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闇ニ玉散レ百剱  作者: 亜空間会話(以下略)
王歴8年:灰白はやがて黒へ
16/61

5「灰黒」

 タイトル……あっ(察し


 どうぞ……今日は2回更新です。

 見た目もまがまがしくないし、過ごしやすそうなお城だなぁ――とユキノは思った。この城を建てた時代の王はしっかりとした常識があり、賓客に対しての失礼がないようにと美しく作られている。最大の戦功を立てたものが王になるという仕組みは、もともと個人での戦闘能力を考えてのことではなかった。そのため、個人での戦力が増大した現在では王の選定を誤ることもある。


「改装中なのかな……」


 白く美しい城が、右側から黒灰色の石材に置き換わっている。あれでは城でなく監獄のような見た目になってしまうのではないか、と彼女は思ったが、口には出さない。これから行うことの結果いかんによっては、それが事実となりかねないからである。


「トカゲ……準備できてる?」

「ギュウ」


 非常にいやそうな、できるなら今すぐ帰りたいと言わんばかりの声だ。


「行くよ」


 ミズチの背に乗って、彼女は城へ乗り込む。衛兵も駆け寄ってくる魔物どもも、彼女の使う「黒斬」の前では相手にすらならない。魔力眼を使って奥のほうを見ると、明らかに青よりも濃い――藍色の魔力がある。


「いる……ただものじゃない!」


 闇属性魔法を球形に収束し、壁を打ち壊す。




 ――そこには、銀髪碧眼の少年が立っていた。


「よー、お久しぶり……なんだろうけど、顔わっかんねぇや」

「……だれ?」


 あそうそう、浦部ユキノだっけ、と彼は笑う。


「いつも三人でつるんでたけど……? まあ、タルクせんせーからあれこれ聞いたし、まだ出会ってないんだろ?」

「……二人とも、死んだ」


「ありゃ、マジで? なんで」

「あんな体に転生して……心がまともに保てるわけない。あんなにいっぱいモンスターを集めて殺し合いさせて、何が目的だったの?」


 いやいやおれって運営じゃないからさぁ、と少年は笑った。


「細田仁志とか名乗ったとこで、どーせ覚えてないだろうなぁ……。ゴミカスボッチだったし。今のおれの名前はフレグィリエ・メーニス・エトルヴリス……らしーぜ」

「どっちで呼べとか言わないんだね?」


「どっちもおれの名前じゃないしなぁ……。自分が言ったこと覚えてるか? あんな体に転生して、とかさぁ。自分が自分だと思えない(・・・・・・・・)ようなおれにとっちゃ、努力がキッチリ報われるここって天国だぜ?」


 千佳が蜘蛛に転生して精神が崩壊したのは、ここへ来てからの問題だった。しかし、細田と名乗った少年の問題はそれ以前に始まっていたのだ。


「あ、ちょっと自分語りいい? ちっと長ェんだけどさ」

「勝手にどうぞ」


 自分の体になじまない苦労ってどう思うよ……と、彼はしみじみとした口調で言う。


「親が「気合いで何とかする」ってタイプだったんで、何かの障害だったかもしれないのが見落とされてたんじゃねぇかな。ともかくひでェんだよなぁ、男か女かもわからないし人間だって自覚もない」


 心って何なのかな、と彼は言ったが、ユキノが考えたこともない問題である。答えがすぐに出てくるはずもなかった。自分なりの答えがすでにあるのか、少年はそれが独り言であったかのように続ける。


「おれには人間なんて似合わないって思ってたところで、人間やらされるのは間違いないしさぁ……。苦労に苦労、何やっても凡人以下。適性のある分野とかなかったんじゃないかと今は思ってるけど、親は頑張れの一点張りさ、死にたくなるよな」


 立っているのも嫌になったのか、彼は近くにあった椅子に座る。壁の近くにも椅子があったらしく、彼はユキノにも座るよう手で示した。


「あれ、見たか? 光の剣と、でけー木馬」

「見た。あれのせいで――」


「おかげで、だよ……友達が死んだってェならちょっとは言葉を控えたいけどさ、あえてそうしない。生まれ変わったんだ、王子に!! ははは、虫の王子だよ、すっげーだろ? 父さんが虫で、母さんは似たような虫。言われたんだ――生まれ持った役割ってやつを。おれに今までなかったものが、きっちりある……泣いたよ、スゲー泣いた、マジに。だからこの五年、頑張ったんだよ」

「――え?」


 いっけねこの世界の仕組み言うの忘れてた、と彼は悪びれずにつぶやく。


「魂は時空を超える――だとさ。同じものがふたつ同じ場所にあることこそないが、前世が未来であることもあるとか、同時期に死んだから同じ時代へ生まれ変わるわけじゃないとか……」


