表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ことわざ大百科 ver.短小説  作者: 深夜翔
106/466

河童の川流れ

「あれお父さんだ!」

「えっ?!どこどこ」

「ほら、落ち着きなさい。もう少しでしっかり見えますから」

今日は息子と娘を連れてお父さんの練習姿を見に遊びに来ています。

お父さんは弓道の名人と言われ、過去には全国2位にもなった事のある人です。たまにはいつもと違う父親の姿を見せてあげたいと、お父さんに頼んで連れてきて貰いました。

「あっ練習始まった見たいよ」

練習場所となっている道場には入れないので、入口近くにある窓から中の様子を見る。

一通りの礼法の後、弓を構える。

その瞬間の空気が静まる感覚は、子どもたちも息を飲むほどの緊張感があった。

パシュッ。

静けさも相まってやけに大きく響いた音は、放った矢が見事的に命中した証拠だった。

「当たったよ!」

「すごいっ!」

「しーーっ静かにしなさい」

邪魔にならないよう子供たちを宥めつつ、当たった的をよく見る。当たりはしているものの、中央とは程遠い。

しばらくの後、2本目が放たれる。

今度は音もなく、弦から離れた矢は的のすぐ横を通り過ぎる。

「あ〜外れたね」

「お父さん惜しいっ!」

顔は至って真剣ではあるけれど、随分と緊張しているのが分かる。子どもの前では大会とは違った緊張があるのでしょうね。

「めいじんなのに〜」

「ふふっ」

胸中焦っているであろう父親の気持ちを察して笑いが起こる。

「名人でも失敗はする者なのよ?大事なのはその失敗を次に活かせるかどうか」

「しっぱいはせいこうのもと?」

「あら?難しい言葉知ってるのね〜偉いわ」

そして3本目。

パシュッ。

三度目の正直。見事良い音を響かせて的の中央を射た。寸分違わず中央に突き刺さった矢。

「わっ!すごいっ!」

「あれは真ん中だよね?!」

「そうね、やっぱり父親の意地かしら…ふふっ」

あのやりきった顔。とても名人とは思えないわ。

だけど、子供たちも喜んでいるし、私も久しぶりに見たから満足したわね。

とりあえずチラッとこちらをみたお父さんに、手を横に出して「セーフ」と伝えておいた。


【父親視点】

子どもたちが見ている。

正装で身を包んで弓を持っても、緊張が拭えることは無かった。

いつもの大会ならば、弓を持った段階で切り替えができるというのに。

もちろん久しぶりだと言うのもある。

それでも心臓の鼓動が狙いを邪魔してくる。

まずは試しと一発目を放つが、狙い通りとはいかず的の端に命中した。

とりあえず外さなかっただけマシだと思おう。

そして、2発目。

(やらかしたぁ〜)

いつもと違う緊張感がに、まさかの的外し。

横で待機している道場の先生から、どうかしたのかと心配の目を向けられる。名人とは言っても中身が人である事を忘れてはいけない。

「ふぅーーーー」

(集中しろー。後ろからの視線は気にするな…)

どう見ても後ろにいる母さんは、外したことを面白がっている。なんなら今焦っている事も勘づいているかもしれない。

かっこいい所を見せなければ。

本気で集中して三本目。

見事的の中央に命中する。

ホッと一息。

あくまで表面上は冷静に、チラッと後ろを確認すると、母さんが「セーフ」と笑いながらジェスチャーしていた。

(ああ……あれはバレてるなぁ。帰ったらいじられるやつや)

やらかしたとため息をつきながら、一度成功してしまうと後はそこまで緊張せずに望むことが出来た。

見ていたかどうかは分からないけれど、全部中央だったのだから褒めて欲しい所。

結局帰ったらいじられるんだろうなと考えながら、その日の練習を乗り切ったのだった。



河童の川流れ : 河童でも時に水に流されることがあるというところから、その道の名人、達人と言われる人でも時には失敗することもある。

今日は珍しく早く書き終えました。

いつもこのくらい順調ですと文句も無いんですけど…この気分は気まぐれなので。


どうも、毎日投稿・時間は未定!深夜翔です。

予定が未定はいつもの事です。

何せ見切り発車は変わらずですから!

気合とやる気で続けていきます。


ではまた明日……さらば!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