第16話 【覚醒】 6
勝利するために新太に残された道は二つ。
一つは、アイリスを倒した時のように常用魔法を駆使すること。
二つ目は、攻撃魔法を発動させることだ。
前者は、相手が攻撃魔法を使える上に状態異常魔法まで使えるため、困難を極めてしまう。それに対し、後者はあまりにも可能性が低い。
アイリスの助言通りに新太がいくらしても、戦闘魔法は発動されなかった。
戦闘能Eランクという事実が、ここにきて大きく露呈してしまった。
(冷静になれ、俺。円の中にはある程度の大きさの石。それを隔てて、メガネ男、智也、それにアイリスがいる。加えてアイリスは電気麻痺状態、いつトドメをさされてもおかしくない……あまりにも時間がない。今、石に衝突して注目を集めたはいいものの、メガネ男の相手を俺がしているうちに、アイリスは間違えなくやられてしまう……)
窮地を脱する方法。
それを模索する時間はあまりにもない。
未だ額から滴る鮮血と入り混じった冷や汗を拭い、髪の毛をかき乱す。
ほんのり茶色がかったポニーテールはなめらかな指通りで、自分の現在の性が女であることをこんな時に自覚してしまう。
そしてふと、入学前見せられたデータが思い起こされた。
ーー(なんで、回復能の方が高いんだ……? それに、【AA】ってなんだよ。【A】より上ってことか?)
戦闘能が【E】である代わりに、表示された回復能【AA】の文字。
思えば新太は、これによって学園長に騎士アリスとしての入学が許されたのだ。
(そうか。俺は今、新太じゃない。アリスなんだ。女の魔法使いなんだ。できもしない戦闘魔法に無理矢理、固執する必要はない! 回復魔法を想像すれば……)
新太は想像した。
一点の光の兆しが、やがて何点もの光の矢となって地面に降り注ぐところを。
その大いなる光の矢は被弾者に治癒をもたらすところを。
そして、その魔法属性は光ではなく。
回復能が高すぎた故、失った能力に起因しているということを!
ーー属性選択は……アタシの戦闘能。使用するのは、【光矢】!!!
激しき吹き荒れる風に逆立つ髪。高く突き上げたのは痛いくらいに握られた拳。凛としたのは瞳。
円に騎士新太ではない、騎士アリスが堂々と君臨した瞬間。
叫ばれた耳に新しい言葉に智也は口を開く。
「属性選択、戦闘能だと……!? どうしたアリス? き、気でも狂ったのか?」




