第八百四十五話
スマホを通じてカナタ先輩から長文が来たらどうしよう……なんて思考はほうり投げて、ただいまマイクを手にカメラに向かって愛想を振りまいています。
どうも! 立沢理華です! こんばんは? 人によって時間帯はそれぞれですよね。なので万能の業界挨拶を利用しちゃいましょう。
おはようございます! おはようございます? 起きてます? 理華はぶっちゃけ寝たいです。
どうでもいいか。仕事中なので。
流れを簡潔に説明しますね?
まずアリーナをバックに理華たち三人娘の自己紹介と企画の趣旨説明。アリーナ周辺に人がいたら触れていく。絡める人に絡みたいのはやまやまなんですが、明坂で知名度高めでかつ、明坂復帰で大プッシュ中の美華を合わせようものなら明日の明坂登場サプライズに関わるっていうことで、ほどほどで中に引っ込みますし、そもそも駐車場で撮りますし。
これ不毛じゃない? なんて思っちゃいましたが、いちいち突っ込んでいたらキリがないので流します。
次は控えのみなさんに絡んだり、ゲネプロ真っ最中の春灯ちゃんに気づかれないよう、絵に映りこまないよう最大限、気を配りながらレポート。ガチファン勢で当日を楽しみにしている理華としては文字通りの苦行ですね。
や、マジで。マ! マ! マジで!
面白くねえな。これは封印しとこう。瑠衣は乗ってくれるけど、スバルはぼろくそに叩いてきそう。しかも鼻で笑う段階をひとつ必ず挟んでくるに違いないですよ。
しゃべりながらも撮影を続ける。
実際長めの尺はいらない。金光星チャンネルで必要な時間と、明坂の番組で必要な明坂サイドの撮影をしたら、ぶっちゃけ私と聖歌の今日のお仕事は終わり。強いて言えば明坂メンバーに合流してリハに臨む美華や、メンバー全員の動きを見て勉強するっていうくらい。
なので移動時間中にスマホのメッセージを確認して思考する予定だし、側で仕事するくらいには自分の見せ方と撮影に必要な段取りは理解しているつもり。
本当だったら、その予定だったんですが。
「音がぐわんぐわんしてる。なんで?」
「音響はきちんと計算されてるだけで、たんに聖歌がでかい場所の音に慣れてないだけじゃなくて?」
「でっかいホール! ……なんでこんなにでっかいの?」
「知らないよ」
「美華も知らないの? 明坂もライブで使っているんでしょ?」
「ライブで使うからって、ライブ会場の歴史すべてを頭に入れているわけじゃないの!」
一緒にいるふたりが無軌道すぎて、それどころじゃねえ。
撮影スタッフのみなさんも、ぴりぴりしている現場の空気に当てられて私を見てくる。なんとかしてと。駐車場のときからずっと、ふたりは自由なのだ。あとは私がまとめるだろうとたかをくくっているのか、はたまたなにも考えていないのか。ちなみにこの場合、前者は美華、後者は聖歌に該当します。
ほんとどうしようもねえなあ!
「さいたまスーパーアリーナの歴史については、下にテロップが――……でない? でないですね! じゃあ流します! だから聖歌、不満げな顔をしない!」
おかしいなあ。
もうちょっと完璧に立ち振る舞う予定だったのですが、目論見が外れました。
「そもそもこういう話はアリーナの運営会社の方に直接お話を伺うのが筋なのですが」
スタッフさんがあわてて腕でバツを作る。言うなと。そりゃそうか。この時間使えなくなるもんな。意外と面倒だな! もうちょっと意識を向けないとダメだわ。これは。
「今回大事なのは、春灯ちゃんのライブなんです!」
強引に舵を取る。露骨にほっとした顔をするスタッフさんたちの顔を、もうすこしくらい聖歌は見てもいい。あと。
「――……」
美華は元々、私より芸能生活長いんだからちょっとはしゃべれ。話せ。頼りにさせてくれよ!
借りてきた猫みたいに黙り込むな。きょどった目でこっちを見るな! トークは全然か、お前!
