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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第七十二章 奪い汚す生者たち
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第八百四十七話

 



 後輩が動いている。

 表の主役が誰かは言うまでもない。

 並木小楠を生徒会長にした子。青澄春灯。明日のために今日という日を準備に費やす子。

 人間誰もが自分が主人公? だったらもうすこし、話は楽だった。

 排除されて排除しにかかる。人間の当然の心理だとも思う。

 教授が表か裏か、いずれにせよどちらかからアプローチして青澄春灯を害し、尊厳を冒そうとしている。止めなければならない。

 そのため表も裏も現在、立沢理華の指示を軸に展開中。

 だからって、たったひとりの考えに全員が従うほど単純でもない。プライドを反発に利用する奴もいるのだし、彼らを批判もできない。そんな心理を読んでいるのだろう。


『最善手を模索して自由に調整しちゃってください。大事な部分が外れなければいいので』


 なんて送ってくるあたり、立沢は譲歩している。

 あと、もうひとつ言うと……ゆるい。作戦がばがば。

 だいたいなんだ。教授に操られた人の密度が濃い場所を探り出す。教授の反応を探りつつ、アリーナの警護をより強化。とにかく教授を迅速に捕まえて術をかけるって。

 アバウトにも程がある。

 ちなみに詳細を記述したメッセージは、文章はまとまっていたものの、そもそも長すぎたので見ていない。なにせ自分は仕事中なので、シオリにチェックをお願いした。彼女も稽古場から作戦に参加しているけど、これくらいは片手間にできちゃうたち。得意分野で分担しているだけ。

 さっさと済ませて新都心駅に移動しながらも、スマホをタップしまくる。

 状況の推移は激しいが、表向きには大きな進展はない。

 沢城を中心とした遊撃部隊が現世にて個別に教授に操られた人々を探っているというが、だいぶ手荒な方法を選んでいるようだ。

 愛生先輩や誰かが陣頭指揮を執ってくれているんじゃないのか?

 まったく。

 先生方がいなくなると、途端にこれだ。

 春灯たち金光星の三名がいない状況下で制御役が出てこないと暴走する。

 昨日までの間に何度か明坂ミコに釘を刺されていた。もっとも真に受けてはいない。彼女は今回の作戦前に立沢に指示を出したと立沢本人から聞いた。

 いやあなた、唆す側でしょうよと言ってやりたい。言ってやりたかったのに、これじゃあ言い返せない。きっと次に会ったときにどや顔されるに違いない……。


「北斗め……」


 四校は基本的に協力体制を取るのが筋。なにせそもそも日本の高等学校で育成体勢を整えているのがたったの四校しかないのだ。だからこそライバルとして敵視するのではなく、ライバル同士お互いを高め合うのが筋だろう。それこそが四校の校長や生徒会長たちがイベントの際にたびたび言ってきたメッセージであり、姿勢だった。

 なのだが、しかし。しかしである。

 星蘭と山都の生徒が昨日ちゃっかり参加していた。

 特に緊密な接触はなかったが、それでも軽く挨拶はしたし、そのときに軽めのマウント合戦も行なわれた。

 いわく星蘭はそもそも邪のレベルが他の地域に比べて高いから生徒の霊力も御霊とのシンクロ率も高い。いわく山都は海外から訪問する隔離世関係者が多いため、対隔離世能力者との戦闘経験が豊富である。いわく北斗は隔離世に満ちる霊子が本州や四国、九州とは比べものにならず、そもそもの戦闘の格が違う。

 まだまだある。

 いろんな角度で、それぞれの生徒会長がそれぞれに「うちの学校のここがすごい」と語るのだ。至極面倒なことこの上ないのだが、しかし戦闘など国語数学理科社会と同じくらい基本中の基本の四校の生徒会長たちだ。勝つか負けるかでいったら、勝ちたい連中の集まりなのだ。そして私もその一員なのである。

