第九百四十四話
万全な私でもミコさんに勝つのはすごく難しい。
人生初のスカイダイビング中に、同じく人生で初めてダイビングした身内の持つ針に糸を通すチャレンジをするくらい無謀な挑戦だ。
アマテラスさまに稽古をつけてもらっても、ぶっちゃけミコさんのキャリアにはまだまだ足下にも及ばない。
でさ。
それがなんだというのだ。
ミコさんは私の力を用いて、欲望やみんなの夢を自由自在に使える赤髪の私の力に迫れるよう、なんでもしろと構えてくれているのにさ。
これじゃスタートラインにも立ててない。
あの頃の私に戻された気に浸っていちゃあだめ。
昔の自分にさえ申し訳ない。
経験値も記憶もあの頃に戻されたわけじゃない。
体だけ。それも下地はいまの私のまま、リライトされたようなもの。
で?
あの頃の妄想のまま、通用しないというわかりきったことを確かめてなんになるの?
わくわくしない。
それじゃ全然つまらない。
じゃあ、つまるようにしようよ。
具体的には、アップデートしよう!
赤髪の私はしたいことをしまくっていると思った。
姫ちゃんの力を使っちゃう。
私を過去に飛ばしちゃう。
王さまチームの利益にどれほどなるかどうか、それは別。
彼女曰く身内がやられたから、仕返しにすっきりしたい!
それだけの理由で突然転移してきて、好き放題。
された側からしてみればたまったものじゃないけど、これだけは言える。
彼女は生きたいように生きている。
欲望を解釈してみよう。
いまの私がしっくりくる形。それはなにかな? なんだろうな?
難しいことじゃないんだ。
まふゆのねおきのふとんのおかげで、すっきりした!
休んでしゃきっとしたから、切りかえて考えよう。
シンプルにするの。
赤髪の私を軸に、そして私の力を使って攻撃を封じるミコさんを参考に、岡目八目!
いままでの私を捉え直す。
なにがやりたいんだろう。
アンドレは妄想で私を癒やす執事。なんでも言うことを聞いてくれるし、なんでも願いを叶えてくれる。実際のアンドレはとてもそんな大人しめの執事じゃなかったけどね。
タロットはこんな未来があったらいいなと知りたくて覚えた。実際には結構な精度で私の不運の予言ばかり出て、的中しまくった。
卵は悪魔になるための道具。
みんな、その先に繋がってない。
なにがしたいのかわからない。
ううん。本当は理由がある。私はそれを意図的に見ない振りして気づかないように努めていただけ。
ひとりぼっちがいやだからアンドレがいたらいいなと思った。
キラリに敵わないと思ったし天使になれないなら、悪魔になればいいと思った。
それでもダメなら堕天すればいいと思って、実際試したよ。
みんなの圧に負けない私にならないと、学校に行けないから。
行きたい理由がひとつもないのに、家族に心配かけたくないから。
どんなに武装しても、どんなに防具を集めても、どんなにたくさんの設定を考えても、現実への影響力なんて欠片もない。ただのピエロになるだけ。
でもね?
いま考えたら痛くて痛くてしょうがないすべてにだって、欲望は確かにあった。
夢のほうがわかりやすい。
素敵な学校生活を過ごしたい。
その思いを胸に、夢よ現実になれと願って高校生活に向けて付け歯を外してマントを脱いだ。
呟きアカウントを消して、ネットの痕跡を当時の私にできる精一杯のやり方で消した。
過去の自分を精一杯、なかったことにしたんだ。
キラリも話を聞いた限りじゃ私と同じようなやり方で高校生活に挑んだっぽい。
結ちゃんだけだ。東京在住なのに北海道にある北斗に進学して、中学の自分の延長線上で自分を育てようとしたのは。
私とキラリの縁を繋いだ結ちゃんのアプローチだけが真の正解だなんて思わない。
ただ、よっぽど前向きだなって思う。
いまからだって遅くはない。
欲望を繋げてみようよ。
痛さの先にあるよ? 私のしたかったこと。
アンドレは敢えて下ネタしか言わなかっただけで、たぶん私が気づくべきことは言わなかった。
そうだよ。
ぷちたちを呼び寄せただけじゃなく、ミコさんもぷちたちもみんなで一緒に私を受け止めるって示してくれた。
全力でいこう。
ここでこれくらいが限界だって思っちゃう自分の枷を外すんだ。
いきなり全部は無理?
