竜舎の長い一日(後編)
風を切る竜の羽音が聞こえ、私は目を覚ました。
一時間? たぶん二時間は寝ていないだろうが、休んだだけのことはあった。体がだいぶ軽くなっている。
聞き慣れたあの音がするという事は、天剣と話を付けられたということだろう。
傍らの友人の子はまだぐっすり眠っていた。
竜舎の扉を開けて外を見ると、まさに彼らが地に降り立つ瞬間だった。
一級装備――今も呼び方は変わらない――を身に着けた竜騎士が三人。最小の戦闘単位にして通常事態であれば最強の戦力が降り立とうとしていた。
どうやら自分も未だに竜騎士団の気分が抜けきらないらしい。退いてもう何年も経っているのに、一級装備だの戦闘単位だのと考えてしまう辺り。
今の私はただの風竜だ。好きに生きるのが習いだというのに。
「おかえり、我が相方。そして来てくださったことに感謝する、竜騎士の方々」
まだ若そうな、と言っても三十手前ぐらいにはなるだろうが、先頭に立つ騎士の姿を見つめる。
「初めてお目にかかります、数年前から西の詰め所の隊長を務めている者です。竜舎長からも相方からも、幾度となく話を伺っております」
「丁寧な挨拶痛み入る。だが所詮は退いた竜だ、気を使うには及ばん」
そして後ろに立つ竜に目を向けた。
「それにしても久しぶりだ、ここで会うとは思わなんだよ、我が友人」
「それは貴方が不義理をしているからでしょう? 貴方の竜舎長殿とは何度も顔を合わせていると言うのに、ちっとも私の方には顔を出してくれないんですもの」
言葉はいつもと変わらず柔らかいが、ひしひしと棘を感じる。不利な状況からは撤退すべきだ。
「子は元気だぞ。今もうまい飯を食べてよく眠っている」
「朗報ありがとう。流石に心配だったから、終わったら会って帰るわ」
ようやくここで竜舎長が口を開いた。
「さて、積もる話をする時間はいつも足りないが、今はとびっきり時間がない。こんな所で申し訳ないが、情報提供と打ち合わせといこう」
我らも元竜騎士団の一員という事もあり、全員で頭を突き合せて考えを詰めていく。
追跡は可能。色濃く残る地竜の匂いを辿るだけだ。例え地中を動こうと、逃しはしない。
敵の規模はどれぐらいか。「国に返り咲く」という言葉がそのまま真実ではないかもしれないが、卵を奪えないまま退却したところを見ると、魔術による地竜の支配が永続的なものではないこと、その戦力の少なさが伺える。帝国の意志で卵を欲したと仮定するには、戦力も方法も稚拙だった。
敵の拠点は不明だが、同じ理由から街中ではないだろう。帝国の力を背景にしているなら別だが、個人や小規模武装集団が竜を使役するには街の中は不都合だ。
むしろ問題はさらわれた者が人質にされかねないことだが、今回は拙速を是とし強襲を基本とする。敵の戦力は天剣の追跡、戦闘能力を以て叩き砕くのみ。王国と風竜を舐めてかかった罪は今日のうちに贖ってもらう。
方針が決まり詰めに入った時点で竜舎長は装備を整えに向かった。それと今日は休んでいる他の飼育員に緊急招集をかけるようだ。
久しぶりに元相方を背に乗せ空を舞うことを思うと、こんな時ではあるが私も気持ちが高揚していく。必ず助け出すから待っていてくれ、我が娘。
さほど時を置かず、三体の現竜騎士団員と、一体の元竜騎士団員が、空に舞い上がった。
王国の北部を緑に染める、広い森が眼下を流れていく。追跡を始めてすでに数時間が経過していた。地竜の匂いは途切れがちだが、確実に近づいているはずだ。
もうすぐ夜の闇が来るため、視界に頼れるのもそう長くはないが、どんな些細なことも見逃すわけにはいかない。逸る気持ちを抑えて哨戒を行っていく。
遙か前方に崖が見えてくる。そこは帝国と王国の境界線だ。踏み越えるべきではないが、ここまで来たなら多分奴らは帝国の中に戻っている。あとは隊長の判断を待つしかないが、もしもここまでだというのであれば――我一人でも進むのみだ。
「隊長より伝達。前方の崖に横穴が見える。探索の目標地点は横穴までとする」
やはりここまでか。だが横穴と言うのはいかにも怪しい。
「西の隊長殿。もしもその先まで地竜の匂いが続いていた場合、我は一人で進むことにする。竜舎長を頼みたい」
「ふざけんな、ここまで来て引けるかよ」
「単独行動は危険すぎます、お勧めできません。その場合は一度引いて王国からの書簡による交渉をお待ちいただきたい」
背中の相方と西の詰め所の隊長から同時に返事が返ってきた。
「それは聞けぬ。娘が待っているのだ」
あっという間に崖が近づいてくる。
上空を四体で編隊を組み円を描くように回りながら匂いを追跡する。確かに横穴から濃く地竜の匂いが漂っている。
「天剣の皆には横穴をお願いする。我は先に進む」
だが、ここから北にまだ娘の匂いが続いている。真新しい地竜の匂いもだ。
「判りました。だが単独行動はやはり許可できません。左翼、二人に付いて援護しろ!」