 言ったさ。言ってやったさ。

 うちの学校はそもそも設備が違うのだと。芸能界とのパイプも明坂一強の北斗とは違うのだと。解決してきた事件の大きさが違うのだと。

 言いながら気づいたさ。

 これ、言えば言うほど虚勢を張っているようにしか思えなくて空しいなって。

 だんだん凹んできた私に三名がそろって「ドッキリ大成功」ってフリップを出した瞬間に顔を覆ったね。赤面したね。なんなら半泣きだったね。

 彼らからしてみると士道誠心は住良木の肝いりすぎてお金もなにもかもかかっているわりに、士道誠心らしい特殊さが薄いのではないかというのだ。

 言われてしまうのもしょうがない。

 参席していた星蘭の安倍ユウジンが「せやから宝島が必要なんやろう?」と呼びかけてきた。

 ぐうの音も出なかったし、当然のようにその場にいた明坂ミコに鼻で笑われてしまった。

 はっきり言う。

 屈辱だった。

 おのれ三校、許すまじ。いつか見てろ。どでかいことをしてやるからなと誓った。

 なのに、電車の中で新規メッセージが来て、思わず項垂れた。


「なんでなの?」


 立沢からのメッセージにはしれっとこう書いてあるのだ。


『教授を女の子にしちゃって、さらに肉体から出られないようにすれば、さすがの教授も慌てるのでは?』

『というわけで、うちのクラスメイト岡田くんの提案を受けて、みんなで教授の霊子を片っ端から女体化の種にしてしまってはどうでしょう』

『具体案はこちら!』


 スクロールしたくないなあ。


「なんで、うちの学校は若干汚れなの?」


 春灯のノリと勢いがアホなのは、それはもう正直諦めている。

 心の底から諦めている。

 自分が卒業した翌年、青澄春灯が三年生になったときにはうちの学校は大層アホになるのは目に見えている。

 卒業しちゃうから、あとはもうどうとでもなれと思うし。住良木レオや月見島タツキをはじめ、シリアス枠で頼りになる子がいるから、アホをやらかしても最悪のケースにはなるまいと信じてもいる。

 だが。だがしかし。しかし待て。


「誰が得をするの? そもそもだいぶ侵害してない? それ」


 ツッコミがやまほど浮かぶが、しかしなるほど確かに、あの男にこれほど効果的な嫌がらせもあるまいとも思う。

 春灯を誘拐して実行した教授の拷問の内容は吐き気を催すくらいじゃ済まないほど、生理的に嫌悪感を抱かずにはいられない行為だらけだった。

 彼は属性を理由に虐げることを好むタイプだ。

 そしてその属性には、まあなんと世の中でこれほど揉めそうな話題もないだろうっていうくらいわかりやすい、女性が含まれている。

 極めて前時代的。それも彼の場合は、大昔から単純に引きずっていまに至るだけなのだろう。

 春灯に黒い御珠を押しつけて救えよとのたまった、あの男は女に囚われすぎている。

 なによりも、教授が出した怪異のありようだ。

 並べればきりがないくらいえげつない単語が、彼にはよく似合いそうだ。

 なにせ蛇と女体と骨と男根のモチーフの組み合わせなのだから。

 分析すればきりがないし、プロファイラーの資格などないから正確さには難があるだろうが、それでも推察せずにはいられない。母親との関係性とか、これまで彼が出会った女性との関係性とかに問題があったのではないかと。

 で?

 エロやグロや猟奇、サスペンスかホラーが似合いそうな犯罪者を相手に、なに? 女体化?


「なんでそうなっちゃうの?」


 誰か止めろ。そう思うのに、メッセージの流れが途端にめちゃめちゃ速くなった。

 主にルルコ先輩が乗り気だ。


『やっぱり嫌がらせってだけじゃなく、いろいろ体感して欲しいよね。あなたがこれまでしてきたことがなんなのかって痛感できるようなの?』

『でもどうせやるなら可愛いのがいいよなあ』

『後悔すればいいよね』


 止まらない。あの人、止まらない。


『どうするんだよ、教授がそっちに目覚めたら。きもさが増さないか?』


 愛生先輩が反撃に出る。そうだそうだ。止めてくれ。この流れはどうかしてる。

 また三校からちくちく言われてしまうじゃないか。

 士道誠心だけじゃなく、星蘭も山都も北斗すらも宝島へのパスポート変わりの門を繋いだのに。ぜったい近いうちに顔を合わせるのに。

 やめて。女体化はよくない。そもそもニッチじゃないのか。それは。シオリから聞いて、男性が女性になるものだと教えてもらっているから私は知っているけれど。私の親の世代が若かった頃には、水とお湯で性別が変わる主人公のラブコメがあったそうだけど。

 また色物扱いされる。オチ要員に使われる! それはごめんだ! 止まれ!