いいの。ひとつずつ外していくよ。
まずは定義から。
「陽を夢とし、陰を欲とする。夢ある前に欲あらば、私は多くの欲にまみれている」
胸に手を当てて深呼吸。
四つの高校が並んだとき、二年生でユウジンくんが飛び抜けて強い理由は明白。
赤髪の私に勝てない理由もそう。
彼は遊ぶように生きている。悪戯心を忘れない。達観しているけど、どこか夢見がち。
ミステリアスな仮面の下で、自由に生きている。
レンちゃんも私も走って隣を目指すけど、彼はそもそも走る気がない。
ただ自由に歩いたり休んだりしているだけだから、私もレンちゃんも翻弄されてしまう。
お姉ちゃんは欲が強すぎる。夢も強すぎる。けど体がまだ追いついていなくて、心も追いついていなくて、溢れる思いを収めきれずに夜ねむたくなっちゃうのだと気づいた。
バランス大事。
いい加減、欲望のターンだ。
「私にはしたいことがやまほどある。したいことばかりで溢れてるんだ。全部はできないし、叶えられない。周囲とぶつかるしたいもあるから、制限してる」
アリーナだけじゃない。全国ツアーだってしたい。
アメリカのジャケット販売に会わせて海外でもライブツアーに挑んでみたい。
アーティストが望んで叶うなら、どれほど多くの人が実現させているか。
会社や高城さん相手にわがままを言う?
連れていってくれないと、売れる曲を作ってくれないとごねる?
めいっぱいの愛情で寄り添ってくれるツバキちゃんに、泣ける歌詞を書いてよってつっぱねる?
どれもちがう。それは私のしたいことじゃない。
したいことと実現するまでの間には距離がある。
当然だ。
大事なのは、どうやって目的地に辿り着くか考えること。
たとえば番組でやりたい企画がやまほどあるよ?
だけど私はマドカほど真面目に勉強できてなくて、焼き直した企画ばかりで止まっちゃう。その先に進められてない。それじゃあしたいっていう気持ち止まりだ。
行動に繋がらなきゃ、実現性はない。
思いついて、私なりに考えて伝える。それも行動には違いない。
けれどみんなが受け止められるラインに届かなきゃ、小さな一歩止まり。
歩き続けなきゃたどり着けない。
真っ正直に歩くだけが道じゃないよ。
マドカと相談するとか、やりようはある。
番組の企画会議を通じて一生懸命学ぶのも大事。
肩肘はってもさ。やたら長い道だろうと無謀に挑んで、結局つかれて諦めるんじゃしょうがない。
疲れないように歩く体力作りは、楽しむことが手っ取り早い派。
休むのも大事。
着実にできることじゃないと、なかなか続かないもんね。
中学時代、三年間貫いたあの頃の私のアップデートを私はろくにしてない。
すこし時間が経つと、もう気力が湧かない。なにせ痛い思い出と直結してるから。
そうやって理由をつけて逃げる理由にも、なにかしたいという種が眠ってる。
いまのままじゃ客観的に見ているようで、痛がるばかりで大事にできてない。
それじゃあ――……そんなんじゃあ、私のぷちなのに、名前をつけたばかりなのに、きちんと呼んで大事に寄り添ってくれているミコさんに届くわけがない。
なら、届けようよ。
痛い思い出と向きあわなきゃなんて思い込む必要すらないんだ。
したいと思えるときまでそっとしておいていい。
痛い部分にだって、実は目を向けなきゃいけないわけでもないの。
あの頃の欲望はシンプル。
「でも、敢えて言おう!」
胸を張れ。
ださくていいから。かっこわるくていいから。
「仲間が欲しい!」
卵に変えて取り込んだ黒いモヤが影から噴き出て、ひとり、またひとり、アンドレが地面から生えてくる。
そう。
あの頃さ。
仲間が欲しかったんだよ。
怯まずに自分の意見を言うことができないから、味方になってくれる仲間が欲しかったの。
ださいなあ。
我ながら、すっごください。
キラリひとりで怯むのに十分なのに、気の強そうな、口がめっちゃ悪くて切れ味鋭い罵声を思いつく天才がふたりも横にいたらさ。
小学校時代もろくに友達のいなかった私には、そりゃあもう。
