華胥の国に遊ぶ
「あいつ、いつも寝てるよなぁ」
そう言って指をさした先には、気持ちよさそうに寝ている一人の男子生徒。窓際の暖かな位置で寝るには最高の環境。
「中学の時からあんな感じだったからな。タカ〜起きろー次移動だぞ」
「ん……にゃ…」
「こりゃ寝ぼけてんな」
起きてたのは1時間目の前半だけ。
2時間目の数学と3時間目の社会はオール睡眠。
中学からの友人であるショウはやれやれと首を振りながらロッカーへと向かう。
物理の移動に必要な教材は教科書とワーク。
自分とタカの荷物を手際よく回収すると、寝ぼけ眼のタカの頭に乗せる。
「にゃ…な…に?」
「次の物理は移動だぞ」
「そっか……今…立ち上がる」
「いや急げや!」
外野も思わずツッコミたくなるマイペース。
「いいよ、先行ってて。先生にはいつものって言えば通じるはずだから」
「もはやそれが異常なのだと気がついて欲しい」
呆れた表情で手を振り先に行った友人を見送って、ようやく立ち上がったタカを連れて物理室へと向かう。
「相変わらずまったりだな」
「そう……かな…気がついたら寝てるんだよね」
欠伸をしながら廊下を歩く。
「今日は暖かいしよく寝れただろ」
「ん〜昨日よりもベスト」
「? 昨日も同じくらいいい天気だったはずだけど」
「昨日はね…校門前にトラックが止まってて…光が反射して……眩しかった」
「そういうとこは敏感なのな…」
気持ちよく寝る為の条件は案外シビアらしい。
「でも今日はこの後の2時間最高だろ。最後の長文英語の席移動も壁際だったろ」
「……それが…ね。一番前の壁際……午後、黒板のフレームに…反射…する」
「歩きながら寝るなって!」
倒れそうなタカを支えて何とか物理室に到着。
ショウが扉を開けるのと、チャイムがなるのが同時だった。
「おっ、今日は遅れなかったな!ショウもご苦労さん」
この状況に慣れた先生が快く向い入れる。
ちなみにここまでの間、タカの頭の上の教材が落ちることは無かった。
さて、本日ラストの英語の授業。
席移動をしたタカは、横のカーテンをバッチリ閉めて熟睡していた。
「あの〜タカ君…?一番前でそんなに堂々と寝られると…先生も困っちゃうというか…後ろにプリントが行き渡らないのですけど…」
小柄な先生が懸命にタカを起こそうとしている。
一部の男子は、その行動が可愛いと見守っている。
「先生、プリント回しておきます」
これは本当に偶然であるが、隣の席はショウである。
「ありがとうございますっ」
何故か先生の方がお礼を言う始末。
しかしこれも、このクラスでは見慣れた光景なのだ。
誰も不思議に思うこと無く授業が再開されるのだった。
そして放課後。
日が傾き始め、教室にはほんの数人だけが残っている。
「タカ〜学校終わったぞ〜。続きは帰って寝ろ〜」
「みゃ……」
白く整った顔立ちのタカが、夕日に照らされた顔を上げた。目はまだ寝ている。
「ふぁぁ〜〜」
「はい、荷物」
「…あり……がとう」
世話焼きなショウがいて、マイペースなタカがいる。これ程までに偶然の賜物は無いだろう。
二人はゆっくりと帰路につくのだった。
華胥の国に遊ぶ : 好い気持ちで昼寝をすること。
※ 華胥の国(「列子-黄帝」にある故事で)とは、中国古代の天子、黄帝が昼寝の夢に見たという理想郷。人々は自然に従って生き、物欲、愛憎なく、生死にも煩わされることなく良く治まっていたという国。
普段なら自転車で移動する距離を何となく歩いて見たら有り得んほど足が痛いです。
やっぱり2週間も引きこもっていると、足腰が軟弱化してきます。
どうも、半引きこもり、深夜翔です。
引きこもり体質ではありますけどね。
動くの面倒ですし、太陽の光も大概邪魔ですし、体力ないですし。
そして、今回のお題で眠そうな人を想像していたらものすごく眠くなってきました。
自分、寝てもよろしいか?!
ではまた明日……さらば!




