第38話:崩壊する王国と、究極の「全自動・防衛結界ドーム」
ゼノスがミーシャに『魔法瓶』を贈り、二人の絆が深まっていたその頃。
かつてゼノスを「ゴミ扱い」して追放したアステリオス王太子の王国は、ついに年貢の納め時を迎えていた。
「報告します! 王都を覆っていた『常時浄化結界』が完全に消滅! 下水道が逆流し、王宮内は魔物化したドブネズミで溢れかえっています!」
「陛下! ゼノス殿がメンテンスしていた『王立・魔力貯蔵庫』が爆発! 王国全土の灯りが消えました!」
王宮の会議室では、悲鳴のような報告が飛び交っていた。
実は、ゼノスが「ついでに」と直していた王国のあらゆる設備は、彼の特殊な魔力が通わなくなったことで、急激に劣化し始めていたのだ。
「ええい、うるさい! ゼノス一人がいなくなっただけで、なぜ我が国が滅びかけねばならんのだ!」
アステリオスが机を叩くが、その豪華な机も、ゼノスが施した「防虫・防腐」の加護が切れた瞬間にシロアリに食い破られ、真っ二つに割れた。
「……陛下、もはや限界です。民衆は『ゼノス様がいない王国に未来はない』と、四魔王が守護するゼノス領へと大移動を始めています。もはや、この国に残っているのは……我々のような、彼を追い出した『戦犯』だけです」
宰相が青ざめた顔で告げる。
王国は、ゼノスという「目に見えない柱」を自ら引き抜いたことで、瓦解の一途を辿っていた。
◇
一方、その頃。
ゼノスの拠点には、王国から逃げ出してきた数万人の難民が押し寄せていた。
「ゼノス様、困りました。避難民の方々が多すぎて、以前作ったマシュマロ・クッションだけでは、雨風を凌ぐ場所が足りません」
ミーシャが困り顔で報告してくる。だが、その声に悲壮感はない。
「よし。じゃあ、街ごと包み込める『家』を作ろう」
俺は工房から、教皇庁から奪い取った……もとい「宅配」された『聖なる天蓋の布』と、四魔王から贈られた各種素材(氷、炎、嵐、時の欠片)を取り出した。
「トントン、と」
【スキル:国家規模・概念建築発動】
【作成完了:神話級アイテム『全自動・快適防衛結界ドーム「理想郷」』】
俺がその「小さな模型」を地面に置いた瞬間。
黄金の光が数キロメートルにわたって広がり、難民たちを包み込んだ。
ドーム内は常にゼノス特製の『エアコン』で最適な気温に保たれ、自動的に『清潔な住居』が地面から生えてくる。
「な、なんだこれは……!? 呪具で、一瞬にして街ができたぞ……!?」
「空気が美味しい! 食べるものも、全自動で配給されてくる!」
難民たちは涙を流してゼノスを拝んだ。
そして、そのドームの「外側」――。
ちょうど王国の追撃部隊が「難民を連れ戻せ!」と現れた瞬間。
「……あ、そこから先は『立入禁止』だよ」
俺が指を鳴らすと、ドームの結界が「お掃除モード」に切り替わった。
王国軍が放った矢や魔法は、結界に触れた瞬間に「紙吹雪」と「シャボン玉」に変換され、兵士たちの鎧は、俺が昔捨てた「ボロ布」へと強制的に書き換えられた。
「ぎゃあああ! 鎧が消えた!? 裸でどう戦えというのだ!」
「君たちが捨てた『ゴミ』の力だよ。……さあ、王国へ帰って、王様に伝えて。ここはもう、君たちの手が届く場所じゃないってね」
フル装備の王国軍が、裸同然で敗走していく。
かつての追放者が、今や一国の軍隊を「お掃除」一つで追い払う。
圧倒的な「力の差」と「生活の豊かさ」の違いを見せつけた瞬間だった。
「……ゼノス様。あちらの王太子、今ごろ真っ赤な顔をして悔しがっているでしょうね。……ふふ、楽しいです」
ミーシャの笑顔の裏で、王国崩壊のカウントダウンは加速していく。
スローライフはついに、一人の呪具師が支配する「新国家」の誕生へと向かっていた。