『それはそれでおいしくない? 葛藤が増えるわけでしょー? 自分は大罪人なのに! しかもおじさんなのに! 体はもう可愛い女の子なの! でもって、竿役はさ!?』


 竿役とかいうな。


『いわゆる、そういう壁すら乗りこえて初めて愛を教えてあげられるすごい奴なの! これってもはやド鉄板じゃない!?』

『それまさか……いまやってる夏の薄い本のネタ?』

『スポーツもののカップル女体化もいいかなって思ってたところなの!』

『あー……』


 やばい! 愛生先輩がオタクネタっぽい話でルルコ先輩に流され始めている!


『ガワが可愛くなっちゃえばなんとでもなるよ!』


 いやいやいやいや。

 それはない。

 元が教授だと知っている勢ほど、それはない。ないって。絶対。あり得ないってば。

 ちなみに振りじゃない。ほんとに。ないよ。ないよね? ないはずだよね?


『俄然、乗り気になってきた! 教授に操られている人を一時的に女体化しながら突き進むとか?』

『いや、男性だけじゃない――……あれ? どうだっけ? シオリ?』

『操られているのは徹底的に男性だけですね。だから、いけるんじゃないですか? 倫理はいったんさておいて……コンプライアンス? いったん脇においちゃって』


 いやいやいやいやいや。

 置かないで?

 今度会ったときにいじられるの私なんだから! やめて!? 止めて!


『やっちゃいましょう。理科ちゃんから連絡あり。岡田くんが女体化できる魔法を使えるそうです』


 岡田ァ!


『光葉先輩が合流。魔法の仕組みを現在、刀鍛冶全員に共有中です』


 待って! 嘘でしょ!? やめて!?

 士道誠心の刀鍛冶は人類を強制的に女の子に変えられるとか、なんの冗談!?

 悪い夢だ。そうに違いない。嘘だ。ばかな。


『なお光葉先輩曰く、刀鍛冶の使う術だとせいぜい呪いを解除して一時的に女の子にしちゃうだけで、教授の呪いの霊子が切れたら元の姿に戻るそうです』

『ただし、教授の場合は霊力そのものに作用するので永遠の美少女にするそうですよ』


 なにそれ。なにそれ!


『やっちゃいましょう』

『『『 おーっ! 』』』


 やばい。みんなが乗り気で答えてる!

 嘘だ。嘘だと言って。誰か止めて。なんで止めないの?

 ノリと勢いに乗っかっている!

 悪ふざけが加速していく! もう止められない!

 そんなばかな。

 私の代まではせめて、せめて究極のアホとか、悪ふざけは止めようと思ったのに。

 一瞬だけ画面が切りかわる。ラビからの通話だ。けれどすぐに切れた。

 なんだと思ったら、メッセージが飛んできた。


『やあ、小楠ちゃん。こいつは楽しいことになってきたね!』

『指揮だけがトップの仕事じゃない! むしろ責任を取るのが本懐! いやあ、生徒会長すごいね! がんばれ!』


 いらっとさせること言いやがって!


『山岡さんに相談して、さっそく帝都さんに打診しておいたよ?』

『炎上する未来しか見えないから却下だって怒られちゃった』


 当然だろ!

 大問題にしかならないだろう!

 現世でどうしてライブ前にそんな大騒動を起こそうと思えるのか!

 しかも内容がアホすぎて、私はどうやって対処すればいいのかわからないんだけど……っ!


 ◆


 顔が引きつらなかったといったら、嘘になる。

 ユニス・スチュワートは魔法使いだ。それも魔法使いも魔女も、なんなら錬金術師も加わる魔法使い協会からお墨付きをもらうほど、最強の魔法使いでもある。

 御霊はマーリン。万能の魔道書として顕現したオーパーツには、すべての魔法が記されている。

 となれば当然、加わっている作戦に利用されるという魔法についても把握はしている。

 しているが、しかし。


「――……なんで?」


 南先輩伝いにコマチから渡された衣装が、これまた解せない。

 ぴったりしたレオタードにスカートつきの衣装。ふんわりレースのパニエなのに、センターががっつり開いている意味がわからない。

 二の腕や太ももにつけるリングにいったいなんの意味が?

 私がこれを着る必要性とは?


「あ、あの。魔法少女? が、一時的に、さいたまを、かわいーくするの。ね?」


 いや。コマチ。ね? って言われても。


「いいじゃねえか。ミナトの野郎もいねえんだ。ツンツンしてねえでさっさと頼むわ」


 トラジ、なに言ってんの?


