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頼姫の「ざまぁ」道  作者: 相川イナホ
10/10

妹へ


 何かが計画されたり実行された時に、割を食ってしまう人や物、はずれを引いてしまう者が出てしまうのはよくある事だ。

 だが、旭の行動は姉である私に、はずれを引かせるために行動するという困った性分をしていた。


 同じ父を持ち、同じものを食べて、同じ家臣達に傅かれていても、旭にとって私の存在は面白くない者、つまりは目の上のたんこぶだったらしい。

 今だからわかる事だが。


 私の母は、都の公家筋の姫で、それはそれは雅やかな人物であった。

 その母に対抗心を持っていたのが旭の母親で、その母親の負の感情が、その娘である旭に悪い意味で引き継がれたのは当然のなりゆきであったのかもしれぬ。

 旭も、落ち着いて自分の頭でよく考えれば、それがどんなにつまらなく、自分の人生にマイナスをもたらすものか分かったであろうに。

 


  何人かいる父の子どもの中で、嫡男の兄と次男の陽勝丸以外の子は、おなごゆえ父の関心を得る事が少なかった。その点では父からの扱いは私も旭もそう変わりない。

 旭は父親や母御に認めらたくて仕方なかったのかもしれない。

 愛情の飢餓を感じていたのかもしれぬ。


  

 彼女の母親は父の遠い親戚でかつ有力者の家の血筋だ。

 本来正室に収まるべき存在だった。

  だが父は公家の姫である私の母を正室に据えた。


 旭の母御は武家の家の事をなにも知らない母にでたらめを教えて愉快がるような性質の悪い所があり、私と母の事を見下して悦に入るような事もあったと聞く。


 心身を壊して母が伏せってからは、父もそのような家内の風潮に眉をひそめ、特に正室と側室達との扱いの差を顕著にした。


 母亡きあともその待遇が続いていて旭の母御や旭としてはなお面白くなかったと思う。


 私は公家風を好み、母をなぞって生活していた。それは早く亡くした母を慕うが故の行動だったのだが旭達母娘には、さぞ目障りだっただろう。


 だから、旭が私を疎んでも仕方がなかった面もある。


 でもそれで、あのような所業に出るなどとは、人としてどうかと思う。

 いや人だから、なのかもしれない。人であるゆえに時に合理的でない理不尽な感情に振り回されるのだ。


 「ままならぬものよのぅ」


 おのれがかかえる問題を代償行為で晴らしたとしても何の解決にならないというのに。

 本質は別のところにあるのだ。

 でも、それに目をそらし八つ当たり出来る方にあたってしまう。

 人と自分とを比較し、相手を貶めて自分は浮き上がろうとあがく行為を。

 それを溺れている状態なのだと私は思う。


 溺れて息ができないと必死になり、執着にすがったり依存したり、妹のように気に食わない相手を貶めたり、そんな人間は前世でも今の世でも多くいた。


 私はそんな人間に殺されたくはない。


 すまぬな。旭よ。お主の溺れているその水は旭自身が自ら作り出したものゆえ、私にはどうもできぬ


 だから旭よ。私は私のために戦う。



 「お主がしかけた戦じゃ。

 しかけておいて、そんなつもりはなかったなどとは言わせぬ。」


 この時代の命は軽い。


 こんな争いばかり繰り返していればなおさら、民度は育たない。



 誰もかれも命を大切になんて言わないし言えない。

 自分の命さえ大事にできないのだから。


 何かを学びとり、それを次世代に引き継いで活かす事、そこまで命が続かない。


 「ふふふ、たしかにこの世相をどうにかしようと考えれば、天下統一という考えに行き当たるかもしれぬのぅ。私もとうとう同じ穴のムジナになろうとするのか」


 

 権力の単純に頂点を目指したいものと、このような世相を憂いての行動も同列というのは悩ましい。

 でもそこに義があれば人が集うものなのか。

 それとも甘い汁の出る木に人が群れているだけなのか。


 自分が死にたくない、自分の周りの人々を傷つけたくない、それだけが理由のこれからの行動を

後に人はどう評価するのか。


 「勝てば官軍という言葉もあったな」


 元より負けるつもりは最初からないが。


 「さて、まずは敵を懐柔するとするか」


 私はひとまずのターゲットを尾崎入道が嫡男、現月出の国当主である忠直殿とその正室のお袖の方に決めた。

 



 


 


 


   

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