第7話:魔王軍幹部の焼肉パーティーと、聖教会の『地獄の業火壇(※カセットコンロ)』
「……おい、ヴィンセント。お前、私のポテトチップスを勝手に食べたな?」
「ふん、吸血鬼である私に供物を捧げるのは当然だろう。それよりエレノア、その『黒き神の血』を一口よこせ」
プレハブ小屋の中では、二人の魔王军幹部がまるで放課後の部室にいる学生のように、ジャンクフードを奪い合っていた。
かつての威厳はどこへ行ったのか。だが、彼らが満足すればするほど、俺のポイント(pt)は魔石の提供によって増えていく。現在の残高は四百五十万pt。
「……よし、今日は開店一週間記念だ。豪華にいくか」
俺はウィンドウの『食品・肉類』カテゴリーから、これまで手が出せなかった最高級の品をポチった。
【国産黒毛和牛・特上カルビセット(1kg) 特価:20,000pt】
【カセットコンロ&焼肉プレートセット 特価:5,000pt】
异次元ロッカーから届いたのは、美しくサシの入った、宝石のように輝く赤い肉の塊。そして、黒い金属の箱だ。
俺はプレハブのテーブルにコンロを置き、カセットボンベを装着した。
『カチッ……ボッ!!』
つまみを回すと、青い炎が輪になって燃え上がる。
「「なっ……!!?」」
エレノアとヴィンセントが、弾かれたように椅子から立ち上がった。
「アルト……貴様、今何をした!? 無詠唱、無陣で、これほど安定した純粋な火の魔力を顕現させるだと!?」
「この青い炎……ただの火ではない。魔力密度が極限まで高まった『地獄の業火』の縮小版か!? まさか、この小さな鉄の箱は、上位火精霊を封印した禁忌の祭壇なのか……!」
(いや、ただのイワタニのコンロなんだけど……)
俺は二人の驚愕を無視して、熱くなったプレートに和牛を並べた。
『ジューーーーーッ!!』
香ばしい脂の匂いと、肉が焼ける至福の音が部屋中に充満する。
「な、なんだこの匂いは……! 私がこれまで食べてきたドラゴンのステーキが、ただの消しゴムに思えるほど芳醇な……!」
「ぐぬぬ……吸血鬼である私が、これほどまでに食欲を支配されるとは……!」
二人がヨダレを垂らして肉を見つめていた、その時だった。
「——そこまでです、魔族の眷属ども! そして、邪悪な術師よ!」
プレハブのドアが勢いよく開き、銀光りする甲冑に身を包んだ一団がなだれ込んできた。
胸には聖教会の紋章。王国のエリート、聖騎士団だ。
先頭に立つ金髪の聖女が、杖を構えて俺たちを指差した。
「地下十層に突如現れた『白亜の魔城』……そして、この世のものとは思えない禍々しい香気! やはり、ここで禁忌の暗黒儀式が行われていたのですね!」
聖女の視線が、青い炎を上げるカセットコンロに向けられた。
「あ、あれを見なさい! あの青い炎……あれこそが、魂を焼く地獄の祭壇! そしてあの赤い肉は……きっと、生贄に捧げられた高潔な騎士たちの……っ!」
(いや、黒毛和牛なんだけど!? 誰が生贄だよ!)
「アルト、どうする? 焼きの邪魔だ、消していいか?」
エレノアが面倒くさそうに黒剣を手に取る。
「待てエレノア、私のニンニク醤油(※ポテチの味)の邪魔をする奴は、私が灰にする」
ヴィンセントが牙を剥く。
最強の魔女と吸血鬼に守られ、カセットコンロを『地獄の祭壇』と勘違いした聖騎士団を前に、俺はトングを片手にため息をついた。
「……あの、とりあえずお肉、焼けてますけど。食べます?」
こうして、迷宮コンビニ『アルト屋』に、新たなお客様候補がやってきたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い」と思っていただけましたら、
下の『★』で評価や、ブックマークをしていただけると、執筆の大きな励みになります!




