苛政は虎よりも猛し
「近くの森にS級の虎が出たらしいぞ」
「近隣の村が襲われてるらしい!」
「ここも危ないんじゃないか」
今日は街が一段と騒がしい。
どうやら、S級の魔物が現れたらしい。
つい先程、A級冒険者の一人がボロボロになって帰ってきたのを見た。一昨日この街に来た時には8人パーティだったはず。他は既にやられたか、助けを呼ぶために一人だけ逃がしたのか。
どちらにせよ今この街のギルドは大変な事になっている。ただでさえ少ないS級冒険者を至急集めなければならないからだ。
こういった独立した国から街は、独自の政府体制がない場合街のギルドが街を仕切っていると言って差し支えない。よって、依頼やら緊急時の対処はギルド職員が総出で対応する。忙しいのはもはや見慣れた光景だ。
「あっ!キョウヤさん!こんな所にっ!探してたんですよ」
宿屋の食堂で飯を食べていた俺に、ギルド職員であるミーニャが慌てた様子でやって来た。
「何か用か?」
「何か用って分かってて言ってますよね?!緊急事態ですよ!S級の冒険者も集められてますし」
「俺はまだB級だが?」
「あなたはその辺のS級冒険者よりもよっぽど強いんですから、依頼を面倒くさがらずに早くS級に上がって下さいよっ!」
そう、俺はほんの一年前にかなり遠くの王国から逃げ出してきたばかり。
騎士団に所属していたが、居場所を失いクソ国から逃げてこの街に辿り着いた。
騎士団のように黙っていてもお金が降ってくるわけでは無かったこの街で、俺はお金を稼ぐ為に冒険者になった。
ちなみに、冒険者と騎士団ではそもそものレベルが違うこともあって、実力は圧倒的にこちらが高い。
なら何故俺は未だB級なのか。
それはランクを上げるには最低限の以来達成数を得なければならないから。
B級相当の依頼を一つこなせば、少なくとも2週間は寝て過ごせる。
根が面倒くさがりの俺からすれば、B級の依頼で充分。上がる意味も上げる意味も無い。
よって未だB級止まりである。
「キョウヤさんの実力を知らない人はこの街にはもう居ませんよ。誰も文句は無いので早く来てください!」
「はぁ……朝から労働するのか…」
実力を隠すのは面倒くさく、一度大型のドラゴンに襲われた時に、街の市民達の身の前でドラゴンをぶった切ってしまった結果が今の状況のきっかけである。
ドラゴン倒したら半年分の生活費、宿泊費、食費が手に入ると知って乗らないわけないだろ?
それから1ヶ月後。
「キョウヤさん……本当にまた半年も依頼受けないつもりですか?」
珍しくギルドの食堂に顔を出した俺に、ミーニャが呆れた顔で話しかける。
「せっかく金が手に入ったのに、わざわざはたらく必要も無い」
今、俺の懐にはドラゴン討伐と同じくらいの金が詰まっている。
大型虎の討伐を適当に達成した臨時報酬だ。
ドラゴンよりも苦戦はしたものの、勝つ事には成功した。
「被害にあった村の復興は終わったのか」
「ええ、荒らされた畑の修復まではいかないですけど、後は村の人達だけで何とかなるそうです」
「それは良かった」
虎の被害にあった村はほぼ壊滅状態だったが、初めに駆けつけたA級の冒険者達が何とか食い止めてくれていたおかげで全滅は免れた。
それでも何人もの人が亡くなり、家や畑も壊されたというのに随分と早い立ち直りだ。
あの森の横にある村は伊達ではないらしい。
「……でもキョウヤさん、何故そんなにお強いのに国から逃げたんです?」
「お前、そういう闇の深そうなこと、普通は聞かないもんじゃないのか?」
「えっそうなんですか?!」
実は、ミーニャや1部の職員には俺が逃げてきた事を知っている。いくら遠い国だとしても、指名手配までされればギルドマスターが黙っていない。
それでも快く迎えてくれて、国への報告すらしないでくれるのは本当に有難い。
「すみません、話せないようなら…」
「まぁ減るもんじゃないしな。あんまり気分のいい話でも無いが」
「大丈夫です!聞きたいです」
「そうか」
俺は存外真剣な顔をしたミーニャに、俺の過去を話した。
俺は例の大国の騎士団、副団長だった。
大国……ではあったし、周囲の国や街から見れば発展した羨ましい国だと思うだろう。
だがな、あの国はクソだ。
あの国王の政治は最悪だ。
国民の生活など1ミリも考えて居ない。
税率は高いし法律も気分。少しでも国王の気分を害せば処刑もおかしな話ではなかった。
そんな国に居たくは無いだろう?
