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第14話:亡国の足音と、最高級の「ただの家」

ケイトを追い返してから数日。王都の混乱を余所に、俺とミーシャは新拠点の建設に着手していた。

自由貿易都市アルカナのギルドからは「街の中に住んでくれ」と懇願されたが、ミーシャが「他人の気配が多すぎる」と不機嫌になったため、少し離れた風光明媚な湖畔に家を建てることにしたんだ。


「さて、家を建てるなら素材からだな」


俺はそこらへんの岩場から切り出した「ただの石材」と、森で拾った「大蜘蛛の糸」を取り出す。

普通の建築士が見れば正気を疑うようなラインナップだが、俺にとっては十分だ。


「トントン、と」


【スキル:構造反転・極致錬成発動】

【作成完了:神話級アイテム『永劫を刻む安息所エターナル・ヴィラ』】


ものの数時間で完成したのは、白亜の壁に囲まれた美しい平屋。

だが、その実態は。

壁には『絶対反射(物理・魔法共に100%カット)』が施され、窓ガラスは『因果固定』によって爆風すら通さない。庭の噴水からは『若返りの霊水』が湧き出している。


「……ゼノス様。この家、神々の住まう神殿よりも頑丈で快適なのですが」

「そうか? まぁ、ミーシャがゆっくり休めるなら何よりだよ」


俺が家の出来に満足していると、庭の「防犯用自動迎撃ゴーレム(見た目は可愛い子犬型)」がワンワンと吠えた。

境界線に、ボロボロになった一団が辿り着いたらしい。


「……また、王国の方々ですか」


ミーシャの温度がスッと下がる。

現れたのは、王国の騎士団長を先頭にした公式の「使節団」だった。

かつては威風堂々としていた彼らも、今や装備は錆びつき、顔色は土色だ。


「ゼノス・マクレーン殿……。王太子殿下より、親書を預かって参った……」


騎士団長が膝をつき、震える手で手紙を差し出す。

中身を要約すれば――『今までのことは水に流してやるから、特級呪具師として高給で雇ってやる。すぐに王都へ戻り、街を覆うカビと瘴気を消せ』という、反省の色が全くない命令書だった。


「……水に流す、か」


俺は苦笑し、その親書を指先で弾いた。

すると、親書は俺の魔力に触れた瞬間、パサパサと砂になって崩れ落ちた。


「騎士団長。殿下に伝えてくれ。俺は今、この『ただの家』で、ミーシャと一緒に過ごす時間が何よりも大切なんだ。王国のカビ掃除より、この家の庭に花を植える方が、俺にとっては価値がある」

「そ、そんな……! このままでは王国は……民たちはどうなるのですか!」

「それを考えるのは、俺を追い出した王太子殿下の仕事だろ」


俺が冷たく言い放つと、家の防衛システムが作動し、強力な『退去命令(物理的な突風)』が彼らを襲った。

騎士団たちは抵抗する術もなく、湖の向こう側まで一気に吹き飛ばされていく。


「……ゼノス様。今の『断り方』、とても格好良かったです。ご褒美に、今夜は我の手料理を召し上がってください」

「お、おう。楽しみにしてるよ」


ミーシャが嬉しそうに、最近俺が作った『火力を完璧に制御する呪いのコンロ』に向かう。

彼女の愛がこもった料理は、少しだけ「食べるとステータスが恒久的に上がる」という副反応があるが、それは秘密だ。



一方その頃、王都。


「帰ってこないだと!? この私が、わざわざ頭を下げてやったのに……ッ!」


アステリオスは、ついに自ら剣を抜き、狂気の色を帯びた瞳で森の方向を見つめていた。


「ならば、力ずくだ! あの男も、あの女も、私の足元に跪かせてやる!」


自業自得の終焉が、すぐそこまで迫っていた。


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