隊長の言葉と共に、歯切れのいい声が応えを返した。
「了解!」
「……済まない。だがそちらは二人で大丈夫なのか?」
「民間人を守るのが我らの務めですよ。それに天剣の力、あなた方がもっともよくご存じでしょう? 先輩に無様な姿は見せませんのでご安心を」
頼もしい返事を返し、隼もかくやと言う急降下で横穴に向かう姿を送った。
「では我らも参りましょう」
そして向けた視線の遙か前方で。森が吹き飛ぶのが見え、地竜の咆哮が轟いた。
災難はなぜ苦難の最中に起こるのだろうか。
哲学的に考える余裕は今の僕にはない。ないけど考えたくもなるというものだ。ここは崖の真っただ中。小さな足場だけが命綱。小刀一本すら持たない僕たちに、下から現れた地竜にどう抵抗しろと。
新たな横穴を作って顔を出した地竜は、僕たちが機敏には動けない状況だとわかるのだろうか。楽しむかのようにゆらゆらと足元に近寄ってくる。
だけどただ黙っていいようにされるなんて思わないでほしい。人間にだって矜持はある。考える頭も、動く手足もあるんだ。
こっそりと手探りで先ほど見つけた大きめの石を手に握る。たった一つの武器がこれだ。
ぐうっと頭を持ち上げて地竜が口を開いたその瞬間、僕はその石を力いっぱい投げつけた。くらえ、口内ならただの石でも痛いはず!
果たして、効果は覿面だった。一度大きく仰け反った後、喉の奥に石を詰め込んだまま、地竜はするすると穴の中に戻っていった。
お前は土竜かよ。
上から来られてたら、こうはいかなかっただろうな。下からでほんとに良かった。
ついでに首の骨でも痛めてくれるといいんだけど。
「あんた無茶するのね……」
呆れたような彼女の声。だって石しか手元になかったんだ。しょうがないじゃない。
「とにかく今のうちに崖を降りようよ。ここはいくら何でも不利すぎる」
「そうね、それには同意するわ。あと残り半分、地竜のやつが戻ってこなかったらいいんだけど」
「それは期待するしかないかな……僕に風の魔術が使えれば、輪切りにでもしてやるんだけどなあ」
「竜の鱗を舐めてるでしょあんた……」
またしても呆れた顔をされた。幼生の竜しか見たことないから。そんな硬いもんなの?
いや、幼い時に見たあの青銀の鱗は、どんな攻撃も通らないように思えたなそういえば……。
ようやく平らな大地に辿り着いた僕は疲労困憊だった。まだまだ体中が痛いし、さっき無理に石を投げたおかげで右肩の痛みが酷くなった。
それに比べて彼女は元気そうだ。それなりに鍛えてたつもりなのに自信なくなるよ。
「ちょっと休む? って言いたいところだけどもうちょっと進める? 絶対さっきのやつがまた来るからね」
「判ってる、急ごう」
いつの間にか言葉遣いが砕けてしまっていることに気づいた。何故だか、気安さを感じてしまっている。親密さを感じるほど長い時間を過ごしたわけじゃないのに、信頼できる、というのだろうか。
でも悪い気分じゃない。
ただ、体は正直だった。立ち上がろうとしてすとんと膝から崩れ落ちてしまう。
「やっぱりまだ無理そうね、急かしてごめん」
「いや、急ぐよ。次狙われるの絶対僕だし。申し訳ないけどまた肩貸してくれる?」
もう一度肩を借りて立ち上がった。もう少し進めば森の中に入れるし、休む時間も作れるかもしれない。
辛うじて森の中まで逃げ込んだ僕たちは、大きな岩陰に身を預けて休んでいた。
命の掛かった初めての実戦――実際には逃走――に、無駄に緊張して、無駄に体力を消耗してしまった気がする。
浅く落ち着かない自分の呼吸に比べ、傍らの彼女は平然としているように見えて、自分が情けない。
竜騎士に憧れて鍛えてたことは何だったんだ――――……
……――――くそ、喉が渇くな……。
「ねえ、大丈夫? これ飲んで」
と声が聞こえた。あれ? 僕は何をしていた? 一瞬落ちてたんだろうか。
首を横に向けると、心配そうな顔の彼女がいた。どこで掬ってきたのか、両の掌には一杯の水。ごく、と喉がはしたない音を立てた。
口元に持ってきてくれた両手から水を飲もうとしたけれど、こぼれてうまく飲めなかった。少しは飲めたからいいか。
無くなった水を惜しむかのように彼女は両手を眺めていた。
「ごめん、もしかして最後の水だった?」
「ううん、いくらでもあるよ」
いくらでもは言い過ぎだろ。でも気を使ってくれたんだよね、ありがとう。
「ほんとだよ? ほら」
と彼女はむきになってまた両手を見せてくる。え、ほんとだ。なにこれ。
――僕はまだ、飲み足りない。
「もう一杯飲めるならもらってもいい?」
「いいけど、そのままじゃまたこぼれちゃう」
そう言って彼女は考え込んだ。そうだね、さすがにもったいないよね。ごめんよ、君が飲んで。
彼女はもうひとしきり考えた後、覚悟を決めたように自分の口元に持って行った。まさか自分では飲みたくない水とかじゃないよね?