 ユキノは、言葉もなくそれを聞いた。


「ほんの一瞬でも三人一緒に過ごせたんなら、それだけで奇跡だぜ? 魂がぶっ飛んでったその先で――同じ世界に、同じ時期に、同じ場所にいられたんだからさ」

「わたし……千佳を、殺した」


「ふーん。知らね」

「魂が壊れちゃったからって……」


 じゃあしょうがねえじゃん、と少年はあっけらかんと言う。


「そういうもんなんだよ、魂は。つか死んだ段階でほぼほぼ砕けて、形が残ってるほうが珍しいんだからさ。バラバラ死体見て、ほおずりしながら「まだぬくもりが」とか言っちゃうタイプか? 怖いなおい」


 砕けもするし治りもする、人次第だしもいっかい生まれ変わったかもしれねーじゃん、とさほど気にしてもいないような調子でぼやいている。


「さ、てっととぉ……何年過ごしてきたのか知らねェし、何の目的があってこんなとこへ殴り込みに来たのか知らねーけどさぁ。辺境の王子が魔王にあいさつしに来たその客間に乱入してくるってのはちょっとねー……ちょっとばかし失礼じゃねえの?」

「その気になればすぐ殺せるんだから、やらないだけだけど」


「ほんとにそう思うか? イキってちゃマズいぜ、何の取り柄もねえ美少女さんよ」

「――っ」


 ユキノは、転生する前の自分を思い出す。奇しくも、それは彼の表現した通りのものだった。


「本性さらしてみろ、怖くもなんともねえよ」

『言ったな……ッ』


 闇球――ダーク・ストレージへと化身を解いた彼女は、一撃必殺「黒斬」を彼に向けて飛ばした。しまった、人の姿に向けて、とユキノは思ったが――


「こんなモンか? 噂の「蟲毒荒らし」は」

『トカゲ、どこ行ってるのよ!?』


 いやそうな声を出していたとはいえ、よほどのことがなければ敵前逃亡などしない。勇ましいのは事実だが、あれの実力は青等級に近付くほどなのだ。敵が恐ろしいからといっても、自分をはるかに上回る怪物を目にしたところで動けなくなるかれではない。


『あれはせんせーが確保してる。だからほら、殺し合い(コミュニケーション)しようぜ? 玉の輿ルートもありかもしれねェんだからさ』


 金緑の巨大なカマキリが、化身を解いて現れる。


『親から受け継いだ力だ、ちょっとは期待されてるんだぜ王子として。そいつを破ってみろよ……? 罪が帳消しになる、幸せな暮らしってやつが保証されるかもな?』


 ひたすらに、攻撃を続ける。闇を飛ばし、瞬間移動で後ろに回って切りかかり、避けられたと見るや魔法を三連続で撃ち出す。


『借り物でしょ。親から受け継いだなら好きに使っていいなんて、誰が決めたの』

『あれか、拾った力なんて使わねえってやつか? 考えてみて思ったんだが――体ってのはいったい、誰のモンなんだ?』


 彼が何を言おうとしているのか、ユキノにはさっぱりだ。


『親の言うことは子供に対して少しばかり強制力があるんだろ? だったら親のもんなのか?』

『それは違う……ペットじゃないし』


『自分だけで生きてるわけじゃないってよく言われるよな?』

『誰かが肩代わりする、っていう肩の上で生きてるから。一人暮らしだって、一人じゃない』


 魔法を撃ち、死線を飛ばしながらも冷静な会話を続けている。


『体ってのが誰のモンだか分からなくなったところで、だ――力ってのは誰のものか。そいつだって分からなくなってくるだろ』


 屁理屈で混乱させようとしているのだと考えても、言葉は入ってくる。


『奪ったから自分のものか? 相手の持ってたものだから相手のものか? その奪い合いってのはどこから始まってる? 親子ってのもそうだ。いったいどこからそれが始まったのか、わかりゃしない。考えるだけ無駄なんだよ、そういうのは』

『煙に巻いたってことね』


『お前がバカなだけだろが。時間稼ぎごときにマジになっちまってさ、なに敵の言うこと真に受けてんだ?』

『ううん……こういう人だった気がするから』


 けっ、気持ち悪ぃなと少年は吐き捨てた。


『やってみろよ。お前と同じ、蟲毒から生き残ったんだ。積み上げたものが同じなら、勝敗を分けるのは持ってるものだけだ』


 強いやつは重宝されるぜ、俺みたいにな、と少年は唇を三日月のようにつり上げて、刃をかざすように笑う。


『なんなら復讐が許されるかも……なに、どうした。魔力切れか?』

『く、……はぁ、はぁ、なんで』


 ついでにもひとつ教えてやんよ、と青年は嘲るように言った。


『気能ってのが自然に発動してるスキル、液能はMP減らして発動する特技みてーなもんだって教わった。必殺技みたいなものもあるらしいんだが……まあいいや、それはふつうに液能だろ? おまえ、魔力の使い方ヘタクソすぎんだよ』