ラスボスが三人並んでいるようにしか見えなかった。
ほんと、ださい。
胸を張って言えなくて。
怯えながら、作りたての貧弱なキャラの皮をかぶってバッシングすることしかできなかった。
下手くそだ。生き方も、意地の張り方もなにもかも。
完璧じゃないから目指す。そんなのないから、理想をゴールに変えて走りだす。
それじゃあいつまでたっても終わらないマラソンにしかならなくて、くたびれるほど走れなくなる。あるいは、迷走してコースから外れて延々と変なところを走り続けたり、穴にはまったりして大事故に。
あの頃の私は事故ってばかりだ。
でもさ。
そういう瞬間にすら立ち会ってくれて、笑い合える仲間が欲しかった。
あの頃は、誰かに嫌われるのが怖くて勇気が持てなかった。
結ちゃんに向き合えなかったのも、怖かったから。
気を遣わせているだけのピエロだって気づくのも、結ちゃんを傷つけたと思って傷つくのもいやだった。怖くてしょうがなかった。傷つけたくなかったし、それ以上に傷つきたくなかったんだ。
なのにさ。
仲間が欲しくて欲しくてしょうがなかったんだ。
結局、そこなんだよね。
私はひとりがいや。
みんなといたい。
「仮面を外せ! 我が眷属たちよ!」
吠えろ。誰でもない概念を、私の大事な仲間に変えてみせろ。
赤髪の私は血を弾丸に変えて持ち歩いていた。
私にだって、私なりの弾丸がある。
しょうもない思い出も喧嘩した思い出さえも全部ひっくるめた、みんなとの記憶。
なにより、そのときどきに体感した欲望すべてが私の弾丸。
執事服のまま、アンドレの仮面を――……鹿の頭を外していく。
増殖する仲間の顔は、さっきミコさんが金色で変えたようにギンだし、トモだし、ノンちゃんだし。要するにクラスメイトや大事な身内ばかりだ。
夢だけじゃない。
欲望もある。
みんなとずっと一緒にいたい。
そうとも。
私はずっと、仲間が欲しかった。
これからも抱き続ける。この欲望は尽きることはない。
たとえ倒されようと、浄化されようと、私の思いは消せやしない。
なぜか?
単純だよ!
消されたくないから!
一緒にいたいから! それだけだ。
私の場合、ややこしいことを考えるほど隔離世の真理が遠ざかる。
すくなくともいまはそういうターン。
だからさ?
欲望のままに突っ走ってみよう。
アップデートするの!
「天使になるよ! キラリに決めた!」
ぐっと両手を握りしめて、身を屈める。
それから思いきり万歳して構えるの。
キラリの姿をした執事が私の背中に飛び込んで、そのまま私の衣装に吸いこまれるんだ。
身体中から溢れ出す、星のエフェクト。
いつもなら金色だけど、いまは星。
マドカと似て非なるやり方で、私なりにやるのだ!
獣耳も尻尾も猫に変化! 数だけは九本のままだけどね!
「霊衣変化!」
黒いタイトな衣装に星がいくつも浮かぶ。
きらきら瞬いて輝くドレスに早変わり。
地面をつま先で蹴った。触れるたんびに星が出るの。
キラリはもっとたくさんアピールしてほしい。
私はもっと見たい。
キラリがやらないなら、私がやっちゃう!
一緒に戦ってみたかったんだ!
「いくよ!」
右手を後ろに、左手を前に突きだして踏みこむ。
ヒナタが再び口を開こうとするけれど、
「スピードスター!」
叫べ。大好きなゲームのモンスターに呼びかけるように。
同じ技じゃなくていい。むしろ私のしたいイメージに合わせちゃっていい。
右手を前に突きだす動きに連動して、袖口に描かれた星が巨大化しながら飛んでくる。
掴んで飛び出せ。
ヒナタがくりだす毛布じゃ捉えきれないほどの速度で星を移動させる。
しがみつくだけじゃもったいない。私の大好きなピンクの悪魔はどうしてた?
そう! 乗っていたよ!
「いくぜ、波乗り!」
巨大化した星に乗っかれ。
それだけじゃ足りないから、星からやまほど小さな星を出しちゃえ。
ヒナタが一生懸命、呪文を唱える。
やまほどの毛布が出てくるし、モアが必死に星を吸いこんでいるけどね?
それくらいじゃ私は捕まらないよ!
