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28 今更だと思うか?

「随分と懐かしい話だよね。あの計画は失敗だったんだから、今更なにを話すんだい?」


 ジュンは大袈裟に呆れた様子を作り、俺にダメ出しをする。

 窓の外はすでに薄暗くなり、教室に残っているのは俺達だけ。

 秘密の会議を開くには、絶好の状況だった。


「そんなことはねぇよ。俺らは、この計画のために、初めて集まったんだ。ユキエの計画は、確かにダメダメだったけど、俺らは、目的を同じにする仲間関係はできただろ。完全な失敗だったとは言わねえよ」


 俺の言葉に特に感慨もなく、ジュンは「ふ~ん」と気のない返事をした。

 ジュンの生返事を聞きながら、俺の目の端にはマナの姿が写り込んだ。

 前々から、気になっていたことがある。


「そういえば。どうして、ジュンとマヤは偽装パートナーを実行に移さないんだ? お前らなら、偽装パートナーでも支障ないだろうに」


 俺の言葉に、反応を示したのはマヤだった。

 ジュンの方に顔だけを向け、お互い示し合わせたかのように、丁寧な微笑みを返しあった。

 俺の方に向き直ったマヤは、少し真剣な表情をしていた。


「同族嫌悪かな。あと、利害関係が一致したから、今はまだパートナーになるのはやめましょう、ってところ」

「どういう意味だ、それ?」

「あなたとユキエの関係があまりに面白すぎるから、目を話すのは惜しいかなって。パートナーになっちゃうと、一緒にいる時間を増やさなきゃいけなくなるでしょ。せっかく、面白いものを見れるのに、そんなことで減るのはもったいないから、やめましょうって事になったのよ」

「つまり、俺とユキエが変な関係を続けているのを見たくって、二人はパートナーにならないってこと?」

「そんなところ」「大体合ってる」


 二人は同時に、声を発した。

 ……さいですか。


「でも、俺に三角関係を続けていたらマズイ事になるって警告してくれたじゃん。あれは、どうなんだ?」

「退学になったら、元も子もないじゃない。カズキくんが必死な姿も見続けていたいからね」


 マヤは、整った顔立ちで愛らしい微笑みを返してくる。

 確かに、この微妙なSっぽさは、ジュンに似ている。

 

「そろそろ、本題に入ったらどうなんだ。あまり、時間もないぞ」


 腕を組んでいたカサネが、時計を一瞥する。

 俺は頷き同意を示すと、深呼吸をしてひとつ息を整えた。


「恋愛ゲームの必勝法――それは、互いが本気になれる恋人を見つけることだ」


 俺は、自信満々に言い放つ。

 カサネは、一瞬の間を開けて「うんっ?」と、言葉を漏らした。


「カズキ、追い詰められて頭がおかしくなったか? それが、最も自滅に近い道だってことは、お前だって知ってるだろ。実際、そのせいで退学になった人物もいる」

「確かに、そうだ。だが、そうじゃないんだ」

「分けがわからんな。俺とサヤは、その点について、いつも注意している。もし、それがホントなら、俺達が気を使ってきたことは、無駄だったということか?」


 ざっくばらんに、カサネは自分たちが本気であることを暴露した。

 サヤは、大慌てでカサネに食い下がり、「ちょ、ちょ、ちょっ!」と舌を巻きながら真っ赤な顔をしている。

 この二人は、ほんとわかりやすい。

 大丈夫だって、この場には、ユキエはいないんだから。

 俺が哀れみの視線を送ると、何故かサヤは、さも俺が原因であるかのように睨みつけてきた。

 勝手に喋ったのは、カサネなんだから俺のせいじゃねえよ。


「俺らの中で、条件に当てはまる組み合わせは、確かにカサネとサヤだな。だがな、この双子は面倒なことに、授業を入れ替わって受けているなどをしてるせいで、存在が安定しねえんだ。そうだったよな、マヤ?」


 俺は、あえて事実確認をしていない姉の方に、確信を持って話を振る。

 ツインテールを垂らしたマヤは、むっとした表情を作り、乗り出すように顔をサヤに向けた。

 サヤは素早い動きで視線から逃れ、カサネの後ろにそそくさと隠れた。

 マヤは、ひとつため息を付いた。


「カズキくんには、もうバレれちゃってるのね。そう、確かに私達はよく入れ替わってる。休みがちな私の代わりとか、サヤの苦手な授業の交換とかね。それが、どうかしたの?」

「それが原因で、この恋愛ゲームの必勝法を、カサネとサヤは実行できないんだよ。――ところで、カサネ。サヤのために、この学園をやめろと言われたら、お前は素直に辞めれるか?」

「未練がないこともないが、どうしてもと言うならば、仕方ない」


 改めて決意を決めるかのようにカサネは、腕を組みどっしりと構えた。

 カサネに、二言はないだろう。

 

「じゃあ、サヤはどうだ。カサネのために、学園を辞められるか?」

「な、なによ。あたしだって、カサネくんのためなら、辞めてやるわよ!」

「いや、お前には無理だ」

「ちょっ、何かって決めてんのよ!? あたしだってカサネくんへの思いは、ほ、本気なんだからね!」

「でも、お前とマヤは一心同体。絶対に離れるつもりはないんだろ?」

「うっ、そ、それは……」

「それに、すでに自己矛盾を抱えているのに、友達を裏切る云々かんぬん言ってる奴は、失敗するのが目に見えてる」

「そ、そんなこと……」

「じゃあ、ユキエに自分たちの関係をちゃんと伝えられるか?」

「うぐぅ、それはちょっと……」

「つまりは、そういうことだ」


 言いくるめられて下を向くサヤ。

 カサネは、サヤの頭を慰めるように撫でながら、俺に尋ねる。


「どちらか一方が学園を辞めることが、前提のように聞こえるが。そうなのか?」

「その通りだ」


 俺は、躊躇なく言い放つ。

 俺の言葉に、カサネは眉をひそめ、理解し難いといった表情を作った。

 ここぞとばかりに、サヤは俺に食いついてくる。


「おかしいじゃない! 退学になっちゃったら、パートナーにならないでしょ。この学園で、恋人を作るっている条件なのよ!」

「いや、大丈夫だ。この学園で恋人を作るって条件であるからこそ、成り立つ恋愛関係がある」


 カサネは、やはりわからないと、首を大きくかしげた。

 ジュンのやつは、只だまり俺の動向を見つめている。

 サヤ・マヤは、じっと俺の言葉に聞き耳を立てている。

 

「学園が望む純粋で、かつ健全。さらに、学園内で間違いが起こるなんてことは、まずあり得ないという恋愛関係――この学園の事情を知っている退学者との【遠距離恋愛】が、恋愛ゲームの必勝法なんだよ」

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