第千七百二十五話
権利とは、義務を果たした者にだけ与えられるべきものである。
七つの会議という小説を原作にした映画で、ある男が部下一同に命じた。
残業返上、ただ働き、夜を通して成果を上げることを求めた。
これに、ひとりの男が反論した。
有休は社員に認められた立派な権利だと。残業もそうだ。
しかし男は言うのだ。
権利とは、義務を果たした者にだけ与えられるべきものである。
権利の行使をしたければ、まず義務を果たすべきなのだと。
ウォーキングデッドでリックが入院中に、リックの奥さんとやることやってたリックの幼なじみが、世界にゾンビのようなウォーカーが溢れかえり、物資が制限された際に、女性陣や老人、こどもたちに同じような主張をした。
必要なのは結果だ。
結果がすべてだ。
死に物狂いで結果を出せ。
そうした抑圧は、圧制、暴君の言い分として、ひどく使いやすい。
逆にこうした主張を行なう者には注意が必要だ。
と、ここまではついさっきまでの私の主張。
ところで、ここで分断が生じたとき、分断と対立が激化するほど、問題のすり替えが起きる。
いわく。
なぜ結果を求めるのか。
結果を得られることによる利点はなにか。
そもそもなぜ、どのようにして結果が生じるのか。
逆に結果が出ないときには、どのような負荷が見て取れるのか。
負荷から、いったいどのような改善点が見いだせるのか。それはどれだけ普遍性の高い手段に昇華できるのか。困難を伴う人、手段に制限のある人ももちろん含め、あらゆる人が利用できる手段にするために、どのような改善を行なえばいいのか。
視点が変われば条件は複雑化する。そのため、人を選ぶことなく、いかなる人も利用できるものとして捉え、だれかを責めるのではなく、手段の向上として捉える。
そのうえで、そもそも目的はなんなのか。目的に対して、結果とはなんなのか。
他にも、ありとあらゆる問いを見いだすことができる。
にも。
関わらず。
問題のすり替えが起きる。
問いは、分断により対立する個人ないし集団を、どのようにして制圧するかに傾いていく。
そういうケースがある。
問題を人に持たせたとき、解決は人への対処に向かっていく。
すると得てして問題に関わる人のすべて、ではなく、特定の人ないし特定の属性に着目されてしまう。そのため問題によって分断し、対立を深めさせる構図が強化されてしまう。問題があったとき、関係者を分断し、関係者すべての負荷を着目し、負荷と、それにまつわる問いを明らかにする機会を逸してしまう。
ときにそれは分断に気づかず、分断を加速させる者の認識を強化させてしまう。
そのため、負の遺産は改善されることなく、蓄積されてしまう。
なんなら構図についてのみ自覚的で、それを手段として活用する者もいる。
悪い奴、問題がある者、改善すべき属性を設定する。もちろん自分は二項対立における対立側に設定し、対象を攻撃し、味方を煽動する。味方が増え、注目度が集まったら? より簡単だ。刺激的なフレーズを活用すればいい。
虐殺器官における殺人の文脈とはちがう、最もシンプルなプロパガンダの文脈。
フェイクニュースの見分け方。あるいは、自分の軸足が揺らいでいないかのチェックにも使える。なにかを攻撃する、あるいは中傷する、属性を明確にして批難する。こうした文脈に反発するときだけではない。好ましい、あるいはそうあるべきだと思うときのほうが、自分に対して注意が必要だ。
それは偏見であり、言動に移せば差別となる。暴力だ。
刺激的で、負荷を伴い、関係を悪化させるもの。
端的に言って、それは振るう時点で自分の傷をごまかし、負債を積み重ね、痛めつける作業だから、倫理的な意味だけではなく、自分のためにも、やめたほうがいい。
けれど厄介なことに二項対立の文脈は使いやすく、また巷に溢れすぎていて、さらには対抗手段として好まれやすいのだから、むずかしい。
正当化しやすくなる。Aに対するB。Bに対するA。どちらも同じ。
かくして問題はすり替わり、ずっと居残り続ける。
対立は対立で厄介だ。
傷つける者がいて、傷つけられた者がいたとき、問題に関わる人数が増えるほど、傷と暴力の関係もまた増えていく。
