第17話 【イン・ザ・女子風呂】 1
決闘終了後、見事にアイリスの【炎山】によって保健室送りになった智也の様子を新太は見に来ていた。
「ってて……。まだ体中がひりつくな……」
ドアから入って二番目のベッド。
炎の剣で引き裂かれた体をさすりながら横になっている智也は、隣に立つ茶髪ポニーテールの少女に向かって嫌味混じりに言った。
「うっ……ご、ごめん。萌花先生の治癒魔法でも治らない傷があったなんて……」
「あのな、治癒魔法や回復魔法でどんな怪我でも治せたら、この世に死人なんて生まれないだろ? 俺もあれだけ綺麗に斬撃を受けてしまえばこのザマだ。まぁ、幸い致命傷とかでもなんでもないけどな」
言いつつ罰が悪そうに智也は笑う。
「まさかアレをまともに喰らうだなんてね。正直避け切れると油断していた。【強化蘇生】だっけか? すごいな、あの回復魔法とやらは。アリス、お前は一体どこであんなのを習得したんだ? まだ授業で回復魔法なんざ取り扱ってもいないんだぞ」
「うーん、そういわれてもねぇ。あの時はアイリスさんを助けなきゃって必死だったわけで、たまたまアレがひらめいて……」
「ひらめいたって、天才かお前は。アレがそんな簡単にできる回復魔法じゃないってことくらいは、授業を受けたことのない俺でもわかるぞ。空がバカっと開いて、光の矢がドオッってよぉ」
「パカッ、でドオッ、ねぇ……ぷっ」
「なっ、てんめぇ、バカにしてんのかァ!」
保健室ないから聞こえた怒号に、足を止めた生徒や教師がちらほら。
そのなかの一人が、アイリス・ステファニーであった。
小気味の良いノック音と共に保健室の真っ白いドアが開く。
「……失礼する」
アイリスの声に、二人の話し声はピタリと止んだ。
「よっ、【二重能力】さん」
「その呼び方……やめて」
「あぁ、これは失敬。えっと、アイリス・ステファニーさん」
「むっ……」
二人がまともに話すのは初めてだっただろうか、にしてもやけに火花がビリビリ散っているな、と新太は首をかしげる。
「で、どうしてアンタもここに?」
敵意むき出しの口調。
目はしかりとアイリスを睨んでいる。
「模擬戦で怪我をさせてしまった、謝りたい」
視線を左へ右へと泳がせながらアイリスは申し訳なさそうに言う。
アイリス自身も【炎山】があれほど強化されるとは想像もできずに、ただただ生まれた斬撃に驚くばかりだった。そして、それと共に芽生え始めた智也への罪悪感が彼女をここへと運ばせた。
しかし、智也はというと厄介者を見るような目をして
「ほぅ、そりゃたいそうな心遣いありがとうな」
というばかりだった。
(智也、切られたことを相当気にしているみたいだ……。なんていうか、あれは俺の責任でもあるし、ここまで理不尽な態度を取られるとアイリスがかわいそうだな)
が、そんな心配は不必要であった。
ーーそれは、唐突に起こった。
「アリスとウチとで随分対応が違う……もしかして、智也はアリスのことが好き?」
(え……アイリスさん!?)
「は? な、なわけないだろう。そもそも……」
「でも、残念。アリスはね、実は男よ」
「な、なにィィィィィィィィィ!?」
新太をを見ながら不敵に微笑むアイリス。
してやったり。
新太を巻き込んでの憂さ晴らしが決行された。
(ア、アイリスさん何てことを君は言ってくれたんだ!? 今すぐに弁解しないと大変なことに……)
「ウチ、バッチリ見ちゃった……アリスの*%$」
「なんだとォォォォォォ!?」
「すでに手遅れじゃねぇかっ!!!!!!」
騎士アリス、ここにきて【性転換】露見の危機であった。




