第25話:神の威光と、全自動「神力発電機」
『聖天教会』の枢機卿が放った捨て台詞――「全大陸を敵に回したと思え」――という言葉は、俺の耳には「もっと面白い素材を運んできてやる」という挑戦状にしか聞こえなかった。
「ゼノス様、あの金ピカの船が放つ『神聖魔力』とやらは、実に鼻につきます。我の魔力と反発して、お肌が乾燥しそうです」
ミーシャが不機嫌そうに自分の頬を触る。確かに、神殿船から放射される「神の威光」は、周辺の魔力バランスを強引に書き換える性質がある。
「乾燥は困るな。……よし、ミーシャ。あの鬱陶しいエネルギーを『有益なもの』に変換してしまおう」
俺は工房の奥から、使い古した「銅の鍋」と、そこらへんに落ちていた「壊れた避雷針」を持ってきた。
「トントン、と」
【スキル:反転・エネルギー収束発動】
【作成完了:神話級アイテム『全自動・神力発電機』】
俺はこの装置を屋根の上にポンと置いた。
すると、どうだろう。
神殿船から降り注いでいた傲慢なプレッシャーが、まるで掃除機に吸い込まれるように装置へと引き寄せられ始めたのだ。
「な、何だ!? 我らが放つ『神の審判』が、あの家の屋根に吸い込まれていく……!?」
空中に浮かぶ神殿船の甲板で、枢機卿が目を剥く。
◇
一方で、俺の拠点には劇的な変化が起きていた。
「お、おい! 街灯がめちゃくちゃ明るくなったぞ!」
「見てくれ、黄金風呂の温度がさらに安定して、ジェットバス機能まで追加された!」
神力発電機が吸い取った「神の威光」は、純粋な電気エネルギーと魔力に変換され、拠点のインフラを劇的にパワーアップさせていた。
もはや枢機卿が怒鳴れば怒鳴るほど、俺たちの生活が豊かになり、夜のバーベキュー用の電力が潤沢になるという皮肉な状況だ。
「……ふふ、ゼノス様。あちらの老人、顔が真っ赤を通り越して紫色になっていますよ。まるで熟しすぎたナスですね」
ミーシャがテラスでティーカップを傾けながら、愉快そうに笑う。
「こ、コケにされたものだ! 聖騎士団、突撃せよ! あの忌々しい機械を破壊し、異端の呪具師を捕らえろ!」
枢機卿の号令とともに、白銀の鎧に身を包んだ聖騎士たちが空飛ぶグリフォンに乗って急降下してくる。
だが、彼らが俺の家の敷地に入ろうとした瞬間。
「ワン!」
庭で遊んでいた「ポメラニアン(元・魔王の親衛隊)」たちが、一斉に吠えた。
その鳴き声は、神力発電機から供給された「神聖バフ」によって強化され、超広帯域の『聖なる衝撃波』となって騎士たちを直撃する。
「ぎゃああああ! 聖なる力で、我ら聖騎士が弾き飛ばされるだとぉぉ!?」
「あ、すみません。その子たち、今『神の力』でフル充電されてるんで、ちょっと加減が効かないんですよ」
俺がのんびりと手を振ると、聖騎士たちは空の彼方へと豆粒のように飛んでいった。
自分たちの神聖な力で、自分たちが撃退される。
「……ゼノス様。あの船、まだエネルギーが残っているようです。いっそのこと、完全に吸い尽くして、我の寝室の『全自動・肩揉み機』の予備電源にしませんか?」
「いいアイディアだね、ミーシャ」
教会という「神」の名を騙る略奪者たちは、俺たちの生活をより豊かにするための「移動式大型バッテリー」へと成り下がったのである。