しょうがないから振ってやろ。
「で、美華さん。なに面白い顔してるんですか?」
「い、いやあの」
露骨にてんぱるな。赤面するな。ちょっとしゃくれるな! アイドルだろ!
「ひ、久々に大きな舞台を見ると緊張しちゃって」
おま! ばか! ネタバレに繋がりかねないこと、ライブ事前レポート映像で言うなよ!
あれこれ察しちゃうライブ行けないし情報探らない勢が「もしや明坂?」って思っちゃうだろ! いまどきその層がいったいどれだけいるんだよって話だけど! いちおうネット配信も予定してるんだからさ! 配慮して!
「は、春灯ちゃんは、初めての大舞台なのに、緊張していない様子でしゅ」
リアルに普通に最後で噛んだよ! このぽんこつめ! 私は好きだぞ、そういうの!
スタッフさんたちが青ざめる。別にさ。生放送じゃねえしさ。カットするだけの話なんだろうけどさ。この調子だと、ちょっとした映像を用意するのにいったいどれだけ時間がかかるんだって話だよ。不安要素しかねえよ?
「最近復活したばかりとはいえ、小学生時代にデビューして芸能生活が長い美華が、逆に萎縮されちゃうっていう不可思議な現象が起きていますね?」
フォローするしかねえのだよ。
「渾身のライブリハーサルの迫力あふれる映像は――……さすがにお見せできませんが!」
ためて、ふたりが悶える流れの台本だったのに、聖歌はマイペースにステージを眺めるし、美華は私の裾をきゅっと握って完全にかちこちだしで。
なにこれ。私は引率してるんですかね? この映像、私たちの初々しさっていうよりも、私たちのぽんこつ具合しか出ていないのでは? だいじょうぶ? 反感かわない? 不安しかない。
「高まるじゃないですか! なにせバックから流れてきていますよね? 楽曲が!」
だったら素直にメインの力を借りちゃおう。
まさに春灯ちゃんのバンドメンバーのみなさんの生演奏に春灯ちゃんの歌声が乗っかってきたところだ。マイク越しだと、ぼけて聞こえそうなくらいの爆音。
一気にテンションがあがる。
なにせゲリラじゃない公式の、それもアリーナライブはこれが初!
発表済みの音源は取捨選択をするほど多くはない。なにせまだまだデビューして一年目だ。
問題は曲順とか、ライブでどれくらい演出をいれてくるのかとか、アレンジしてくるのかなとか、そのへん。あとMCもいれてくるのかなとか、いろいろ気になることは多い! 多いのです! それはもう、楽しみなんです!
そのテンションを伝えるのが一番手っ取り早いですよね。世界大会や五輪の中継キャスターのようにね!
カンペで合図が来たのでいっちゃいます。
「明日からいよいよ! 青澄春灯ちゃんのファーストアリーナライブ、開催されます! 以上、現場から立沢理華と?」
「聖美華と」
しーんと静まりかえってくれたらいいけど、爆音がするから微妙に間が持っちゃう不思議。
美華があわてて聖歌の手を掴んで引っぱった。そこでようやく、
「夏海聖歌がお届けしました?」
疑問系にする必要性!
「「 お届けしました! 」」
美華とふたりで突っ込んじゃったよ。
はいオッケーですっていうスタッフさんの声の不安げな響きよ。
次はさっさと明坂メンバーの控え室に向かう。
やっとだ。やっとだぞ。スマホのメッセージを確認できるの。
これで長文でスクロール延々とされるような羽目になってみろ? カナタ先輩、ガチで恨みますよ……。
振動も音もなしに設定したスマホを、スタッフさんから渡してもらってチェック。
「――……ふむ」
予想よりずっと内容が推敲されていた。
教授の過去が記されている。どんな内容かって?
人を傷つける人の過去に、人から傷つけられた過去がある――……そんなのはけっこうよくある話かなと思います。
等価交換という言葉がひとり歩きして、中には「お前が先にやったんだ。俺も同じことをするさ」とまったくおなじことをやり返したり。「倍返しだ!」となったり?
