ってしまえばレイヴンは憑き物が落ちたように身体が軽くなり、つまりながらも喋っていく。
「ロット。私ね、ロットが好きだって感じたのは、つり橋効果ってやつが最初なの」
「擬似好意が?」
「うん。でも、今はちゃんとその時のことをなかったことにして、1人の男性として異性としてロットを見たときやっぱり好きだって思ったよ」
「……」
「……」
――2人は同時に恥ずかしくなったのか照れたような表情をした。告白をし、告白を受けたことで『恋』が実ったと自覚したのだ。
それからランスロットが先に照れた表情から微笑みを浮かべ、喋りだした。
「レイヴン」
「なに?」
「僕達はまだ普通の恋愛を知らないよね。育った環境が違いすぎて、特殊すぎて」
「そうだね。私は小さいことから働いてたし、エルと暮らすことが1番優先だった」
「僕は王太子でいずれ国を背負う存在だった。でも、今なら普通に近づけるよ。レイヴン、爵位を返還するんでしょ?」
「知ってたの?」
「ミシュエル君から聞いたよ」
「エルが!?」
「あはは、驚くよね。彼、僕を嫌ってたから」
「そ、そりゃぁね…」
――レイヴンは少し気まずくなる。弟が好きな人を受け入れようとしていることをランスロットはまだ知らないのだから。と。伝えたら驚くだろうかと考えていると彼が次に紡いだ言葉に驚かされることになった。
「レイヴンに告白するにあたって、レイヴンより先に知っておいてもらいたかったからね。その時に色々話したんた」
「エルに、言ったの?」
「うん。どういう想いなのかをきちんと話したよ」
「……」
「レイヴン達は人生をって考えたとき家族が1番に浮かぶ人達だと思ったんた」
「うん。そうだよ」
「だから、振られるにしろ、まずはミシュエル君に話したんだ。納得してほしくて。僕を受け入れてほしくて」
「相当憤慨されたんじゃない?」
「されたよ。でも、誠心誠意伝え続けた。彼の結論は『おねぇちゃんが良いっていうならいいけど、脅すとかしないでよ』だったよ」
「…ということは、エルは…」
――いままで聞き手になっていたレイヴンがすぐに気づいた、ミシュエルが今、どういう心境なのかを。
しかしランスロットはまだ気がついていない。
「どうしたの?」
「私、今日エルにロットが好きなんだって言ったの」
「…そうなの?」
「うん。だからエルは誰よりも先に私達の結論を知っちゃってたんだと思ったら…そのいたたまれなくて」
「後で僕が謝るよ」
「私もかな。あぁ、それとね。エル、ロットに対して前向きに付き合うって言ってたよ」
「なんだか謝ったら睨まれそう」
「すぐには無理だよ」
「そうだね…何故か昔から僕に対しては、辛辣だったからね」
――ミシュエルを想い微笑ましくなり、気持ちがだいぶ収まってきたレイヴンは、1つ気になることをランスロットへと問いかけた。
「ちなみにあの家ってどうしたの?」
「あぁ、あれはもしレイヴンから断られたら僕が住もうと思ってた家だよ」
「…断らなかったら?」
「・・・あはは。考えてなかった。そういえば、ジャルにもそんなこと言われたような…。告白しようと思ってから仕事以外で浮わついてたから…うん。僕、謝る人増えちゃった」
「なら謝るんじゃ暗くなるなら、一緒に言おうか。私とロットが『恋人』になりましたって」
「うん、そうだね」
――レイヴンは恥ずかしげもなく自分達は『恋人』になったのだといつ。
そんな彼女にランスロットは頼もしさ。そして可愛さを感じた。
――そして2人はそっと見つめ向かいあいながら朗らかな笑いに包まれた。
「これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
――ようやく始まった1つの恋の幕開け。
――しかし『愛』になるのにそう時間はかからないだろう。
――2人の祝福を願っている人々は多くおり、早く結ばれてほしいと願っており、せっせと2人を結ばせるために動くことだろう。
――これはレイヴンという少女と、それに関わってきた人々の縁綴った物語。
――その一部である。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
伝えたい全てを書けたわけではありません。
ですが、これも1つの結末として良かったと思っています。
この惑星で起こっているの物語をまた描けたらと思っています。……というわけで。
現在(2020.6.20)連載しています、
『領地を愛する私は』をよろしくお願いいたします!
本当に読んでくれた皆様!ありがとうございました!