ほっぺたが栗鼠のよう。つつけば噴水のように口から飛び出しそうだったけど、生憎と手を動かすのも億劫なので止めた。
彼女が覆いかぶさってくる。なに、どしたの? 両手で僕の顔を挟む。水でひんやりしている、その手。顔が近づいてくる。何してるの、ちょ、近い近い、え、何目を閉じてん――――――
喉を通っていく水。そして僕は咳込んだ。
「ぶへっ、ごほっごほっ」
「これで飲めた」
彼女はすっきりした顔をしていた。何顔赤くしてんのさ。――違う、ありがとう。
すっ、とそっぽを向いた横顔は、とても可愛らしかった。
「君も少し寝てよ。夕刻になったらまた動き出そう」
僕の瞼は仲良しなんだよ。
また揺すり起こされた僕は辺りを見渡した。
もうだいぶ日が傾いてきている。そうか、もう夕刻だからか。身体は――まだ痛いけれど動くようだった。
「行こう」
と短く告げると、彼女がうなずくのが見えた。
夜の森を歩くなんて初めての経験だ。方向も判らないし魔物が現れるかもしれない。それでも、あの魔術師や地竜に見つかるよりはきっとましだ。
魔術師でもない。騎士でもない。ましてや武器一つ持っていない僕が、それでもこの子と自分を守らなくちゃいけない。
生きて帰り着いて、この場所を竜舎長とあの子のお母さんに伝えないといけない。
地面から、手ごろな石をいくつか拾っていく。またうまくいくなんて思っているわけではないけれど、お守り代わりに。
森の中はもうかなり暗くなってきていた。月明りも木々に遮られてここまでは届かない。目に頼ることができないせいか、やけにいろんな音が耳につく。梟の鳴く声、虫の音、風が揺らす梢の音、獣の遠吠え。僕と彼女の息遣い。
夜の闇を無防備に迎えることが、これほど緊張を強いられることだとは思わなかった。
僕の手をぎゅっと掴んできた彼女の手を握り返して、一人じゃないと安心する。
必ずあの地竜は現れる。その時は今度こそ絶対守ってみせる。
かなりの時間を歩いたようにも、まだ十分と歩いてないようにも思える。
時間の経過も、結局は自分の知る何かと比較しなければ判らないのだと知る。
下生えを掻き分けながら進む僕たちの後方で、地面を破砕する音と、お腹に響くような地竜の低く重い咆哮が響いた。
グルォオオオオオオオオオォォォォォォォォ――――――
来た!
ていうか木を薙ぎ倒しながらこっちに来てる。障害物にもなってないじゃないか、何のために森に入ったんだ! こんな所に居られるか!
木々の間を縫うように手を取り合って逃走する。
しばらく走ってみて判ったけれど、すぐに追いつかれる程には相手も早くないようだ。木を粉砕してるってことはぶつかって速度が落ちてるって事なんだろう。
何を言ってるのか竜の言葉は判らないけれど、時々叫ぶ声は苛立たしそうに聞こえる。捕まったら碌なことにならない予感がひしひしとする。
お互い喋る余裕もなく、視線と繋いだ手だけで向かう先を伝え合っているのだけど、これが気持ちのいいほどに齟齬がない。こんな追われているときでもなければとても楽しいはずだ。
いや、違うか。今も楽しいんだ。だってほら、こっちを向く顔が笑ってる。多分僕も笑っている。
これはまるで去年王都で見た舞台の逃走演劇のようだ。身分違いの男女がお互いの身内に追われながら、それでも笑って苦難を乗り越えていく話だった。見た時は、追われて笑っているなんて所詮劇だなあとしか思わなかったのだけれど。
今は何処までも走っていけそうなほど体が軽く感じる。
そう思っていた、ほんの小さな石に蹴躓いてぶっ倒れるまでは。
必死に体を起こすけれど、今までの疲労が一気に来たかのように足が動かなくなった。
後ろからは森林破壊の権化が近づいてくる音が聞こえる。
足が止まり、後ずさりながら逃げ場を探す僕を見下ろす、赤い目。
諦めちゃだめだ、身体が動かなくなる最後の一瞬まで、
「ごめん!」
僕はそう告げて彼女を思い切り左に投げ飛ばした。反動で僕は右に飛ぶ。転がった先で手近にあった枯れ枝を左手に、右手には拾ってきた石を。
諦めてなんかやらない、石と枯れ枝じゃ英雄になんかなれないけれど、せめて一矢報いてやる。
立ち上がりざまに石を投げつける。ほらこっち向けよ地竜、相手は僕だ。
地竜にとっては痛くもなかっただろうけど、鬱陶しそうにこっちを振り返った。
「今だ、早く逃げて!」
声を限りに叫んで逃走を促した。彼女一人ならもっと逃げられるはずだ。僕より速く、僕より体力があって、僕より判断力がある彼女なら。
「ほらこっちだって言ってるだろ地竜!」
剣術も何も思い出せず、がむしゃらに枯れ枝を振り回す。こんなところ竜舎長に見られたらきっと叱り飛ばされる。だけど、当たらなくてもいい、効いてなくてもいい、せめて時間稼ぎだけでも!