現実に、自衛のための手段と、考え方がある。必要な場面も。それは当たり前には断じてしてはいけないもの。なくしていかなければならないもの。傷ついたとき、とても冷静ではいられないし、そもそも傷を治すのにひどく苦労する。時間もかかる。だから自衛の必要性は一見して、増す。需要も。その先を考えられる余裕を失うとしても。それでも自衛の必要性は一見して、増す。
ただし自衛は自衛で、ひとつの問題と二項対立において問題をさらにややこしくする。
対立によって、傷によって、自衛の必要性によって、どんどん問題はすり替わってしまう。
故に暴君は暴力を好む。対立を好み、加速させ、人々の知性を攻撃する。問題をすり替えにすり替えて、己の有利な状況を作ろうと企む。
そのため、問題が生じたとき、渦中の人物とは別の第三者が介入し、問題の防止、自衛の必要な人へのケアと防御、攻撃を行なう者の暴力の停止を担い、沈静化した状態でようやく、さらなる第三者が問題の改善に介入する。
傷や暴力が関わるとき、問題が切りかわること、その複雑さがさらに二項対立を強化させる。もはやこの段階に至っては問題のすり替えなどという生やさしい表現では足りないほど、問題は当事者たちを刺激する。当事者がこの解決を担うとき、感情が刺激され、事態が過剰になっていことを制御できなくなる。その必要性を当事者が感じなくなるからだ。そうして問題はさらにすり替わり、複雑さを増して、当初の問題のケアをより一層、困難なものにする。
かくして「被害感情を武器にしやがって」みたいな言い分も出てくるし、フェイクニュースが飛び交うようになるし?
どっちの言い分も聞いて、どっちの言い分も採用しましょう! と言いだす人も出てくるかもね? だったらさ。地球が中心になって宇宙が回っているっていう人と、いやいや地球は太陽を軸に惑星軌道を描いているし自転もしている星のひとつやぞ? っていう人の言い分を採用する? それは無理でしょう。
お肉ぜったい食べちゃだめって人と、お肉だいすきなんだわ! って人がいて、前者が後者に食べるなって言ってたら? 取り入れようがなくない?
ななななー。ななななー。なななな難問題!
現代、やっかい。言いなり、だめ絶対!
なんちゃって。
他者、集団を相手に、なにかをさせよう、なにかを我慢させようと、相手を変えようとするとき、無理が生じる。
その発想自体が無理。
うまくいかんって。
ぷちたちといると、痛感させられる。
こどもを育てるとなれば? みんな改めて学ぶことになるんじゃないかな?
相手は変えられないの。
相手の抱える問題を見つけて、その対処をするの。
そうはいってもぎゃんぎゃん泣かれたり、怒られたり、ちいさくていとけなくてあどけない命に全力で「あなたほんとだめ!」って叩かれる気分に陥ると、マジでもうめげるの。
で。
培ってきた自己肯定感なんか、わりとすぐに吹き飛んで、消えてなくなるし。
せっせとこさえても間に合わないし?
そりゃあ、ネネちゃんのママもぬいぐるみを殴るよ。闇が深すぎるけど。
家で休むなんて甘っちょろいこと考えてんじゃねえぞ? とね。いまならわかるんだけどさ?
知らずに過ごしてる人も案外、多いのかもしれないなー。
おじさんはひとりだ。
ひとりぼっち。
情報売買で現金収入を得たら、人形クリエイターさんと会う。さっきたまたま会ったアリスちゃんみたいに、隔離世の素質がある人が訪ねてきたら? お話をするし、お手伝いをしてもらうこともある。そもそも情報提供で、お客さんと話すこともある。
けど、そういうんじゃない。
そういうんじゃあ、ないんだぜ! って、スタイリッシュにポーズを決めて言いたい気分。
ちがうのよ?
私たちが権利と呼ぶものは、義務を果たさなきゃ得られないものじゃあないのよ? それは自己責任という暴力棒をぶんぶん振り回す悪党にお似合いのセリフなんだよ?
問題はなにか、きっちり調べて対処しようってえときに、そういう話を持ち込むんじゃあ、ないんだぜ! ってなるのよ?
すり替えてる暇はないんだよ。
たとえばぷちたちなら?
