第18話:ガチャの沼! 灼熱の階層と『風精霊の魔装(※ファン付き冷却リュック)』
「……アルト、すまない。私の剣を質に入れてもいいから、あと10回だけあの【運命の祭壇】を回させてくれ」
「私だってもう少しで『輝く聖剣(※光るプラスチックの剣)』が出そうなんです! アルト様、どうか前借りを……!」
プレハブ小屋のイートインスペースは、完全に鉄火場と化していた。
エレノアもセシリアもヴィンセントも、手持ちの魔石を全て100円玉に両替してガチャガチャに突っ込み、見事にスッカラカンになっていた。恐るべし、ランダム排出の射幸心。
「前借りは駄目だ。ポイント(魔石)が欲しいなら、迷宮で稼いでこい」
俺が冷酷に言い放つと、三人は絶望したように項垂れた。
「稼ぐと言ってもな……現在、我々が安全かつ大量に魔石を狩れるのは、さらに下の第十一層『灼熱の溶岩洞』くらいだ」
ヴィンセントがため息をつく。
「あそこは常に熱波と火山灰が吹き荒れており、いくら我らでも長時間の狩りは体力が持たんのだ。熱中症で倒れてしまう」
迷宮の深層は、環境そのものが凶悪なのだ。
だが、彼らに稼いでもらわないと俺の店の品揃えも増やせない。俺はウィンドウを開き、『アウトドア・作業用品』のカテゴリーを検索した。
「よし、ちょっと待ってろ。いい装備を出してやる」
【ファン内蔵型・冷却クーラーリュック(大容量バッテリー付き) 特価:15,000pt】
異次元ロッカーから届いたのは、一見すると普通の黒いリュックサックだ。だが、背中の部分に二つの小型電動ファンが内蔵されている。
「これを背負ってみろ。胸のスイッチをポチッと押すんだ」
「こんなただの黒い袋で、あの灼熱の地獄を凌げると……うぉっ!?」
エレノアが言われた通りにスイッチを入れた瞬間。
リュックのファンが『ヴイィィィィン!』と甲高いモーター音を立てて高速回転を始めた。
「な、なんだ!? 背中から、凄まじい勢いで『冷たい暴風』が吹き出してきたぞ!?」
エレノアの銀髪が、ファンから送り込まれる風でブワッと舞い上がる。
リュックの内部と背中の間に強力な気流を生み出し、汗を気化させて体温を奪う。過酷な屋外作業を支える最強の冷却デバイスだ。
「アルト様……! この袋、一切の魔力を持たないのに、まるで背中に『上位の風精霊』が憑依したかのようなすさまじい暴風の結界です!」
セシリアもリュックを背負い、その快適さに目を丸くしている。
「これなら……この背中に常時展開される『風精霊の魔装』があれば、灼熱の溶岩洞でも永遠に狩りができるぞ……!」
ヴィンセントがコウモリの翼をバサッと広げ、狂気じみた笑みを浮かべた。
「よし、行くぞお前ら! ガチャの軍資金を乱獲するのだ!!」
「今日こそ『光る聖剣』を当ててみせます!」
背中からヴイィィィンという強烈なモーター音を響かせながら、ガチャ依存症に陥った三人の最強キャラたちは、熱中症対策のリュックを背負って、灼熱の階層へと飛び出していった。
「……あいつら、完全にパチンコ屋に向かうダメ人間の顔になってたな」
残された俺は、平和になったプレハブ小屋で、一人静かにコーラを啜るのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い」と思っていただけましたら、
下の『★』で評価や、ブックマークをしていただけると、執筆の大きな励みになります!