ならば何故そんな国だと知られていないのか。
それは一度入ったら最後、あの国から出ることは許されないからだ。出ようとすれば犯罪者。口封じに殺される。まさに恐怖政治そのもの。
何より腹立たしいのは、当の国王は外見だけは一級品で、他国との取引やら交渉がやたらと上手い。
んで国のイメージの為に国内の建物は全てあの国王が提案した建物ばかり。
そりゃ外からのイメージは最高だろうな。
「ま、まさかそんな国だなんて……」
「だからあそこに近づくのはオススメしない。次いでにあの国に行こうとする冒険者がいたら止めてやった方がいい」
「……それじゃあキョウヤさんは、副団長が嫌になって逃げ出してきたんですか?」
「…いや、だいたいそうだが少し違う。俺はあの国の政治はおかしいと思った。だから国王に意見したんだ。副団長だから国民の生活も割と目にしているからな。
そしたら、『この僕に楯突くのか!』って。それだけで終わるかと思ったら、見せしめに家族を殺された。有り得ないよな。絶望した所に国王から呼び出されて行ったら『僕に楯突くとどうなるか……分かったよね?』だとよ。国民には悪いけど、そんなゴミ王のそばにこれ以上着くことは出来なかった。後は全力でここまで逃げてきたって感じ」
一通り話し終えると、机の上の水を飲み干す。
「だから言っただろ、いい話じゃ無いって」
話を聞き終えたミーニャは、明らかに顔を青くして俯いたままだった。
少し居心地が悪くなった俺は、立ち上がって帰ろとした。
「キョウヤさん!」
「うおっびっくりした」
すると突然大声でミーニャが叫ぶ。
「そんな辛い事があったのに…聞いてしまってすみません」
「気にしていない。そもそもこれはもう過ぎたことで、既に乗り越えた後だ。問題はない」
「そうですね……それは日頃のキョウヤさんを見ていれば分かります。だから私ももう気にしません」
そして、ミーニャは立ち上がると俺の目の前へ。
「でも、この街では絶対にそんな事は起こりません、起こさせません!だから……いつかこの街を好きになってくださいっ!」
あまりに真剣な表情で言うものだから、少しおかしかった。口元が緩むのを抑えて俺は言った。
「安心しろ。俺は既に、この街をこれ以上無いくらいに愛している」
苛政は虎よりも猛し : 悪い政治というものは、虎の害など比べものにならないほど人民を苦しめる。
最近、一日の行動がほとんど同じになってきて、なんだか無駄に時間を消費している感が否めないです。同じ時間のはずなのに、貴重な休みが瞬く間に消えていきます。
じゃあ家から出ろって?行けたら行く(笑)
どうも、小学生の頃は長かったなぁと思う、深夜翔です。
あの頃の一時間はとんでもない量だと思っていました。家に帰ってきて一時間あれば遊びに出かけてましたもん。今じゃ「一時間?中途半端でなんもできねー」って感じです。悲しいですね。
これを読んでくれた皆さまは、どうか貴重な一日を無駄にせず過ごしてください。
ではまた明日……さらば!