あの頃の痛さの根っこにある、痛みに隠れた欲望を引きずり出せ。
ぜんぶ丸ごと救っちゃえ。
楽しい欲望に塗りかえちゃおう。
したいこと、やまほどあるでしょ?
叶えようよ! もうなんでもやっちゃおう!
「いけ! きらりぼしりゅうせいぐん!」
叫びながら、巨大星からこぼれる星をミコさんに向ける。
モアが咳き込んだ。
ヒナタがひえって身構える。
ユメがどうするんの!? とミコさんを見た。
私に不安はなかったよ?
期待してたんだ。
ミコさんが示してくれる私の可能性は、これくらいじゃ怯まないって。
「いらっしゃい、サキ!」
「あいあいおー!」
空を飛び回る星の私に向けたミコさんの手のひらに、新たなぷちが召喚された。
歌うの大好き。見た目に気を遣うぷち、サキちゃんが私の必殺技を見上げてにやっと笑う。
「その星ぜんぶ私を咲き誇らせる決意に変えるよ!」
ちっちゃな体で思いきり全力の右ストレートを放つ。
特別な波動が出たり、星に当たったりしない。空を切るぷちの渾身の右は、空振り。
一見すれば。
でも、そこは私のぷち!
私の流星群がすべて、金色に散らされてしまう。
降り注ぐ結果は変わらず。しかし攻撃は癒やしに変換された。
息切れしていたモアの呼吸が落ちつく。
呪文を唱えていっぱいいっぱいだったヒナタの顔色もよくなる。
敵意すべて、癒やしに変えちゃう最強の変換技。
びっくりするほどのポジティブパワー!
たまらないなあ! もう!
ミコさんが挑むように私を見ていた。
まだまだやれるでしょ? っていうメッセージだけじゃない。
アップデートする気になった? っていう煽りだ。
なりました! めちゃめちゃなりましたよ!
それはぷちたちとの接し方だけじゃない。元の私の戦い方だけでもない。
いまの状態に対しても同じこと!
流星群がダメだった? 問題なし! アップデート対象が増えた? 楽しみが増えたからむしろありがてえです!
キラリでしてみたいことトップスリーのうち、戦闘で使えることはひとまず一個試したし、固執せずにじゃんじゃんいこう!
「そりゃっ!」
星から飛んだ。
背中を貫く軌道に操り、衣装で吸い取る。
星が弾けて元のノーマルモードへ。
当然、すぐに切りかえるよ?
「ノンちゃんモード!」
地面にいるギンの執事が刀にノンちゃんを乗せて、思いきりふるって飛ばすんだ。
私の落ちる軌道にぴったり合わせるくらいはお手の物。
衝突と同時に衣装チェンジ!
両手を肘まで、両足は膝まで覆うガントレットとレッグアーマーを装着。
それだけじゃもったいないよね?
マフラーつけちゃおう!
「スターロード!」
キラリの力が消えたわけじゃない。
星は胸にあるんだ。キラリはもっとワガママになっていい。
私はなるよ? いまもうわがままの極致!
足を踏み出す。空中を落下するだけじゃない。足場に星を浮かべて蹴って加速する。
刀鍛冶の力は自由自在に物を作れるんでしょ?
だったら、やってみたいことがあるの!
「いくよっ!」
右手を引いた。握りしめる。
拳で放つ必殺技は、それこそちっちゃな頃からやまほど見てきた。
お父さんが涙するほど夢中になってた、ご長寿アニメシリーズのプラモデルのアニメあたりが私のお気に入り。
加速しながら振り下ろせ。
「なんかつよそうに光るぱんち!」
右のガントレットが輝く。どんどん巨大化する。
ばかじゃないのっていうくらいの勢いで膨らむ拳を振り下ろせ。
「ノゾミ」
「ん!」
ミコさんが短く名前を呼んだのは、ゲーム部屋に残っていた紫髪のぷち。
マイペースな子だ。ぽやっとしたところもある。なのにたまにすごくわがままになる。
可愛い子。自分の気持ちを素直に言える子。
彼女は私の巨大な拳を見ても動じない。
むしろ愉快そうに笑ってみせた。
「受け止められるくらいにもどっちゃえ!」
はっきりと、そう言った。
ノゾミは間違いなく、戻れと命じた。
事実、私の巨大化ガントレットがちっちゃくなっていく。
それだけじゃない。
右手のガントレットだけが、完全に消失した。
まるでそもそも存在していなかったかのように。右のガントレットだけが、生み出す過程を逆再生したように消えたのだ。
当然、巨大化した拳で一撃を与えるイメージで体を動かしていたから、ガントレットが消えるとバランスが崩れちゃう。
「んんっ!」
なんなら濁点つける勢いで唸りながらも、必死に星をイメージして真横から無理矢理軌道を変えて逃げた。
体がぐっと星に押しつけられて潰れそうです!
