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027 前夜

 婚約式前日、ガブリエラは酷く不機嫌でした。

 表面上は笑っているのですが、時折真顔で私をじっと見ているのです。最後の夕食となるかもしれないのに、あまり食事が進みませんでした。

 そして父も食事が進んでいませんでした。父は、私とガブリエラを交互に見やると急に肩を落としました。


「明日は二人共婚約が決まってしまうのか。急に寂しくなるな」

「そうね。でも、とてもめでたい事だわ」

「そうだな。無事にシェーラを受け入れてくださると良いのだが」


 不安げな父を見て、ガブリエラは食事の手を止め笑顔を作り口を開きました。


「ふふっ。大丈夫ですわ。お父様。わたくしがちゃんと策を考えてありますの。お父様とお母様は、未来のサリュウス伯爵夫人と、この国の王妃の父母になることを約束いたしますわ」

「まぁ。ガブリエラが言うと信頼できるわ」

「そうだな。それなら安心だ」


 父はガブリエラの言葉に安心したのか、食事に手を伸ばしました。


 食事を程々に終え、私は部屋へ戻りマボロシ茸の小瓶を手に取り窓辺に腰を下ろしました。

 

 ガブリエラは、王子に会いに行ったと聞きましたが、何かあったのでしょうか。

 私に敵意を向けていたので、王子との婚約が決まらなかったのかと勘繰ってしまいましたが、父にかけた言葉は自信たっぷりでした。


『シェーラ。心配なの?』

「ええ」

『毒は中和されているから飲んでも平気よ。昨日だって大丈夫だったじゃない。明日、伯爵を惑わせれば、これからもずっと一緒にいられるんだから』

「そうね。ずっと……。そういえば、フェミューはガブリエラのそばにいなくても良いの?」


 最近フェミューは、マボロシ茸の薬作りで四六時中私と過ごしていました。普段、昼間はどこにも姿を見せないのに。


『うん。ガブリエラが困っている時は助けるって約束だから、それ以外は私の好きに過ごしているわ。でも、それも明日でおしまい』

「おしまい?」

『うん。そういう約束じゃない!――それより、あれこれ考えてないで、薬を飲んで早く寝る! この薬は十分な睡眠も大切なんだから』


 フェミューは私の手から小瓶を掴むと、ベッドまで飛んでいきました。

 私はベッドに腰掛け、小瓶の液体を一口で飲み干しました。蜂蜜のような甘い香りが鼻を抜け、喉から胸の方へとじんわりと温もりが広がっていき、昨日同様、眠気に襲われました。


「フェミュー。おやすみなさい」

『おやすみ。シェーラ。――初めて、シェーラが自分の為のお願いをしたんだもの。明日は、私が絶対にシェーラの願いを叶えてあげるからね』


 フェミューが耳元で何か囁く声を聞きながら、私は夢の中へと落ちていきました。




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