悪意に悪意を、敵意に敵意を返す。
文明が保たれている中でも日常的な一面であり、けれど案外そればかりでもないよねっていう話。別に根っから心底いい人ってわけじゃなくても、交流するうえで表面上は相手とよりよい空気を作ろうとする人も多い。そこのコストを支払うのが面倒という、そもそも人に対する態度や労力をコスト換算しはじめる人も中にはいるけれど。
コスト換算するとなにがしんどいって、相手が近づいたときに相手の人間性とかじゃなくてコストという概念がネガティブに作用しやすくて、結果的に損をすることが多いよねってところかな。なんでなのかわからない人は、別にそのままでいいと思いますけどね。
教授はきっとコストで人を見るし、価値で人を判断するし、悪意や敵意しか共感できないんでしょうね。
彼に限りませんけど。
世界大戦の収容施設のドキュメンタリーを見て、なんとも言えない気持ちになりましたっけ。戦勝国によるフィルムなんでね。どれくらいのもんよと思いながらも、映像に残された現実や積み重なった死体の山と、さらにいえば周辺に住む市民たちの反応や、死体の山を仕事として日常的に築き上げた人々の感覚とか想像するとね。
私はどうにもね。善だの悪だので命ってやつははかれないんじゃないかって思うんですよね。
尊厳。対義語の解釈はいろいろとあるようですが、ここではふたつをあげましょう。
虐待、あるいは価格。
ドキュメンタリーに収録された映像には、主に前者に該当する光景が広がっています。
もっといっちゃうと、労力を割いていないですよね。
事前に言いますよ?
事前に念を押しますよ?
くどいですけど。前置きしますよ?
これから恣意的な話をします。
高収入の人間は加虐的になる可能性があるという分析があるそうで。石油王の息子がエレベーターに入っているとき、係員は女性が入るのを止めるそうです。なぜなら、中で息子にどれほど虐待されようと、金で解決されてそれでお終いなのだからと。
次のエピソード。
動物を多数、飼育して売る仕事をしている業者さんが、想定よりも多く増えた動物を抱えきれずに逃亡。残された動物たちはケージの中でやせ衰えることしかできず、保護したときには餓死していた動物が多数いたそうで。
以上、ここまでとしておきましょうかね。うんざり話は。
時代や状況に応じて力と尊厳の関係性を述べるときのエビデンス、具体的なエピソードはいろいろあるでしょうし、方向性はたいして変わらないのかもしれませんね。
たとえば話せない相手がそばにいたときに、あなたはどんな風に接しますか?
言葉が通じない相手――……たとえば英語などをはじめとする、日本語以外の言語を母国語にしていらっしゃる方から話しかけられたときに、あなたはどうしますか?
あるいは。そうですね。しんどい話が続いたので、ちょっと明るく切りかえてみましょうか。
野良猫があらわれた! 興味深そうにあなたを見ている! さあ、どうする?
猫アレルギーだったらごめんなさい。
野良猫が近づいてきて撫でさせてくれたらまだしも、ずっとそばにいて、手を伸ばしたら威嚇してくるけれど、あなたから離れようとしなかったら?
あなたはどうしますか?
杖を手に、飛び降り防止柵のない駅のホームを歩いている目の見えない方がいたら、あなたはどうしますか?
おっと、ごめんなさい。またしても悪魔の側面が出ちゃいましたね。
実はね?
相手がなにかしてきたら、同じように返すのはすごく楽なんですよ。
でもじゃあ、意思の疎通ができない相手だったら? 自分の理解できない言語体系の人が相手だったら? 自分と違う感覚で同じ言葉を使う相手なら?
