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【官能演習その四:異性と大事な部分の肌を触れ合う】
「……なあ、これやめにしねえか?」
俺はおずおずと提案する。
「なぜですか」
「なぜって、正直洒落にならねえだろこれ」
「元々洒落などではありません」
「いや、そうじゃなくて……」
俺は言いよどむ。
「私は官能演習をやりきらなければならないのです。お願いします」
「……まあ、付き合うって言っちまったしなあ」
しばし宙を見上げ、そして彼女の瞳を見る。凛とした光が眩しかった。彼女に迷いはないのだろう。
「やるよ、やる。だが条件付けてもいいか」
「条件?」
「大事なところ、と言っても性器には触らないこと、だ」
「性器で良いではないですか」
「勘弁してくれ」
「……わかりました。それでは、私は乳房を触ってもらうことにしましょう」
「わかったよ」
気は進まないけどな。
「俺のほうは、腹とかでいいか」
「ええ、結構です。なるべく下半身に近い部分を触りますわ」
真面目な顔でそんなことを言う小鳥遊。ギャグではない。真剣なのだ、本当に。
……ということで、冒頭のシークエンスになるわけだ。
もちろん女性の胸なんて初めて触ったが、ここまで心地良いものだとは思わなかった。抗えない本能的な快感。それは人によっては価値観を一変させてしまうほどに強烈なものなのだろう。俺は何とか踏みとどまっている。
「大丈夫か? 小鳥遊」
「何がですか?」
「いや……」
さすがに気を使ってしまう。しかしもう今の彼女はケロッとした様子だ。特に恥ずかしがっている素振りもない。そういうところは、むしろ尊敬する。
「では、高城さん。お腹を触らせてください」
「はいはい」
俺は服をめくる。腹筋が割れているわけではないが、客観的に見て、それなりに引き締まった腹だと思う。
「では、触ります」
「どうぞ」
そして細い指が、俺の下腹部にぴとりと触れた。彼女は少し固まって、その後感触を確かめるように肌を指でなぞり始めた。
「ちょっとくすぐってえな」
「我慢してください」
彼女の指は、ひどく美しい。その様は何だか幻想的で、夢のようにも見えた。だが腹を伝う実感は、まぎれもなく現実のものだ。
「もっと触りますね」
彼女が掌全体を押し当てる。ひんやりと冷たい温度が、じわりと体に浸透する。彼女は手を動かさなかった。まるで妊婦のお腹に手を当てているみたいに、弱い力でじっと密着させていた。俺はそれをただ眺めていた。どことない心地良さを肌に感じていた。
何分か経っただろうか。やがて彼女は手を離した。
「ふう。何だか不思議な体験でしたわ」
「確かにな」
「高城さんも、私の胸を触ってこんな気持ちになったのですね」
「俺はもっと違う感じだと思うが……」
「そうなのですか?」
「いや、何でもない」
危ない、今のは明らかに藪蛇だった。
それから俺たちはあまり会話もせずに別れた。しゃべくるような雰囲気ではなかったのだ。奇妙な空気だったな、あれは。