ううん! だめだった!
でも理解した!
間違いなくノゾミちゃんは、あの紫ぷちは姫ちゃんの魂と繋がるぷちだった!
ミコさんにはわかってた。
理解して、見せてくれている。それにぷちたちみんなに見せ場をくれている。
ありがてえなあ! そしてあれ、私もできるようになりたい! なるぞ! 絶対なってやるのです!
「まだまだ、手持ちはある。みんながいる。やりたいことは盛りだくさん」
なにせ。
「――……ずっと、私は何かになりたかった。素敵な何かに、ずっと憧れていた」
呟かずにはいられない。
これほどあがるバトルができるならさ。
「いつか諦めた。ああ、こういう風にはなれないんだなあって。諦めが卑屈に変わって、それに負けたくなくて意地でも我を通そうとして、私は不器用に外してばっかりだった」
そこでうまくやれてたら、それはそれで愉快で歪な人生だったかも。
たらればだね。さておこうよ。それは!
「いまならわかる。なっただけじゃ足りないんだ。したいことがたくさんあるよ」
マドカは優しい。それに理解したくてコピーしてる。
そこが私と圧倒的に違う。
私は試したい。
人の資質も、自分の可能性に取り込んで、自分になにができるのか試さずにはいられない。
キラリの名字に負けない天使そのものな容姿やオーラに打ちのめされて迷走したけれど。
音楽ショップに営業活動に行ったときに初めて理華ちゃんと会ったときにね? 理華ちゃんは私のメイクを完コピしてた。なんなら理華ちゃんに合うようにアレンジされてた。
でも、それじゃあもったいないくらい理華ちゃんに輝く何かを私は見た。
あの子に言ったんだ。
誰かにはなれないし、なる必要もないよって。
あれは本音だし、本心だし、欲望と夢の詰まった願いであり祈りそのものだった。
だから私の習性もアップデートしちゃおう。
あの頃、足りない物を見つけて凹んで痛さに喘いでいた私の手を引っ張れるようにさ。
「私にはやりたいことがある!」
キラリの輝きを使ってやりたいこと。
ノンちゃんの力を使ってやりたいこと。
そういう上っ面じゃないものが、一番の肝。
「私をアップデートするの!」
それだけ。
終わりのない行為にしたら、満たされなくて苦しんじゃうかも?
ううん。そんなことないんだ。
別に大層な話じゃないの。
「刺激的で愉快な人生にしたいから!」
胸を張れ。
ださくても、くさくても、あほらしくてもいい。
いっそばかばかしいくらいがちょうどいい。
「めいっぱい、あほをやるよ!」
大会に参加する選手は日々の鍛錬はもちろんのこと、鍛錬に関わるもの、時間、すべてに関連する人々との輪の中で得たものを用いて試合に臨む。
別にね? そういう舞台に限らなくてさ。
コンビニで買えるおにぎりひとつに、いったいどれほどの人が関わっているんだろうっていう話ね?
なにげないものに、語られない物語がやまほどある。
私自身にさえ見つけられてないものもたくさん。
それに浪漫を感じるかどうかはその人の自由。
私はそれが楽しいときは、味わいたい。
そして、どうせなら笑ってたいからさ?
「出でよ、ハリセン!」
ノンちゃんがこないだ授業でお披露目したと噂のハリセンギア!
さっそく試してみちゃおう!
私なりのアレンジ、ばりばりいれちゃうけどね!
なにせアレンジしないと、ノゾミにまた消されちゃうからさ。
まだ呼び出されていないぷちたちもいる。
すべて試さなきゃあ、私は今日を後悔で終えることになる!
それはごめんだからね!
「第二ラウンド、いきますよ!」
宣言していくよ!
ぷちたちが見ているの。
大事なぷちたちに見せるなら、私は全力で楽しんでいる姿がいい。
それは欲望であり、同時に夢そのものだ。
止めてもだめだよ? 続けちゃうから!
つづく!