結局、私もあなたも己自身の言動によって、自身の人間性が常に露わにされているだけでは? って思うんです。
理解できない言語で罵倒されるときと、理解できる言語で罵倒されるときのストレス値には差異がある、なんていうのもね。
けっきょくなにをどう受け止めて、どのように行動するかは自分の選択でしかなく。
だったら浮き彫りにされるのはただただ自分自身だよねっていう話。
前置きが長くなっちゃいましたが、スマホを改めてチェックしてから深呼吸。
銃口を突きつけてくる相手を前に、どのように生き延びるのか。そして生き延びたあと、どのようにして生き延びていくのか。常に考える必要があります。
教授は、そこを見誤った。
楽に逃れて現実逃避の繰り返し。
理華にもそういう風に流しちゃうことなんてざらにあるんですけど。
彼の場合は、現実逃避して生き延びる方法が最悪すぎた。
捕捉して術を叩き込みたい。
ただまあ、それじゃ彼のハッピーエンドにはたどり着けないのでね。
彼が道を踏み外した発端くらいはケリをつけないと。
思考回路はどんどん加速する。
ミコお姉さまからの指定を思い返す。
BPM、メジャー、テーマ。これが問題。
立沢理華にとっては、テンションのあがる課題――……。
さてと。
「暁兄妹、あとは――……スバルと」
ちらりと見たのは、聖歌。
四名の共通点とはなにか。キーワードは、彼らの御霊。
◆
立沢からのレスポンスは簡潔。既読がついて、五分もしない間に「もう大丈夫です」とのこと。
春灯に連なる問題なのだから、俺も現世に戻って協力しようかと尋ねるも「今日は結構です」と断られてしまった。
つれない。後輩女子、実につれない。
まあいい。さっさと現世に戻って昼飯を済ませて、稽古場に向かわないと。
そうは思うのだが、地獄の店の向かい側でジュースを啜る死の書の少年を見るといろいろと話したいことが浮かんでくる。
「なあ。もういちど、確認させてくれないか」
話は済んだ。内容はすべて立沢に送った。
それでも、なるべく早く要点を確かめるため彼の話を聞くのに終始するターンは既に終わったからこそ、質問せずにはいられない。
「教授は両親を殺された。伴侶も何度となく失ってきた。子供を目の前で処刑されたこともあるという。魔女狩りにあったこともあるそうだな?」
すべては伝聞。
話で聞くだけでは、ちっとも信憑性がわかない。
それこそ立沢のクラスメイトの時任姫に力を借りて、教授の人生を追いかけないと実感が湧かない。
当の本人も、大昔の話すぎるだろう。絶望と殺意の実感が消えないからこそ、彼はいまだに道を踏み外し続けているのだろうが。
「キミの御霊――……英語圏だと、ソウルを宿した理由。最初は大事な人を生き返らせようとしたというものだった。本当に、間違いないんだな?」
確認せずにはいられない。
なにせ、いまの彼と結びつかなさすぎて。
そりゃそうだ。
教授は何世紀も生きているのだから、ある程度のアイデンティティが確立されるまでの間にいろんな変化を経てきたはずだ。
だというが。それにしたって、いまの彼は生も死も冒涜することしかできずにいる。
「いましか見ないと、そりゃああなたのように見ちゃうでしょうけど。ボクからしたら、過去を知っていて、未来を見据えている。みっつの視点とひとつの視点とじゃ、見え方は大きく異なるし、幅も範囲も差が出るのでは?」
理で諭されると弱い。
「ボクはいまだにソウルを預けています。最初は期待したから。死にまつわる書物のボクが、生に繋がる書物になれたらいいなと。けど、それを期待するには時代は厳しすぎました。ううん、いまもきっと厳しいのだと思います」
現実について触れられると、余計に。
世界の誰もが優しさだけで生きているわけじゃない。
そこまで余裕のある社会でもない。
弱者と強者がいるし、生まれの時点で大差がつく。上を見上げればきりはなく、下を見下ろしてもまたきりがない。
誰もが平等に幸せに生きられる社会を。そんなスローガンが訴えられるのは、誰もが平等でも幸せに生きられるわけでもないからだ。あるいは、それが商売になるからだ。そしてもっと純粋に、そこに夢を見られるからだ。
