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大罪の娘  作者: 武部恵☆美
第25章 大いなる調律の駒
489/492

第489話

 転移先は星の半身ではなく、その逆側。つまりは元々あった方の魔素の星へ転移した。待ち構えているのは星の半身側だと考え、こちら側なら探知されないだろうという読みだ。

 ところが、だ。相手は複製体(鈴たち)だ。一人や二人ではない。恐らくほぼ全員が集結しているであろうこの場所に、監視の目が行き届かない場所がはたして本当にあるのだろうか。

 いや、無い。

 転移して到着して間髪入れず、魔法が飛んできた。転移した直後の無謀になところを狙われてしまったのだ。防御する間もなく魔法をモロに食らってしまい、黒焦げになってしまう。


「なんだ。呆気ないな」

「待て、油断するな」

「油断もなにもないだろ。この黒焦げから魔力なんて感じねぇよっと」


 複製体()は黒い塊を勢いよく蹴飛ばした。黒い塊はあっけなく砕け散った。ゴロゴロと砕けた塊が転がっていく。


「な!」

「呆気なさ過ぎる」

「心配しすぎだって。帰るぞ」

「待て」


 転移しようとした複製体()を、複製体()は制止した。


「なんだよ、もういいだろ」

「お前が帰ってつけられでもしたら面倒だ」

「はあ?! 生きてるってか? この有様で?」


 そう言って転がっていった黒い塊のところまでわざわざ行き、踏み潰して粉微塵にした。


「実際、前回は生きていただろう」

「けっ。今回は死体があるんだ。この臆病もんが!」


 そう言って残った欠片を拾い上げると、複製体()に投げつけた。


「用心深いと言ってくれ」


 複製体()は投げつけられた欠片を掴み取った。


「わーったわーった。好きにしろ」


 そう言うと、複製体()はその場で胡座をかいた。


「はしたないぞ」


 胡座をかいたことで、スカートの奥底が露わになってしまっている。


「るっせー! 性別なんかねぇだろっ」

「その個体は女だ」

「チッ、うざっ」


 そう悪態をついて胡座をかいたまま頬杖をしてイライラしている。もう一人はため息をついて黒い塊を調べ始めた。

 当然ではあるが、この黒い塊は秘書()ではない。秘書()を模した肉人形(ミートゴーレム)だ。だから調べられるとアッという間にバレるのだが、幸いにも芯まで焼けて炭化している。しかも小さな欠片だ。故にそう簡単には見破られないということだ。

 では本物の秘書()はというと、魔法が炸裂したタイミングを利用して転移してきている。爆発の衝撃を利用して転移の揺らぎを隠したのだ。姿を消し、周囲に紛れて隠れている。

 複製体()が後をつけられたら面倒だと言っていたが、まさしくそうしようとしていたので鈴にとっては迷惑な話だ。さっさと行けと念じてはいるものの、その気配は全くない。

 胡座をかいた複製体()はずっとイライラしているし、黒い塊を調べている複製体()は中々終わりにしようとしない。ううむと呻りながらしつこく調べている。そんな唸り声を聞く度に複製体()の機嫌は益々悪くなっていった。

 そんなピリピリとした空気が秘書()を刺激する。凄くチクチクして嫌な感覚だ。縫い針で身体中をツンツンされているような、刺さるまではいかないがそれ以上力を込めたら刺さるという絶妙な痛み。その痛みが唸り声が上がる度に強くなっていく。

 そして先に根を上げたのは複製体()ではなく、秘書()だった。耐えきれずに防御してしまう。その僅かな抵抗を感じ取れないほど複製体()は鈍感ではない。


「お?」

「どうかしましたか」

「っへへ。どうやらお前の勘が当たったみたいだぞっ!」


 複製体()は言い終わるのと同時に肉人形(ミートゴーレム)を炭化させた魔法を秘書()が居ると思われる場所へ放った。直撃はしなかったものの、秘書()の横一メートルほどのところに着弾した。

 急だったとはいえ、秘書()も警戒していたので吹き飛ばされはしたものの、防御が間に合ったので、ほぼ無傷で済んだ。吹き飛ばされたことで地面に跡が付いてしまい、秘書()の居場所がバレてしまった。


「居た! っはははは! 居た居た居た居た!」


 複製体()が追撃とばかりに火球(ファイヤーボール)を連発し、着弾すると大きく爆発した。秘書()は隠れている意味がなくなったので姿を現し、火球(ファイヤーボール)を避けて防御することに徹した。

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