第15話:黄金の粉末が化ける『神獣のスープ(※コーンポタージュ)』! 騎士団長の胃袋も掌握する件
「ル、ルンバよ……私に近づくなぁぁっ!」
王国最強の特別調査騎士団長ゼノスは、足元を徘徊する全自動ロボット掃除機から逃げるように、プレハブ小屋の隅でガタガタと震えていた。
聖女セシリアが「大丈夫ですよゼノス団長、その神獣様は温厚ですから」と笑顔で声をかけるが、全く慰めになっていない。
「まあまあ、そんなに警戒しないでください。ただのコンビニですから。せっかく遠くから来たんですし、温かいものでもどうぞ」
俺は彼らを落ち着かせるため、陳列棚からある商品を取り出した。
箱に入った、小分けの袋である。
【粉末コーンポタージュ(3食入り) 特価:150pt】
俺は紙コップにその袋の中身——黄色い粉末をサラサラと注ぎ込んだ。
「ん……? 邪悪な店主よ、お前は何を企んでいる! その黄金に輝く粉はなんだ? まさか、我々を毒殺するための魔法薬か!?」
ゼノスが剣の柄に手をかけ、目を血走らせる。
「だから毒じゃないってば。お湯を入れるだけですよ」
俺はポットから熱湯を注ぎ、マドラーでくるくるとかき混ぜた。
——ふわり。
その瞬間、トウモロコシの優しい甘さと、濃厚なミルクとバターの芳醇な香りが、プレハブ小屋いっぱいに広がった。
「「「…………っ!!?」」」
ゼノスをはじめ、後ろに控えていた騎士たちの喉が、一斉に『ゴクリ』と鳴った。
「な、なんだこの暴力的なまでに甘く、そして濃厚な香りは……!? 黄金の粉が、熱湯を注いだだけで黄金のトロトロとした液体に変わっただと!?」
ゼノスの剣を握る手が、ぷるぷると震えだす。
俺はフーフーと少し冷ましてから、ゼノスに紙コップを差し出した。
「騙されたと思って飲んでみてください。めちゃくちゃホッとしますよ」
ゼノスは恐る恐る紙コップを受け取り、その黄金色の液体を一口、口に含んだ。
「…………ッッッ!!!!」
ゼノスの目から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「あ、甘い……! なんだこの優しい甘みは! 舌の上でとろけるような濃厚なコク、そしてこの小さな四角い物体(※クルトン)のサクサクとした食感のアクセント……!」
彼はそのまま両手で紙コップを包み込み、一気に飲み干した。
「王宮の料理長が三日三晩かけて煮込んだスープすら、この一杯の前ではただの泥水に等しい! これは間違いなく、天界の畑で採れた黄金の果実と、神獣の乳を錬成して作られた至高のスープ……っ!!」
(いや、ただのインスタントのコーンスープなんだけど……)
「店主殿……いや、アルト様!」
ゼノスは床に膝をつき、俺の前にひれ伏した。
「私は間違っておりました! このような優しく温かいスープを創り出せる方に、邪悪な者がいるはずがありません! どうか……どうか、私の部下たちにもこのスープをお与えください! お代なら、王国の経費でいくらでも払います!」
「王国の経費って……まあ、魔石で払ってくれるならいいですよ」
こうして、俺の『異世界コンビニ・アルト屋』は、魔王軍、聖教会に続き、ついに王国騎士団までもを、一杯のインスタントスープで完全に骨抜きにしてしまったのだった。
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