『魔力は、なくなったりしない……』


『バァーカ……。アホの極み――死んでも治らねェのな、おれらの平和ボケっつうか、甘え根性……有限に決まってんだろ。おまえはどうせ、自分より強い相手と出会ったことないとかそっちのクチだろ? 藍色等級なら当然かもしれねェけどさ。あーあ時間無駄にしたわー、クッソくだらねえじゃん』


 銀髪碧眼の姿に戻った少年は、目を細める。


「お前じゃ相手にならねェや……。せんせー、こいつどうすんの?」

「人間でいう形はほぼ通用しないのでね……そうだな、力尽きて人の形に戻ったところで四肢を切断しておこうか。――っと、魔王、これは失礼をば」


 壁から出てきたタルクとは対照的に、壊れた扉からいつの間にかのぞいていた男がいた。


「いつからいらっしゃったのです、魔王……お人が悪い」


 人が変わったように丁寧になった青年は、その人物を魔王と呼んだ。


 むりやりそれらしい服に押し込んだ粗暴さと言おうか軽薄さと言おうか、にやにやとだらしなく歪む口元は、どちらかというと端正な顔をまるでそうは思えないものへ変えている。心底楽しくて仕方がないというように、魔王は「ふむふむ、侵入者はそれか」と下品な声で言った。


「なかなか好みだぞ、とくに黒い髪がいい。闇色でもない、つやのある黒だな。若すぎる気もするが、ま、良かろう」

「……どうなされるのです?」


「罰を、――与えねばな? 示しがつかん」


 独房へ入れておけ、といやらしい笑顔を浮かべる魔王に、ユキノは心底軽蔑するような目を向ける。


「承知しました……いつものものを」

「私が持っているよ、ひとつあげよう」


「ありがとうございます、せんせー」


 ユキノは黒いチョーカーのようなものを付けられた。




「せんせー……期待外れだよ、あれ。魔王の資格があるとか言ってたのにさ」

「あれよりもテケリのほうが千倍は強いさ、それは事実なんだ。君との戦いでもう少し伸びてくれると思っていたんだが、……そうそう、君に言ったことだ。覚えているかな?」


「えーっと。ドラゴンの子供として生まれたドラゴンは弱い……だっけ。こっちにもあったなー、そういうの」

「ほう? 聞かせてくれないか?」


「お金持ちの子供に生まれるとさ、浪費が身についてたり苦労せずに育つんだ。するってえと大きくなってもただのカス。自分の生きる分すら稼ぎ出せねェ始末ってわけ」

「そうだね。君はじつにいい生徒だ、よく理解している。ドラゴンへと進化した生物は、そうではない(・・・・・・)動きもできる。ドラゴンとして生まれたものは、それ以上を目指さなくても生きていられる。だから、同じものや格上には苦戦するようになるというわけだ」


「で、おれみたいに力を磨く工夫が必要になる、と……」

「三年間、よく修業したものだ。同じ系統の力を持つものであっても、君にはとても敵わないだろう」


「ごめん、でもちょっと忘れた……もいっかい」

「仕方がないね、君は……。五歳の甘えん坊ということにして、もう一度ていねいに話をしてあげよう。戦いにおいて相性は存在する。当然ながら最下位種が上位種に勝とうとするのは無謀、化身を覚えたから上位種の仲間入りというわけでもない」


「おれ、まだ中位種だもんなぁ」

「あれは下位種なのに進化せず力を増していく怪物だ。あのような例外に勝つのは非常に心強いことなのだが、相手のミスが大きいのでノーカウントにしておこうか。さて戦いにおいて重要なこと……それは、自分の手札を押し通すことだ」


「やっぱ、そうだよね?」

「明確にどうしようもない場合は逃走をおすすめするが、そうでないときは殺すために動くべきだ。相手の弱点を見破ること、相手のスキを見ること、動きの癖などどうしようもないものを見つける……そこへ攻撃を叩き込む」


「攻撃するまでもなかったけど……あれ、弱点あったの?」

「ないね。中心点にコアがあるはずだが、非常に硬い皮膜と半ゴム化した粘液のせいで攻撃はひどく減衰される。まっとうな攻撃で倒すのは難しい」


「痛みとかは……」

「本当はないはずだが、魂の影響を受けるとあることになるかもしれないね。そこのところは例が珍しいために研究は難しいが……。君は協力してくれないだろう、研究材料が揃う機会が多くなればサンプルをとるのもいいかもしれないね」


「うん……。ところでさ、どうなんのあれ」

「魔王がどういう性質を持つか。君にわからない道理はないはずだがね」


「やっぱり、かぁ……」

「結末は遠からず、予想通りになるだろう。似合いのものとは言えないが、因果にとってはあるべき姿へと収まるはずだ」

 ちなみに作者言うところの「チートクソガキ」はこいつじゃないです、こんなのまだまだ。まあ、転生者全体でいえばじゅうぶんヤバい部類だとは思いますけど……初代とチートクソガキ(こいつが二代目)、お迎えお姉さんとか誕生罪判例その2とか、デタラメなのが多すぎる。


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