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55/120

55.出来るオオカミ

香織が自ら自分の胸にそっと顔を埋めた時、陽一は一瞬だけ頭が真っ白になった。

あれだけ自分から挑発しておいて、いざ、香織から身を任せられると、一気に気持ちが上昇した。

それと同時に、やっと振り向いてもらえた安堵感も広がり、ホッと溜息を付いた。


優しく香織の髪を撫でると、そっと抱きしめた。

香織の両手もおずおずと自分の背中に回される。

その行為が嬉しくて、香織を抱きしめる腕に力を込めた。


暫く抱きしめた後、ゆっくり体を離すと、香織の顎をすくい上げた。

香織は熱を帯びて目で自分を見ている。でも、すぐに目を閉じた。

陽一はすぐには口づけを落とさずに、その顔に見入った。

優しく親指で香織の唇を撫でる。

香織が不思議そうに眼を開けた時、陽一はやっと香織にキスを落とした。


何度も角度を変えて唇を重ねる。

最初は触れるだけだった優しい口づけも少しずつ深くなっていく。

ゆっくりと入ってくる舌は以前と違って、優しく香織の舌を絡めとった。

そして、お互いの存在を確かめ合うように深く深く合わさっていく。


口から洩れる香織の吐息と可愛らしい喘ぎ声が、ますます陽一を掻き立てる。

止めることができずに、口づけに夢中になった。

香織が立っていられないとばかりに、陽一の腕を握りしめた時、やっと香織を解放した。


とろけるような瞳で自分を見つめている香織の耳元に、


「家に行くぞ」


と囁いた。

香織は黙ってコクンと頷いた。

その可愛らしい態度に、堪らずもう一度口づけすると、香織の手を引いて、駐車場を後にした。



                   ☆



香織が目を覚ましたのは、10時をとうに過ぎていた。

顔を上げて隣を見ると、陽一の姿はない。もう起きているようだ。


(い、生きてる・・・)


香織は目の前に両手を広げてまじまじと見た。

そして昨日の夜の事を思い出して、カーっと熱くなり、枕に顔を埋めた。


(食べつくされるかと思った・・・)


駐車場での優しい口づけから一転、部屋に戻った陽一は獣に豹変した。

香織を乱暴にベッドに押し倒すと、


「悪いけど、優しくはできないから。限界を超えてるんで」


そう言って、オオカミのように香織を襲ってきた。

まるで骨の髄までしゃぶるように全身を隈なく愛され、ドロドロに溶かされてしまった。

最後の方は昇天してしまったようで、記憶がない。


確かに、今までじらしたのは自分だ。

だが、その反動とは言え、


「ここまですごいとは・・・」


香織はヨロヨロとベッドから起きると、ブランケットで全身を包んで、ノソノソと廊下に出た。


そっとリビングを覗き込むと、陽一はどこかに電話している最中だった。

だが、香織に気が付くと中断して、呆れたような目線を向けると、


「やっと起きたのか。いつまで寝てるのかと思ったよ」


と、どこかで聞いたことのあるフレーズを口にした。


(さすが親子・・・)


「シャワールーム、勝手に使っていいぞ」


と香織が聞こうとしたことを先に言って、また電話に戻った。

邪魔しては悪いと、香織はそっとリビングの扉を閉め、シャワールームへ向かった。


シャワーから上がると、香織はおずおずとリビングに入って来た。

陽一はもう電話を終えていて、ソファに座って新聞を読んでいた。


「・・・シャワーありがとうございました・・・」


「ああ」


「・・・」


香織は昨日の夜の事を思い出して、まともに陽一の顔が見れない。

澄ました顔して新聞を読む陽一の顔が眩しく見えて、ますます目のやり場に困った。


どうしていいか分からず、もじもじと立ち尽くしている香織に、


「??何してるんだよ?こっちに座れば?」


陽一は、最初は不思議そうに見てたが、香織の顔がほのかに赤いのに気が付くと、新聞を置いて、香織に近づいてきた。

そして、香織の顔を覗き込むと、


「あれ?もしかして照れてる?」


と意地悪そうに笑って聞いてきた。

香織はボンッと真っ赤な顔になると、慌ててそっぽを向いた。

そんな香織の頭を撫でると、


「もう、朝食っていうよりブランチだな。さっきデリバリー頼んだからもう来るだろ。今、コーヒー淹れてやる」


そう言い、キッチンに向かった。


(で、出来過ぎる・・・。ホントにこんな人と釣り合うの?私・・・)


いきなり陽一の艶気に当てられ、クラクラしながらソファに座り込んだ。


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