ぷちたちが泣いてる時点で、すり替えてるどころじゃあないんだ。
でもって、行なうとき、自分の中のわーって噴き出る気持ちもちゃんと対処してかなきゃ大変でさ? さっきも言ったけど、当事者ほど、それがむずかしい。
ぷちたちと一緒にいると? ますます噴き出る。
こそだてマジ地獄みたいな呟きを見るたび、結局、人と人との問題って、抱えたまま対峙するの本当にきつすぎるよなあってゲロ吐きそうになる。できれば逃げたい。投げ出したい。
おじさんは投げてる。本棚にため込んで、放っておいてる。
世界の覇権を握ってそうな勢いの動画の配信サービスで配信されてヒットしてる、お掃除のメソッドで大活躍のお姉さんのやり方でいったら? だぁいぶ、断捨離できそうな本棚だ。けど、それってお姉さんが事前にお断りをする内容に合致していそう。
ときめくか、どうか。
おじさんはずっと保留にしている。どこかに希望を持っている。お父さんやお母さんが資料として、どぎつい値段の資料本を本棚にずっとため込んでるみたいに。滅多に開かなくても、トウヤが積ん読してる漫画のように。あるいは貴重な資料を大事に保管している学者さんのように?
いま必要かどうかだけが、ときめきの基準じゃない。
ましてやそれは、他者に決められるはずもない。
なのでだれかの所持品を勝手に捨てちゃう人は、まずそうしたい心理からケアしてかないと、捨てても捨てても問題は膨らみ続けちゃう気がする。具体例を知らなきゃ、具体的な話なんてできるはずもないので、こんなの当て推量でしかないんだけどね。
同じ理由で私もおじさんの本棚について、どうこう言う立場じゃない! というわけだ。
問題。
そこに問いがやまほど眠っている。
相手は変えられない。自分もなかなかむずかしい!
だから仕組みや枠組みから。自分でも相手でもなく、手段から。
それがまたまた厄介な問題を起こすことも多いので、人生は問題だらけ。
みんなで幸せになろうよ~っていう、パトレイバーの後藤隊長スタイルは大変。しかもそれ、達成するものじゃなくて、心構えだからね。より大変。
ゴールはさ? 辿りつけば終わるもの。だけどライフスタイルにゴールはない。むしろゴールがあることのほうが楽。なのでゴールは手段に使えるし、すり替えに利用されちゃうこともある。終わりのないゴールなんかは? エサを眼前にぶら下げて、お尻にムチを入れるようなもの。なんでいつまでゴールできないんだ? がんばりがたりないんだよぉ! ってね。
いやほんと。
求め、探せ! さらば見つからん! なんて振られても困る。
型落ち製品の営業くらい、地獄。「いや、営業するなら最新のものじゃない? 普通さあ」ってなりません? 持ってこられてもってなりそう。あ、七つの会議の話なんだけど。冒頭でね? 営業一課と二課だっけ? その売り上げ成績を、社長の前で発表して、社長のご機嫌を取るみたいな大きな会議があってさ? 二課の人たちがどれだけえげつない立場か、愚痴られていた。
ないじゃん。
本が。
お母さんと美希さんに探しておいでーって言われてさ?
立ちましたよ。歩きましたよ? 探しましたよ。残りたくないのか、そばにいたいのか、ぷちたちも一緒に来てくれたんだけどさ? とにかく見つからない。
なにせ目印がない。地図もない。おまけに本棚の整理がなってない!
人形に話しかけてもだめ! 奴ら会話が成立しない! そういう機能をつけてない!
いっそ! いっそ萌え系フィギュアで萌え声でしゃべってくれるくらいのほうがよかったよ! すくなくとも話ができたもの!
見た目に怖いから、話しかけるのもおっかないし! どんなに呼びかけてもガン無視されるし!
「ひまあ」
「ねー、いつまで歩くのー?」
「ママおなかすいたー」
「おしっこー」
これだもの!
いっそ、おじさんの話していた本を見つけて妖狐の集団と戦ったほうが、まだ簡単だったのでは? それで一体なにが得られるのかっていったら、微妙。重たい人生の軌跡とか? 怨み節とか?
トイレないしなあ。
ぷちたちはみんな、私に乗っかったり、出目金マシンに乗ってたりで、歩いているわけじゃないけどね?
