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初見殺しの有栖さん  作者: 篝茉莉
第一話
10/21

まさかの三回目

痛い。

体全体が痛い。

俺昨日そんな激しい運動したっけ。

…ダメだ、思い出せない。

というか今何時だ?

俺は目を開け、急いでいつもスマホを置いている枕元を確認する。

「痛った!!!」

なんだこの激痛は!明らかに筋肉痛の痛みじゃない。

俺本当に昨日なにしたんだ…

「涼花…?涼花起きたの!?」

何故か恵梨の声が聞こえる。

「いや、お前何勝手に人の部屋入って…」

どこだここ。

周りを見まわす。俺の部屋じゃなくて病院?だが、部屋には俺以外の患者は見当たらない。何が起きてんだ?

あれ、俺あの事故からずっと寝てたってことか?

記憶が正しければ中学二年の頃。

おじいちゃんが轢かれそうになってた時に、思わず全速力でおじいちゃん吹っ飛ばして俺が轢かれたはず。

ってことは高一になったのも夢だったのか?…悲し過ぎるだろ。

今の現状に至るまでの推察をしている俺の横で、恵梨は涙を流しながら誰かに電話し始めた。

多分美鈴だろう。

「あっ!美鈴!?涼花が目を覚ました!早く来て!」恵梨は伝えたいことだけ言って電話を速攻切った。

「ねぇ、恵梨、俺どんくらい寝てた?」

「明日で丁度一か月かな…ずっと目覚まさないからもう駄目だと思ったよ…馬鹿。」恵梨は泣きながら答えてくれた。

多分俺が恵梨と同じ立場になっても同じように泣いていると思う。俺ら血のつながった家族はもう三人しかいないから。

「え、じゃあ運動会そろそろじゃん!俺出れないの?」

「何言ってんの涼花。あんたもう中学生時代が恋しくなった?」

え?何言っての?

そう言いかけた瞬間。スライド式のドアが勢いよく開き、息を切らしながら美鈴が入ってきた。

いまいち状況が理解できない。

そこで、ドアの前で立ち尽くしていた美鈴が「ほら、入りなさい。恩人が起きたわよ。」と部屋の外から誰かの腕を引っ張り、中に連れ込む。

そこには夢で見た倭鳥さんの姿が。

「これまだ夢?それともドッキリ?それとも俺やっぱ死んじゃったの?」思わず俺はその場の皆に問いただす。

「現実。」美鈴が言い切る。

だっておかしい。俺はまだ高校生になってないし、そもそも夢の住人である倭鳥さんが現実に居るわけないのに!

俺含め、皆困惑していた中、恵梨が閃いた!と言わんばかりの顔で「涼花、今から私がする質問に答えて。今涼花は何歳?」と俺に質問してきた。

「十四ちゃい。」

「本気で言ってる?」真剣な表情で美鈴が俺の問いに疑問をぶつける。

「うん。」

「じゃあ、マリアとか白ちゃんとか知らない?」ここで、今までだんまりだった倭鳥さん(?)が俺に問う。

「なんで俺の夢に出てきた奴の名前を倭鳥さんが知ってるんだ…!?」

頭で考えていたはずの事を、ビビりすぎて思わず声に出してしまった。

「えっ、私の事覚えていたの?」倭鳥さん(?)も吃驚する。

「だってそりゃぁ、一目惚れした子だもん、名前くらい覚えちゃうよね…って俺に何言わせてんだよ!」

倭鳥さん(?)が顔を真っ赤にして照れる。

「いやお前が勝手に言ったんだろ。」と冷静な突っ込みをかます美鈴。

「ていうか君、倭鳥さんなの?そもそもなんでここにいるの?」話せば話すだけ疑問が増えていく。が、徐々に現状が把握でき始めた。

「涼花はこの子を守った代わりに車に轢かれたんだよ。もうこれで三回目の身代わり事故だしさ。なんでよくこんなに危ない現場に居合わせちゃうの!?」

説教じみた声だが、ようやく俺の存在を認識したのか、その場で美鈴が泣き崩れる。

「三回目…?俺二回しか記憶ないんだけど。」

一回目は小六の頃。轢かれた理由は中二の頃の二回目の事故とほぼ同じ状況。

「もしかしたら今回は事故起こした時の事を忘れてるのかもしれないね。」

また知らない声。開けっ放しの扉から聞こえたその声の主は、ゆっくりとこの部屋に入ってきた。

「でも先生、学校に行ってた記憶はあるみたいですけど…」

もう泣き止んだ恵梨は先生、医者に質問した。美鈴はまだ泣いたまま。

「あんまり心配しなくてもいいよ。別に大した記憶じゃないんだし。」

適当だなこの医者。

「はぁ。じゃあ俺はいつ退院できます?」

「あと一週間は安静にしていなさい。一週間後に問題なく歩けるようなら退院してオッケーだよ。」

一週間か。

ってことは俺は今高校生なのか。

「有栖さん…私倭鳥だよ…」まだ顔を赤くした倭鳥さんが俺ら三人のうちのだれかを呼ぶ。

「え、本物の倭鳥さん!?あ、あと苗字だと紛らわしいから俺の事は涼花って呼んでくれ。」

「あ、はい…涼花さん…」

本物だと分かった瞬間、心臓がバックバクになったが、さりげなく下の名前で呼ばせることに成功させてしまった!

「あの…涼花さん。私の不注意であなたがこんなけがをすることになってしまって…ごめんなさい。」

「じゃあ責任取って結婚してもらわないとだね…」

いつの間にか泣き止んでいた美鈴が倭鳥さんに冗談を言うが、倭鳥さんは「は、はい。」と返事をしていた。

「お前ら。これ以上俺の容態を悪化させたくなければ早急にこの場から立ち去れ。」

俺は無理やり真顔を作り、脅すような声で三人を追い出した。

「すみません先生、騒がしくさせてしまって。そうそう、退院したら俺は運動しても大丈夫ですか?」

「構わないけど、痛みを感じたりしたらすぐに運動をやめるんだよ。それと三回も事故してるせいかわからないけれど、君の体は異様に再生速度が速い。多分来週には完治してると思うよ。」

「そうですか。」

「じゃあ私はそろそろほかの患者さんのところに行くね。お大事に。」

そういうと先生も俺のいる部屋から立ち去った。



読んでくださってありがとうございます。

今日もあと二話投稿予定です。


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