だけど、そんな思いもあざ笑うかのように、逆に地竜の腕の一振りで僕は吹き飛ばされた。へし折れた枯れ枝の半分が、僕のさらに上を飛んでいくのを見送って。
がっ…!
背中を強打してしまったのか、肺からすべての空気を押し出されたかのように息が詰まる。吸うことも吐くこともできない。
霞んだ視界には、こっちに駆けてくる少女の姿。
何やってるんだ竜の下をかいくぐってこっちに走ってくるとかどんだけなの。
「逃げて……って……言ったじゃない……馬鹿なの?」
「判ってるわよ馬鹿だってことぐらい! ごめん、さっさと言っておけばよかった。今度こそ守るから」
「馬鹿な事言ってないで……あいつが来てるから……早く……」
喋るのも苦しいんだってば、早く逃げてくれないかな。身体動かないし置いて行っていいから。
「私も竜なの、言いそびれてごめん……。ロゼッタって言えばわかるでしょ、あたしの可愛い弟」
は…あっ? こんな時に何言ってるんだ、ロゼッタはまだ幼生ですよ。
「物分かり悪いわね、あんた…檻の中でほんとに気付かなかったの? 幼生が消えて、名前も名乗らない美少女が一人。それにあげた水だって突然出てきたでしょ? あれは魔術なんかじゃなくて、竜はそういうことができるの。力の源を知っているから」
確かにまるで魔法か奇跡みたいだったけれど、ね。
「仮に…そうだとして……なんで嘘なんか……」
美少女は全力で無視してやる。
「嘘ついたわけじゃないけど…ごめん。もっと早く言えばよかった。……でもあんたが恥ずかしいこと言うから言い出せなくなったんじゃない……あんたのせいよ」
うわ納得できない、なんで僕のせいなんだ。
「また後でね」
っておい待てってばそっち行くな――そして耳をつんざくような高い高い高音の咆哮。目の前には、成りは小さくとも青銀の竜。
「ロゼ……タ……」
わずか一回。はためかせた翼に全体重を乗せて、ゆらりと体躯を持ち上げる。紛うことなき風竜の姿がそこにあった。
そのまま地竜のすぐ目前に移動して垂直上昇。煽られるかのように地竜もそれを追う。木々の隙間から僅かに見え隠れする竜同士の接近戦は、圧倒的に早い風竜が押しているのは間違いない。威嚇するような咆哮と苦し気な咆哮は縦横無尽に移動している。くそ、こんな森の中じゃなかったら、あいつの雄姿を見れるのに……。
咆哮が下降してくる。そのまま地面にぶつかり悲鳴にも似た声。ものすごい勢いで地面を削りながら二体の竜が滑っていく。小柄な風竜が上に乗り、地竜を押さえつけているのが見えた。視界を越えた先で激突音が聞こえ、また羽ばたく音。
なんだ、ロゼッタ一人の方がずっと強かったんじゃないか。ほんと足手まといだったなあ僕。
はるか上空で戦うロゼッタの声は力強くて。
悔しさと安堵を感じながら身体から力が抜けていく。
グルォオオオオオオオオオォォォォォォォォ――――――
もう一体、違う地竜の声が響いた。嘘だ……くそ、地竜が一体しかいないなんて油断しすぎた。いくら彼女が強くても二対一じゃ相手なんかできない。
先ほどまでとは打って変わって空から届くロゼッタの声は苦しそうなのに、僕はなにも出来ないのか?
一際大きく高い苦鳴が響き渡り、梢を突き破って落下してきた、青銀の竜。地に叩きつけられ、一度だけ弾んで落ちた。
あ……
何も考えられない。拾い上げた言葉はそばからぽろぽろと崩れ消えていく。
ああ……
地面を引っ掻いて少しずつ近寄る。
僕の視界の中で、横たわった彼女はゆっくりと人の姿に変わっていった。
「見つけたぞ、あそこだ」
はるか遠くで響いた地竜の声に最高速で向かう私達だが、辿り着くにはまだ時間がかかる。どうか無事でいてくれ。
しばらくして、先ほどとは異なるつんざくような高音が響き渡る。あれは!
