蠢く音
書きたいものが出来たので、前回の小説と並行することを諦め新シリーズです。日本語難しい。
前回の連載小説を編集して作りました。
「あなたには忘れたいこと、忘れたいことがありますか?」
全く人と喋らない事で有名な彼女から、突如こんな言葉をかけられたらきっと誰でも驚く。言葉の意味不明さ、そして突然の出来事で時間が一瞬止まった気がした。
私はクラスの中では、中心にもいないハブぶられてもいないいわゆるB軍に位置していた。だからクラスの誰とでも日常会話くらいはかわせるし、順調に仲を深めていけている。昔から人付合いが好きで、話したことのない人と話しかけるのは、初めて見る本を読む様な心地がして好きだった。だから同じクラスになった人とはある程度会話をしたし、充実した時間を共にした。私がこれまで所属してきたクラスが、どこも穏やかだったからできた事だとも思う。
けれど、彼女とは会話ができなかった。何度か話しかけた事はあったが、一方的に言葉を渡しただけで、彼女の口は動かなかった。私はこんな事、今まで経験したことがなかった。みんな話しかけられたら何かしら返してくれた。普段話さない子も、話しかけるのが苦手なだけで、本当は話すことが好きなんだ、と私は感じていた。しかし、彼女は私の常識を覆した。
「ねえ、名前なに?私、隠館 澄子」
「......。」
彼女は黙って名前の書いてあるノートを差し出した。
「あ、もしかして喋れない感じ...?ごめんね...?」
「......。」
首を横に振る。
「えー、なら喋ってよー変な心配しちゃったじゃん」
「......。」
彼女は何一つ言わなかった。タイミング悪くチャイムが鳴る。仕方なくその時は席についた。
こんな耳障りなチャイム、初めてだ。そう思った。その後、数回声をかけたけれど、彼女の反応は変わらなかった。私は諦めた。世界に裏切られた感じがして、私は宙を浮いていた。彼女のその雰囲気とは対比的な真っ直ぐな瞳が、ただじっとこちらを見つめるのが、なんだか耐えられなかった。今も、そう。ただ、じっと、真っ直ぐな瞳で、私を見てる。
「な、どうしたの急に」
自分の頭は困惑状態なのに、体は冷静だった。心と体が一致しなくて気持ち悪い。
「...忘れたいこと、ありますか?」
私の言葉は残らず、どこかに消えた。彼女のひどく澄んだ声が残る。私はまだ宙に浮いている。
「いや、ごめん。ちょっと突然過ぎて...え、忘れたいこと?」
心は戻ってない。
「そう、忘れたいこと。...ありますよね?澄子さん」
戻ってきた。嫌な戻り方をしてきた。心臓がどくんどくんと気味の悪い音を立てて、ぞおっと背筋が凍った。一致した2人はお互いを押し付け合う。心臓の音はやけにリアルな感じがして、生きている感じがした。
「何言ってるの...ほんとに突然...」
ドクンドクン
「すみません、言い方を変えればよかったですね」
ドクンドクンドクン
「え...?」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクン
「あなたが」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
「私が」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
「」
......。
ああ、真っ赤なジュースが、時間が逆立ちした。
後味悪いですよね、計画通りです。ここからもたぶん後味悪いです。でもその分感動も見せたいですね。