苦しみを体感するから、理解して手を差し伸べることができる? いや、ちがう。完全に否定する気はないけれど。苦しみを想像し、そこに共感したとき、手を差し伸べる人が優しいのだ。
優しさは万能なツールではない。ただ孤独を癒やすことくらいはできる。
それも、余裕がなくなると、だんだん不感症に陥って届かなくなってしまうくらいの熱だけど。あるのとないのとじゃ、天と地ほどの差がある。
それくらいは理解しているつもりだ。
「――……彼は既に死んでいるけれど、足掻いています。そのあがきによって、死をまき散らしてもいる。看過できないし、されるべきでもないだろうし。現にあなたが動いているし、ボクも会いに来た」
「本音を言えば、やっと日本の地獄に来るための通行許可が出たってだけですがね」
「シガラキさぁあん!」
泣きべそをかく少年の立場はけっこう微妙なものらしい。
教授にソウルを委ねたからというよりは、そもそも根の国の女王のように発祥が原因のようなニュアンスのようだが。
「と、とにかく。ボクは長年見守ってきたから、最後まで見届けたいんです。一度は夢を見た成年の答えを知りたい」
沈痛な面持ちで項垂れる彼にかけるべき言葉が見当たらない。
教授が力に目覚めるきっかけを与えたのは、まぎれもなく彼だ。
けれど、御霊であろうとソウルであろうと、委ねられたとして――……なにをなすかは、人による。結局は教授の選択でしかない。すべては。
春灯は青澄家の開祖があきさんのようで、あきさんと玉藻は春灯と冬音のように双子の姉妹のようで。それゆえにちかしいものばかりあるけれど。
俺と光世や冬音のように、そもそも御霊と侍は一致する存在というわけではないのだ。そもそもの話、共感できたり応援したい気持ちをもって、彼らは俺たちに御霊を委ねてくれる。ただそれだけの話。
なので現世の因果は俺たち現世の人間がどうにかするだけの話。
神さまに頼れって? そうじゃない。そういうことじゃないんだ。
心の内に宿って自分を信じて応援してくれる神さまを信じろ。
そして、自分が信じる自分を信じられるようになるのだ。
行動するのは御霊じゃない。
敵がきた? 倒すのは御霊じゃない。
問題が起きた? 解決するのは御霊じゃない。
いつだって、渦中にいる俺たち自身だ。
俺たちが全力で挑む限り、神さまは応援してくれる。
それがどこまでいっても、本質であり、揺るがない仕組みなのだ。
自分の人生の舵は、まず己が握る。
妖怪だの偉人の幽霊だの神さまだのが内に宿ったから、あとはよろしくね?
いいや、そうじゃない。
自分の人生だ。
自分で選び、行動する。
それに尽きるのだ。
その程度のことは弁えている。侍というだけじゃなく、刀鍛冶でもあるのだから。
「なら、見ててくれ」
立ち上がる。
言っても今回は俺でも春灯でもなく。
主導権を委ねられているのは、立沢理華に違いない。
◆
明坂の収録を終えて、すぐさま采配を振るう。
といっても先輩たちの顔を立てるとか、そのあたりの気配りは大事。
日本人ですねえ。理華も。
けれど、並木生徒会長も真中さんも南さんも、みんなしてやりやすいようにバックアップしてくれる。すごくやりやすいぶん、プレッシャーも半端ない。
いいプレッシャーですけどね。信頼は背中を押してくれるし、力を貸してくれる彼らの本気度が感じられるほど自分の作業に集中しやすくなるので。
戦力配分は整いました。
九組面子の配置も完了。
スマホの連絡を進めて、一区切り。
頭が熱い。今日は思考をフル活用する日だ。
本当ならライブのあとまで気が抜けない流れになるのが規定路線。
でも、そんなのごめんだ。
私はライブ当日をライブのことだけ考えて楽しみたい。
だから、はっきり言っちゃう。断言する。
今日で終わらせる。
昂揚がいやじゃないから、指輪を嵌めた左手の薬指に口づけを。
知恵を。
最強の知恵を。
どんな敵が相手でも、最後に笑って幸せを掴めるくらいの知恵を。
計画通りにいかずとも成し遂げちゃう運気の流れを。
みんなが私の予想を遥かに超えて最高の仕事をしちゃう勢いを。
すべてを私にください?
ううん。
掴んじゃうから。
いまから教授をどうにかするまで、すべて私のターン。
覚悟しろとはいわない。
どうぞ、召し上がれ。
つづく!