「馬鹿な、あれは風竜の声だ! 他にも風竜がいたのか?」
「違う、あれは娘だ。私が聞き間違えるはずはない。娘が成竜になったんだ!」
森を突き破り、高々と舞い上がる竜の姿。それは月光を受けて、青銀に煌いた。
続けて飛び出してきた地竜との接近戦は遠目にも優勢に進んでいる。再び絡み合うように地に向かう。
激突音と共に再び舞い上がった二体の竜は、明らかに片方の戦意が喪失していた。勝負は決まったも同然だった。
「つええな、うちの嬢ちゃん…」
背中の相方が驚いた口調でつぶやいた。
「当たり前だ、私の娘だぞ。と言いたいところだが、私も驚いている。成竜になってすぐこれほど力をうまく使えるとは思わなんだ。ただ、あの子の父親を考えればそれも当たり前かもしれないがな」
「そういや父親のことは聞いたことがなかったな。心当たりがあるのか?」
「ある。彼女の父親は精霊だ」
「はあ? いや、竜の生態に今更疑問は付けんけどよ……そんなことが可能なのか……精霊なんて姿のないものとしか考えてなかったぜ……」
「人は形にこだわりすぎるのだ。竜が人の姿を取るだけでも十分だろう?」
「まあそりゃそうだが」
その時、さらに地竜の咆哮が轟いた。なんだと、他にもいたのか?
その声を受けて、戦意を失っていた地竜までもが復活している。
「二体はまずい、急ぐぞ!」
娘が嬲られるように二体の地竜から攻撃を受け続けるのを歯噛みしながら見続ける。あと少しで、この手で貴様らを引き裂いてやる!
手が届かぬまま娘が叩き落されていくのを何もできず見送って。
私は絶叫した。
絶対に許さない。絶対にだ。操られていようと構うものか、細切れにしてやる。
――――――どれだけ、どう戦ったのか、まるで思い出せない。血の色に染まった視界の中に二体の敵を捉え続けていたことだけは覚えている。目の前にはただの肉片と化した地竜が散らばっていた。これが二体かどうかを見分ける術はないが。
宥めるようにぽんぽんと首を叩き続ける手にようやく正気に立ち返った私は、背中の相方に声をかけた。
「……すまない……我を抑えられなかった。背に相方を乗せての行動ではないと判っている。相方失格だな、私は」
「いや、俺は大丈夫だから気にするな。たまには今のようなお前を見るのも悪くないさ」
「やめてくれ。恥じ入るしかできん」
「俺の中で、これまでの騎竜技術の存在意義が消え去るほどの驚異的な動きだったよ。誇りに思う。ともあれ、とりあえず二体とも見ての通りお前が倒した。竜騎士たちが上空で警戒してくれているが、今のところ新たな追手はいないようだ。――そろそろ嬢ちゃんのところへ行くか?」
「……ああ、そうだな」
無事だと信じたい。だが、あの状態で落下したら、あれが自分でも無事でいられるか自信はない。
森の中で動くために人の姿に戻って歩き始める。
なんだろうか、このひどく頼りない気持ちは。何かに縋るようなそんなものは竜は持ち合わせていないはずだ。少なくとも今まで自分が持ったことはない。
だが今は何かに縋りたかった。傍らを歩く相方の横顔。そっとその背中の服を掴む。ちらっとこっちを見たのが判った。普段大雑把なくせになぜ今だけ気づいてこっちを見るのか。その手は何だ、なぜ私の肩を掴む。
だが悪い気分じゃなかった。少なくとも今は安心できる。
激しい闘いの痕に辿り着く。森の中に一本道が作られていた。その豪快さに乾いた笑いが出てきそうだ。そうだ、これほど強い私の娘が、どうにかなっているはずはない。
「おい、あれ見てみろ」
相方の声。その指の差す方に視線を向けた。
あれは、竜騎士に憧れる少年と、私の娘。倒れ伏してはいるが、手を繋いで、なんだ、元気じゃないか。ゆらりと視界が揺らいだ。
ぽろぽろと涙を零し始めた、三十年来の相方を少しだけ強く抱きしめた。
まったく俺の相方は可愛すぎる。自由奔放で天衣無縫で、見たことのないこんな涙まで見せやがる。
今まで我慢して来たがやっぱり俺はこいつが居なきゃダメかもしれん。こんな性格だから惚れるまいと思ってたのに、きっと初めて会った時からもう惚れちまってるんだろうなあ。
あ…ああ…ああああああっ!