退屈な移動時間がいつまで続くのかって聞かれてることくらいわかるし、私もその答えはいますぐ知りたい。
「おしっこ、我慢できる?」
「尻尾の中もどってしてきていーい?」
「あー、いくー!」
「うんちしてくる!」
「ええええ……」
私の尻尾の中にトイレあったの?
「い、いいけど。穴に気をつけてね?」
「「「 あいっ! 」」」
みんなで行けば怖くないとばかりに、いっせいにみんなが尻尾に飛び込んでいく。
ひとり残さず行くんかい!
みんなが尻尾に入っちゃうと、ますます孤独を痛感する。
図書館のさみしい静けさが耳に痛い。
「ひとりか~い」
空しく響いていく。
仕方ないので歩きだす。
音がないので歌っちゃえ。
ただ歩くだけじゃあ退屈だからステップ踏んじゃえ。
久しぶりにラ・ラ・ランドのOPな気分で飛び出すの。
黄色のワンピースに服装を化かして、ご機嫌になりきってさ?
金色を出して人型に化けさせて、一緒に進む。ミュージカルなノリで。
私はよく考える。
あれこれ言葉をひねり出したり、並べたりしたがる。
だけど事実として知っている。
自分をあげる言葉を一週間かんがえるより、だれかと楽しくする十五分の散歩のほうが、よっぽど効果的。音源を聴くより生で歌を聴くほうがいいし、歌うほうがもっといい。
お日さまさんさんな外を行くのがいい。雨が降った日はお気に入りの傘か、雨合羽を着て、ぶかぶかの靴を履いて、いざ飛び込め! 水たまり! ってやってるほうが「雨だりー」ってうだうだするより楽しくていい。
上昇志向の高い人が、いかにもハリウッドな連中と集まって、パーティーをするのに比べたら? ここは負けじといかにもだけど、攻めて得られるものがどれほどあるか。
わからないけど、考えてるより歩いてみたい。
座ってぼけーっとしてるより、なにかがあるかもって冒険をしたい。
左手理論は通用しない。一本道。分かれ道はない。戻りたければ踵を返すだけ。
本に違いがあるとしたら? 名前だけ。
お姉ちゃんが絶対に見せてくれない、閻魔のお姫さまの閻魔帳のほうがよっぽど機能的。それに比べると、ここはほんと、作って置きましたっていうだけ。
遊びがない。
足すならきっと、いまやっていることの外にある。
それはあれこれ考えるより、試したほうがずっと早い。
見つけてと願っている本と出会いたいのなら? ときめきを探すのなら、数を見なけりゃ始まらない。手に取って読んでみなきゃあしょうがない。そういう試し方をするには、ここはあんまりにも本が多すぎる! でも、おじさんを責めても変わらない。
通ったほうが楽。今日のゴールテープはなし。
仮にとっかかりを求めるのなら、獣憑きを探す。狐憑きのものがいい。
なんならいっそ、私の本があればいい。
美希さんの本とか。あるいは、うちのお母さんの本とか!?
いや、もうそこまできたら直接聞けばいいじゃん。
お母さんからここに案内されたとき、穴にまつわる新情報が期待できるようなことを言っていた。
おじさんの話がそれとか言わないよね?
妖狐の群れ。怨み祟るのに十分な状況。
金色で化かして出した車に乗り込んで、歌い終わってドアを閉める。
道幅が狭いので、それに合わせて車のデザインを変えている。アクセルを踏めば走りだすようにしたよ? とろとろと、ゆっくりした速度でね。でも、これ以上は目的もなしに遠ざかっても仕方ないので、車を消して立ち上がる。
「ううん」
自由自在にいろいろできればいいのになー。
『あのなあ』
『よせよせ、十兵衞』
ん? なあに?
『なんでもない。探し物が見つかるとよいな?』
ねー。
いっそ歌っちゃう? 昭和のヒットナンバー。
探し物はなんですかー。なんだろうね? 本だと思うんだけど。見つけにくいどころじゃないんだよなあ。
鼻歌混じりにステップを踏み続けながら進む。
見つからないなら作っちゃう? 私で。
おじさんに頼るのもなー。なんかこう、ひとつ手間を挟むのがすでに面倒くさいまである。
あと、思うところがあってさ?