「待ちなさいっての。私が着替えて、刀鍛冶を率いて魔法をかけて? で、教授が呪ったおじさんたちを揃って女の子にしていくって?」

「愉快じゃねえか」

「今日のニュースで私は一生もののネタを背負うことになるんだけど!?」

「だから仮面も用意してるんだとさ。なあ、コマチ」


 はいこれと差し出された仮面は、舞踏会に行くときにつけるようなものでもない。

 眼鏡だ。どう見ても眼鏡だ。眼鏡以外のなにものでもなかった。


「……え。マ?」

「マジで」

「眼鏡かけたらばれないとでも?」

「よく見ろ。衣装にフードついてっから」

「……は?」


 お前マジでなにいってんの? とガチギレ寸前なのだけど、コマチからあんまりにも押しつけられるので衣装も眼鏡も受けとってチェックする。

 なるほどたしかに、レオタードの首裏にフードがついていた。ネコミミフードだ。

 地味にフードの裏地、耳の部分に穴がついているあたり、これは刀鍛冶たちの作品なのだろう。誰だ。ぱっと見の時点で採寸が合いすぎている。女子か? 女子なのか?


「南先輩デザインなんだそうだ」


 フードがついているのに背中が露出するデザインで、なにが絶望ってブラつけたら紐が見えるところだ。ご丁寧にパッドがついているのが憎らしい。

 なんでやねん。首裏でつける布地といい、背中側のデザインなんでやねん。

 レオタードの食い込みもけっこうえげつないんだけど。

 なんで?


「コマチ、ユニスが固まっている間に頼むわ。つかリョータ! お前黙ってんじゃねえよ!」

「トラジ黙って、キラリが舞台にいるみたいなんだ。声が聞こえる!」

「あのなあ……アリスもミナトもいねえし、キラリもいねえの。しっかりしろよ」


 はいいこうねーと腕を取るコマチに引っぱられて、女子トイレに連行されて気がついたら着替えが済んでいた――……なんてわけには当然いかせない。

 ぎゃあぎゃあ叫ぶし抵抗したけど、コマチの押しの強さに根負けしたし、鏡を見るまでもなく「今日のことはすぐに忘れよう」と決意した。

 眼鏡をかけるだけじゃなく、長い金髪をなるべくまとめてフードの内側に隠す。なんならヘアスプレーで前髪もセットした。なんとしてでも雰囲気を変えたい。


「毛の手入れ、しなくて済むの、いいね」

「コマチお願い。格好について触れないで」


 あとほんとそれな。


「ええい! さっさと済ませればいいんでしょ! というかアリスはどこへ!?」

「暁先輩と一緒に出ていっちゃった。見てなかった……の?」


 え、嘘でしょみたいに口元を手で覆い隠しながら表情つくって引かないでほしい。


「ミナトくんがいないと、だめだね。ユニス、怒るだけ。さみしいの?」

「はああ!? さみしくなんかねえし!」

「ユニスがきつい相手、いつだって好きな人だけ」

「そんなことねえし!?」

「あるよね」


 にこにこしながら腕をがしっと掴んで引っぱるコマチには勝てない。


「準備できたよー」


 できてないよ!?


「魔法少女ユニスちゃんはいりまーす!」


 どこへ!? どこへ入るの!? 現場なの!?


「ユニスちゃんに杖の贈呈でーす!」


 いつものおどおどはどこへやら。コマチのノリノリの煽りにいそいそと馴染みのない女の子が巨大な杖を持ってきた。

 木製のロッドならイギリスの協会で見かけたことがある。

 けど、そんなのじゃない。

 杖の先端は砲台のように筒状になっていた。一方で頭の部分は青い玉が嵌められている。それらを繋ぐ本体は銀色の金属製の棒だ。

 金色の鷹が刻印されているのは、ミナトのアイリーン繋がりかなんなのか。いずれにせよ、乗ったら飛べるし、呪文を放ったら青い玉がサポートしてくれるのか。

 棒の中央部分に紐が結びつけられていた。先端がマグネットのようになっている。コマチが「本をくっつけられるって」とどや顔で言ってきて、言われるがままに本を近づけてみた。

 マグネットに吸いつく金属がないのだが、本にぴたりと重なる。引っぱったらすぐに本は取れた。どういう仕組みなのか。

 いや。杖じゃないんだ。

 気になるけど、問題なのは杖じゃない。

 どこの誰がどうやって作ってるんだとか、ワトソン以外にもしかして教団の関係者が士道誠心にいて、それ経由で持ってきたのかなっていうくらいよくできた杖だけど。そこじゃない。


「ねえ、コマチさん」

「なあに? 魔法少女ユニスちゃん」

「いや名前! 名前がモロ! 隠す気ない! ばれるでしょ! どう考えても! ばらす気まんまんでしょ!?」

「いやだなあ。そんなことないよ? 魔法少女ユニスちゃん」


 声が半笑いなんですけど!?