手を伸ばす、もう少しで彼女に届く。手も、足も、腰も、顔も、どこもかしこも傷だらけになった彼女の横に。
重ねた手はまだ暖かい。
起きろ、起きてくれ、なんで目なんか瞑ってるんだ、絶対守るんじゃなかったのか、後でねって何が後なんだよ!
掠れた声で何度も呼び掛ける。
しばらくして、うっすらと目が開いた。
「ああ……良かった……」
「ん……大丈夫…だよ」
「……まったくそうは見えないけど」
「あんたこそそんな掠れ声で泣いて」
な、泣いてないよ!
「二体相手してたらドジ踏んじゃった……約束したのに守りきれなくてごめんね。もう、歩く気力も残ってないよ」
「いいよ……僕たち頑張ったよね? 僕は守られてばっかりだったけどさ」
強張る頬で笑おう。背後から、何かが近づいてくる音が聞こえるから。もう話せなくなる前に、全部。
「んー。あたしはたくさん守ってもらったと思ってるよ。最初に連れ去られた時から今までずっと、最後まで頑張って身体張って逃がそうとしてくれたじゃない」
さくり、と、背後で草を踏みしめる音が聞こえた。ああ、もうここまで来たのか。もっと色々言いたかったのになあ。
「おい、色男」
――って、え?
「いちゃついてんじゃねえよこんな所で。坊主にゃ十年早え」
今のは竜舎長の声……
「ふむ、私の娘とずいぶん仲良くなったようだな」
これは美人さんの声!
軋む身体を必死に起こして。二人を見上げて文句を言った。
「もう、遅いですよ二人とも。死ぬかと思ったんですからね?」
返ってきたのはいつも通りの竜舎長の言葉だった。
「うるせえよ、そんな元気があるんならお前だけここから歩いて帰れ」
ごめんなさい動けないのでどうか連れて帰ってください。
ロゼッタのお母さんの背には竜舎長と僕とロゼッタが乗って帰った。重すぎやしませんかと聞くと、これぐらい背負えなくては竜はやれん、と言われた。意味はよく判らないけどすごい自信でした。
懐かしい我が家、竜舎に辿り着いたのは深夜だった。
半日も離れたわけじゃないのに、すごく懐かしい。
あり得ないほどの大冒険だったからだろうか。僕はただ巻き込まれただけの事故のようなもので、傍観者みたいなものだったかもしれないけれど、それでもただの人には体験できないような事だったに違いない。竜騎士ならあり得るのかもしれないけど、こんな生活をしてたら神経が焼き切れてしまいそうだ。
そんなことを口にしたら、
「竜騎士はもっと地味な仕事だよ、勘違いしないでほしいね」
と西の詰め所の隊長さんに怒られた。
「いや怒ってはいないよ。君たちはすごいと思う。おかげで事件を未然に防ぐことができたしね」
僕は色んなことが判ってない。全然情報が足りてない。
「言えることは後日教えてあげるから、また西の詰め所においで」
こんな風にいつも西の詰め所の隊長は優しい。
「現金すぎるわお前は」
竜舎長はいつもこんな感じです。
「だからうるせえよ、坊主は鍛え方が足りないのが判ったから鍛錬を増やす」
やっぱりいつもながらひどいです。
あんなことがあったばかりだというのにまるで普段通りな会話を聞きながら。
疲れてうつらうつらし始めた僕たちを、皆が抱えて部屋に運んでくれた辺りまでは覚えています。
翌日、昨日の皆で集まって朝ご飯を食べる用意を始めたころ。
美人さんに連れられて、ロゼ……彼女がこちらにやってきました。お母さんと同じ部屋で寝てたんだってさ。
「おはよう、身体は大丈夫?」
「あ……お、はよう、君こそ大丈夫?」
一瞬言葉に詰まったけど僕の事後処理は完璧です。
「見とれてんじゃねえよ」
なんでこっち見てるんですか竜舎長。今日の朝食は人数多いんですから手を止めないでください。
「あたしは竜だからね、あっという間に回復するよ」
そう、彼女は竜なのです。それも僕が昨日の朝までお世話していた幼生なんですが。
今の彼女は僕と同い年かちょっと上ぐらいの、可愛い女の子になっています。
そして、僕の昨日の大冒険の相棒でもあります。
――何とか飲み込んでは見たものの、まだ釈然としないものがあるのですが。
「僕の方はまだ体中ぎしぎししてる感じだよ。背中も痛いし」
「そっかー、ほんと守り切れなくてごめん」
そういいながら背中にそっと手を当ててくれるのはうれしいのけどうれしくないのです。
痛い、痛いから!