中心地点から遠ざかれば遠ざかるほど、本棚に空きスペースが見えてくる。
進めば進むほど目立っていく。だけど、本はある。
これだけの世界を作れても、あのおじさんは満たされない。気になるし、覚えているし、身近に集めておいておきながら、手に取るのも読むのも億劫な本との距離は変わらない。
なぁんかさ?
足りないよね。
なにが足りないのかな?
本があれば、ぶっちゃけ義務がどうこう権利がどうこう関係なく、読める。義務を果たせうんぬん言われなきゃ権利を守り自衛に勤しむ必要もない。本が、そこにあるのだから。あとは手に取って読むか、読まないか。ただただ、どちらかだ。
ところで利益って経験値だと思うの。
経験値って、行なうことでためるものだと思うの。成功も失敗も視点によって変わるけど、経験してることには違いないと思うの。
おじさん、本を読む経験値は積んでないよね。
楽しい本を読む、という経験も久しくしてなさそう。ユメの指摘に気持ちよく刺激されちゃって、大笑いしていたけど、気づいたからかな。ああ、たしかに読んでないなあって。
目的ってさ。
見えないと、できないんだよね。
利益もそう。経験しないと、わからない。
わからないと、経験してもいいものかどうかわからない。
頭がこんがらがっちゃうぜ!
『行なっても気づかない者もいるな』
ねえ、タマちゃん! 十兵衞が絡んでくる!
『呆れたくもなる』
『まあまあ。よきかな』
なあに? ふたりして、気を持たせるようなこと言って。
『いやさ。休むことから休むのもまた、ときには必要かと思うてなあ』
なぞなぞ?
『内を見るとき、外を見よ。歩くとき、駆けよ止まれよ、跳躍せよ』
……ええ?
『歩みがのろいぞ? 疾く駆けよ』
えええ。急ぐ必要ないよ?
『なればこその戯れぞ?』
戯れかあ。戯れなら足りないかも?
靴を化かしてローラーブレードに変えて、床を滑って進む。
本を魚と見立てた。これだけ魚が集まっているのに、泳げない。みんな、それぞれに水槽に留まっている。それってなんだかさみしい。
「――……あ」
本を片っ端から魚に化かして、一緒に泳いじゃう?
いやいや。いやいやいやいや!
さすがに片付けのこと考えちゃうな!?
ああでも、みんなに元の位置に戻ってーってお願いすればいいかな?
からくれないにーの一首のように、思わず詠みたくなるような情景を作っちゃうのもありじゃない? 本を化かせば化かすほど、なにか見つかるかもしれないし?
「――……ふむ」
靴の変化をやめて、足踏みするようにブレーキ。
あまりに静的な空間で、左右に私を挟む、圧迫感のある本棚を見る。
人形さんたちが片付けていた。だから乱すのはなし。
とてもじゃないけど手が足りない人形さんたちのお手伝い? それも勝手にするのはね。
元通りにする。そのうえで、協力できることがあるとわかったら、する。くらいかな!
そこまでしても、怒られるかも?
だけどもやってみたい。身勝手でわがままな疼き。
唱えてできたら、楽しそう。
あじゃらかもくれん、てけれっつのぱー!
じゃなくて! 死神さんはここにはいないぞ? 唱えるなら、魔法だ。
びびでぃばびでぃぶー?
これも問題あるな?
なにがいいかなー。
詠んじゃう? いっそ、詠んじゃう?
「あー。えー。んー。んんっ」
ほんだなやー。
せまくてさかなー。
いきぐるしー。
およぎおよげばー。
じゆうなるかなー。
「センスなし!」
思わずその場で自分にツッコミ入れちゃった!
引くほどセンスなし!
思えば短歌、詠んだことねえな!?
それで呪文を唱えるとか、よくいったもんだな!?
なんならどや顔でうまいこといった、みたいな空気だそうとしたな!?
ところで数をこなさなきゃ経験値たまらないなら、とにかく詠むしかねえな!?
「ひとりで詠むしかねえな!」
ぷちたちが戻ってくる前に、整えておこう。
えーっと。えーっと。短歌でしょお? 短歌。五七五七七……。
「なにも思いつかねえな!?」
それだったら、センスなくても詠むしかねえな!?
初心者だもの! あまくみんな!? そういうときは、よしよしがんばれって言って、自分を応援してかなきゃ続かないな?
よーっし! 詠むぞ?
つづく!