 集まっている刀鍛冶のみなさん、ちゃんと見たらみなさん眼鏡を掛けていた。

 衣装を揃えてきているだと……っ!?

 女子は揃って私と似た格好だった。なんなら杖をくれた子も、指ぱっちんを渋々といった表情でして衣装を切りかえてみせた。みんなして自棄っぱち。

 男子が露骨に反応するかと思いきや、そんなことはない。男子みんなそろってビキニパンツに着ぐるみヘッドをつけられている。

 罰ゲームだ。みんなそろって罰ゲーム。

 なんだろうなあ。

 みんなでやれば怖くないとかなのかな?

 男子がみんなしてバズーカ型の水鉄砲を持っている。


「こ、コマチ。コンセプトはなに?」

「恥ずかしいことはみんなでやろう」


 ろくでもねえ。誰だ。誰なんだ? こんなあほなこと考えたの。


「自由参加にしたけど、けっこう集まったよ?」

「……は?」

「だから、自由参加。だよ?」


 いや。だよ? って言われても。

 ノリノリか?


「せーのっ」


 コマチが呼びかけてすぐに、


「「「 教授の野郎に仕返しするぞーっ! 」」」


 男子が本気のハモリで答えるし。


「「「 変身願望をくすぐっちゃうぞーっ! 」」」


 女子がみんな自棄なの地味に気になるし。

 ほんとに自由参加? だいじょうぶ? 卒業したけど南隔離世株式会社の重鎮というだけじゃなく、士道誠心の刀鍛冶のドン! である光葉先輩の圧とかじゃない?


「さ。いってきて。途中で、別働隊と合流してね? 一年生の岡田くん、メインだけど。ユニス、私は期待してるよ」

「いやいや」


 ぬかしよる。


「杖はガチですごい。たしか。そのはず。だから、いってらっしゃい」


 不安になるなあ……なるけども。


「――……ま、ここまできて、私だけ逃げるのもね」


 同調圧力ばんざーい?

 いや、そういうんじゃなく。

 杖にテンションあがっている。

 けどそれじゃあ別に動きはしない。

 ただちょっと思っただけだ。

 マーリンが知っている魔法なのに、私より先に獲得した一年生が私より先に活用して目立ったら? 私の自負は防御に入る。女の子に変えるなんて魔法、別に私は使いたくないし! みたいなね。

 でもだめ。それはだめ。

 探究心が大事。魔法使いなら、一度は言ってみたい台詞っていうのがいくつもある。

 私の場合は、児童文学で世界的に大ヒットした作品のある先生の台詞が筆頭格かな。


「面白い呪文じゃない?」


 杖に片足を当てて、魔力を注ぐ。瞬時に砲台型の部分に自然と集まっていく。

 浮力を感じた。いいな、これ。魔力の通りが素直で。


「一度使ってみたかったの」

「そういうことにしたの? デレなの?」


 コマチのツッコミに笑って返す。


「さあね?」


 答えてあげないんだから。


「それじゃあ、みんな! 行くわよ! 魔法少女とビキニ野郎ども! 私についてこい! 町中の教授に呪われたおじさんたちを、片っ端から女の子にしてやるんだから!」

「「「 おーっ! 」」」


 もう片足を杖に当てて飛ぶ。

 曲芸飛行は得意だ。それにしても――……我に返ったら負けじゃない?

 おじさんたちを女の子にして、私に何の得があるのだろう。

 まあ、現世で魔法を使えるなら別にいいか。

 隔離世ほど効力が及ぶのかは甚だ疑問だけど。

 仮にもし、思い通りにいくのなら?

 そうね。

 ゲームが好きなミナトが、私のそばにいないことを後悔する理由になるかもしれないね?

 それだけで私はがんばれるのだ。

 ざまあみろって言ってやる! 私になにも言わずにどこにいったんだ! あのばか! せいぜい悔しがらせてやるんだからな! 鳥肌でも立ててくしゃみ百連発しろ!




 つづく!

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