「手止めんな半人前、坊主の戦場は目の前の鍋だ」
前門の虎、後門の竜、そんな感じの言葉がなかったでしたっけね。
「お二人とも座っててください」
いいです、僕は鍋と格闘するのです。もうすぐいい感じに出来上がるからそれまでの辛抱と言うものです。
「そろそろ少年も一人前に扱ってやってもいいんじゃないですか? 竜舎長」
笑いを噛み殺そうとして失敗した顔をしながら、隊長が助け舟を出してくれた。
その笑みはちょっと納得できませんがもっと言ってやってください。
「はあ? 竜のちび助も坊主もどっちも尻に青い殻くっ付けたまんまのひよっこだぞ? こんなもんこのまま世に出したら即座に世間様に迷惑かけちまうわ」
「そうはいっても立派に立ち回って見せたじゃないですか。この年頃の少年にしちゃ誇っていい結果だと思いますがね……ま、敵も竜なら味方も竜でしたし、守られてた感がないわけじゃありませんがね」
う、そこを言われると痛いですよ。石ころと枯れ枝しか手になかったとはいえ、自分でも役立たずだった自覚はあるのです。
「成竜を相手に一歩も引かず戦ったのだ、見事なものじゃないか。私の娘を託すに不足ない」
お、お母さん……。評価はうれしいのですが、貴方の娘様は大層な暴れ者でございます……。託されても僕の体力で太刀打ちできるとは到底思えないのですが。
「うん? 森の中での様子はなかなかお互いに好印象だったと思ったのだがな。私の勘違いか?」
そ、それは。まだどうにも彼女を竜だと信じ切れていなかったからと言いますか。
「人の姿であれば良いのか? どっちも変わらんと思うが、愛を囁くには人の方が良いか。ふむ、若いな」
いやいやそういう話じゃなくてですね?
「あたしのこと可愛いとか一生忘れられないとか言ったくせに。騙して弄んだのね」
ふいっと横を向いた、ロゼッタの小さな声。う…。むしろ騙されてたのは僕で、その話は幼生の時の君の話なのに。急に自分がものすごく悪いことをした気分になってくる。
混乱した心のまま鍋を見やると、危なく焦がしそうになっていた。
急いで鍋を火から外して机に運ぶ。
「皆さんお待たせしました。こんな大人数分を作ることなんてそうそう無いのでうまく出来たか判りませんけど、食べてみてください」
全員分のお皿によそってパンと一緒に朝食を頂く。
「ほう、なかなかうまいじゃないか。また食べに来るかな」
「隊長、これ異国の味ですよね。うちの隊でも出すようにしましょうよ」
「おまえこれ焦がしかけただろう」
「あらこれは。あっさりしたスープなのにパンに合いますわね」
「……」
皆が口々に褒めてくれて、多分にお世辞込みだと判っていてもこそばゆい。若干一名辛辣な言葉もあるけど気にしない。
忙しい竜騎士の方々と、うちの竜舎長、それにロゼッタのお母さんが皆まとめて席を立つ。
これから様々な後始末と次の布石を打っていかないといけないらしい。
「晩には帰ってくるが、しばらくは毎日あっちに行くことになりそうだから、ここはよろしく頼むわ」
とは、竜舎長の言葉。も、もしかしてそれは僕を一人前と認めてくれたのですか?
「阿呆か調子にのんな、全員でしっかりやれつってんだよ」
ですよねえええええ!
「それとちび助とちゃんと仲直りしとけ」
う、やっぱり気づいてたんですか。僕も自分で失敗したとは思ってます、どうすればよかったなんて判んないですけど。
洗い物をしている間にいなくなったロゼッタ。あの後一言も口を開かなかったな……。
「頭使うようなこっちゃねえからな? 自分の言葉で話すだけだ」
「そう嫌ってやってくれるな。誰に似たのか縛られない性格になってしまったが、我が娘ながら不誠実な事はせんと思うぞ」
竜舎長が何か言いたそうにしていたが口を噤んだままだった。
そこで余計なことを一言いうのが竜舎長だったはずなのに……!
