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第23話:堕ちた王太子の「理想」と、魔王の「お掃除道具」

王都の中央、かつての栄光の象徴であった玉座の間。

そこには、肉体が脈動する漆黒の肉塊と化したアステリオス王太子の姿があった。


「ゼノス……ゼノス……! 私をバカにした報いだ……世界を、私の憎しみで塗り潰してやる……!」


アステリオスが魔王の心臓を取り込むと、彼の背中から禍々しい触手と、街一つを覆うほどの『絶望のとばり』が溢れ出した。それは触れるものすべてを腐敗させ、自我を奪う「死の概念」そのものだった。



一方、湖畔の工房。

俺はミーシャに見守られながら、巨大な円筒形の装置を組み上げていた。


「ゼノス様。あちらの『粗大ゴミ』、いよいよ手が付けられないほど腐敗が進んでいるようですが……。この筒一つで、本当にどうにかされるのですか?」

「ああ。あれだけ巨大な悪意と魔力だ。普通に消滅させるのはエコじゃないからね。今回は『循環』をテーマにしてみたんだ」


俺が完成させたのは、表面に無数の「呪印」が刻まれた、巨大な大砲のような見た目の装置。


【作成完了:神話級アイテム『概念分解型・超高密度コンポスト(堆肥化装置)』】


「よし、ミーシャ。標的は王都。……発射!」


俺がスイッチを押した瞬間。

装置から放たれたのは破壊の光線ではなく、目に見えないほどの微細な「呪い」の粒子だった。

王都を包んでいた漆黒の『絶望の帳』にその粒子が触れた瞬間、世にも奇妙な光景が広がった。

触れるものを腐らせていた闇が、シュワシュワという音を立てて、透き通った「液体肥料」へと変換され、雨のように街へ降り注ぎ始めたのだ。


「ギ、ギィィ!? 私の絶望が……私の力が、ただの栄養剤に……!?」


アステリオスが放つ憎悪の魔力は、このコンポスト装置の「反転・分解」機能によって、一切の害を奪われ、極上の肥料へと変えられていく。

廃墟と化した王都の石畳の間から、見たこともないほど美しい極彩色のアスフォデルの花々が咲き乱れ、毒の霧はミントのような清涼な香りに変わった。


「……ゼノス様、これではまるでお祭りですね」


ミーシャが呆れたように笑う。

王都の人々を襲っていた魔物は、この「光の雨」を浴びた瞬間に、なぜかおとなしい『ポメラニアン』程度の魔獣へとデバフ(弱体化)され、瓦礫の街は一瞬で「花とポメラニアンの楽園」へと変貌してしまった。


「おのれえええ! 私は……私は魔王だぞ! 恐怖の象徴だぞ!!」


アステリオスは、自身の禍々しい触手が「自動で花に水をやるジョウロ」へと変異していくのを見て、ついに精神が崩壊した。


「殿下。あなたの憎しみは、この国の再興のための『良い肥料』になりました。……お疲れ様でした」


俺が遠隔操作で出力を上げると、アステリオスの核となっていた魔王の心臓もろとも、最後の一滴まで「高品質な堆肥」へと変換され、王都の土へと還っていった。

王太子という最悪の脅威が、俺の「家庭用(?)コンポスト」によって処理された瞬間だった。


「さて、ミーシャ。王都も綺麗になったことだし、今夜は避難民の皆と一緒に、あのポメラニアンたちと遊ぼうか」

「……ゼノス様。犬と遊ぶのは許可しますが、今夜は我を『一番』に構うと約束してくださいね?」


ミーシャの独占欲に苦笑いしながら、俺は平和を取り戻した(というか別の意味で変貌した)王都の空を眺めた。

だが、この平和も、さらなる「世界規模の騒動」の序章に過ぎなかったのである。


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