王都に向かう皆の見送りを終えて、さて何をしようかと思う。どっちにしても今の体じゃ力仕事なんて無理だし、そのためにしばらくは他の先輩飼育員が交代で代わりに入ってくれることになっている。
って、問題を先送りにしても意味がないことは判っていて。
結局何を言うのかも決まらないままに彼女を探すことにした。きっと竜舎に戻っているのだろう。つい昨日まであの子の行動範囲は竜舎の周りしかなかったのだから。
竜舎を囲む第三柵の北端、物見台の屋根の上に彼女はいた。
尖った屋根の上なのに何の不安定さも感じさせず、とても自然に立つその姿は一枚の絵画のようで、息を呑んだ。
同時に、遠くを見つめるその視線が、彼女が消えてしまいそうな心のざわめきを掻き立てる。
髪が風になびくのは見えているのに、そこだけ時が止まったような錯覚。
「ロゼッタ」
気が逸った僕は思わず声を掛けてしまった。何を話すかも決まってないのに。
「……そこは危ないよ、降りてきなよ」
見上げたままじゃ首が痛いから、降りて来てもらおう。
「危なくないよ。あたしは竜だもの。…知ってるでしょ」
その視線は変わることなく遠くを見ていて、それでいてどこも見ていないようにも思えた。
「知ってるよ。…でも心配ぐらいはさせてほしいかな。僕は一応君の担当だしさ」
「……そう。……ええ、そうよね。怪我なんかされたら色々困るよね」
しまった、また間違えた。
「違う! そんな話はしてない!」
「そんな話でないならどんな話? いいわ、降りればいいんでしょ」
軽やかに物見台の梁を伝いながらあっと言う間に地に降り立つ。昨日より更に身軽に。
「ね? 昨日より身体の使い方が判るの。違うんだって判っちゃった」
寂しそうな微笑みに胸を抉られる。
僕はそれに答えずに気になったことを聞いてみた。
「何を見てたの? 何か見えた?」
彼女はしばらくさっきと同じ方向を見つめ続けて、ため息をついた。
「…なんにも。なんにもよ。最初は地竜の奴と戦ったところを。遠すぎてそれがどこかすら判らなかった。お母さんの行こうとしてた妖精郷も、南の砂漠も、王都だって碌に見えなかった。世界って広いのね。成竜になって初めてこんなこと考えたよ」
「そうだね。僕だって碌にこの国のことすらまだ判っていないけれど、君たちはずっとこの竜舎と遊び場が世界だったものね」
「さっき物見台に上るまでは、もうここを出て行こうって思ってたの」
やっぱりそんなこと思ってたんだ。
「だけど、何も知らないことに気付いちゃった。体力があっても力があっても、あたしは何も知らない。他者と何を話していいのかすら判らない」
「……もう少しここで色んなことを学んでからでも遅くはないんじゃない?」
「……だってあたしのこと嫌いでしょ? 迷惑掛けたくないから出て行こうと思ったのになんでそんなこと言うの?」
おおう……意味が分からない……。
「いや嫌いなんて思ってないよ」
「嘘ばっかり! 年上だから嫌いなの?」
だから違いますって。
だいたい年上ってつい昨日まで幼生だったでしょう、なんでお姉さんぶるかな。見た目的にも精々同い年です。
「だって! お母さんに言ってたじゃない、自分には無理だって! あたしは暴れん坊だから任されたくないって!」
目尻に少し光るものが見えて。
え……ここで上目使いの涙とか…それは卑怯だと思うのですよ……。
可愛い、と、思ってしまうじゃないか。
「この九年間、同じように過ごしてきたと思ってたのに、君はいつの間にかすごくしっかりしてて、あたしは置いていかれてた。沢山守ってもらってるのになにも出来てなくて、昨日ようやく返せるようになると思った。なのにまたあたしのこと守ってばっかりで」
僕こそたくさん守ってもらったと思ってるんだけどなあ。
「だから守るってわざわざ言葉にしたのに、結局最後も守れなくて、泣かせるつもりなんてなかったのに」
そんな風に泣かれるのは心に来ます。最後なんて間違いなくロゼッタが居なかったら僕は死んでたんですよ。
君があんなにぼろぼろになって守ってくれて、泣かないわけないでしょう……。ああもう、ちくしょう、判ったよ、認めるよ。君が怪我するのを黙って見てるなんてできない、君がどっかいなくなったら絶対心に穴が開くよ、こんな風に君が泣いてるのはすごく嫌だ。
どうにか泣き止んでほしくて、たった一言に全てを込めて伝えた。
「僕がちょっとぐらい怪我しても、ロゼッタの笑ってる方がいいよ」
満面の笑みで飛びついてくるロゼッタにそのまま押し倒された僕は、背中を走る痛みにぐぅと呻き声をあげてしまった。けれど今も頬を伝う涙を見てしまうと、受け止めた手を離すことは出来そうになかった。
でもまだ好きとか言ったわけじゃない、お互いゆっくり考え―――
「あたしが一生守ってあげる! 初めての口づけはもうあげちゃったし」
だからそれ立場が逆だってば。いや、竜としてなら合ってるのか?
というか爆弾発言を創作するのやめてくれないかな。口づけじゃなくて緊急避難的なアレだったよね?
竜騎士に憧れる僕だけれど、気質的には平穏な毎日が似合っていると思う。
例え竜舎の中が廃屋になったって、僕はきっとそれが好き。
だけどロゼッタが居なくなるぐらいなら、石ころと棍棒でまた戦うよ。……でもできたらそういうのはない方がいいかな。
竜騎士に憧れる、でもちょっと締まらない少年の、とある一日の冒険話はここでおしまいです。
いつか二人はともに空を舞うのか、竜舎長と美人さんの行く末はどうなるのか、因縁ありそうな二人とか、とかとか書けなかったことがいくつもあって要反省。
情景描写はもっと入れた方がいいのかな。俯瞰視点にしないと入れにくそうだけど、そういうのも考えないと伝わらないのかも。